伝蔵荘日誌

【伝蔵荘日誌】2019年12月26日: 日韓首脳会談と徴用工問題 T.G.

 中国の成都で日韓首脳会談が行われた。1年半ぶりだという。最大の懸案は徴用工問題である。日本はこの問題を1965年の日韓基本条約と請求権協定で解決済みであり、韓国の内政の問題という立場を貫いているが、韓国は三権分立を盾にとり、それに応じようとしない。差し押さえた日本企業の株を現金化しようとしている。それが元で戦後最悪の日韓関係に陥っている。ホワイト国除外などで窮地に陥っている韓国文在寅大統領が、安倍首相から何らかの言質を取り付けようと画策したが、安倍は応じなかった。当たり前と言えば当たり前のことだが、こういう毅然とした外交が今までの日本政府は出来なかった。

 朝日などのリベラルマスコミが、外交は妥協と歩み寄りだ。日本側も何かしらの対応をするべきなどと言い出しているが、従軍慰安婦問題と同じで、いつも繰り返されてきた筋悪のパターンである。それで問題が解決されたことは一度もない。ゴールポストが左に動いただけで、問題をさらに難しくしたことを意図的に忘れている。

 そもそも「徴用工」という言い方が間違っている。「従軍慰安婦」と同じで日本語にはそんな悪意に満ちたおかしな用語はない。歴史的事実を意図的にねじ曲げた韓国のねつ造語である。それを平気で日本のマスコミが使っているのはまるでマンガである。韓国の反日に同意しているようなものだ。正しくは「朝鮮半島からの出稼ぎ応募工に対する賃金未払い問題」である。応募工であり、徴用工ではない。輸出管理を輸出規制と意図的に言い続けたのと同じで、トランプ流に言えば、ためにするフェイクニュースである。

 戦前の日本は地域格差が大きく、貧しい地方から多くの出稼ぎが都会や工場地帯に集まった。当時の朝鮮は日本国の地方である。高賃金を求めてたくさんの半島からの出稼ぎ応募工がやってきて、当時の日本製鉄や三菱重工に仕事を得た。軍に強制された「徴用工」などではない。賃金はきちんと支払われていたが、敗戦の混乱で幾分かの賃金未払い状態が生じたのは事実である。これは仕方がないことで、終戦直後、朝鮮から引き揚げてきた多くの日本人が、国交の途絶えた朝鮮に残置した資産を回収できなかったのと同じである。金額としてはそちらの方が桁違いに大きい。現在の貨幣価値で20兆円を超えると言われる。単なる応募工を徴用工と言うのは、戦時売春婦を「軍に強制された従軍慰安婦」と意図的に言い換える悪意と共通している。

 そういう不自然な隣国関係を解消しようと、1965年に日韓両国の間で日韓基本条約と請求権協定が結ばれた。その際、経済援助金と言う名目で8億ドルが韓国に支払われた。当時の韓国の年間予算の3倍にも相当する巨額である。まだ貧乏だった日本にとっても清水の舞台から飛び降りる大金であった。今の金に換算したら数十兆円だろう。この中には応募工の未払い賃金も含まれていた。日本側は未払い給与は直接支払いを主張したが、韓国側の要請で援助金に含めることとなった。名目を賠償ではなく援助としたのは、日本は朝鮮とは戦争をしていないし、植民地への賠償などという事例が世界中にないからである。後でごたごたが起きないよう、念のため請求権協定を付けた。この条約締結の際、朝鮮半島に残置した日本国民や企業の莫大な資産の請求権を放棄したが、徴用工問題を言い募る韓国側はそのことに言及したことがない、おそらく都合良く忘れているのだろう。

 その55年後に、起きるべくして起きたごたごたが「徴用工」問題である。すでにまとめて渡したものを払えという、国を挙げての言いがかりである。請求権協定では、あり得べき賃金未払いに対しては、8億ドルの援助金の中から韓国政府が支払うべきことが明記されている。実はこの中には北朝鮮への未払い分も含まれていた。それをまとめて国交のあった韓国に支払ったのだ。だから金正恩が日本に戦後賠償を求めるのは筋違いも甚だしいし、それを自分たちだけで勝手に使い果たしてしまった韓国政府の不誠実なのだ。同じ不誠実が徴用工問題にも起きている。最高裁が未払い賃金を日本企業が払えと判決を出したら、韓国政府が成り代わって支払うのが筋というものだ。百歩譲って「徴用工」だったとしても、条約は包括的でその支払い対象である。だから三権分立は反日のための言い逃れ、詭弁に過ぎない。大統領が率先して不作為による反日をやっている。これでは首脳外交は無意味だ。

 実のところ、この問題は外交案件ではなく韓国の反日運動に過ぎない。仮に判決に従って原告の「元徴用工」に支払ったら、新しい徴用工が続々と出てくるだけのこと。永久に終わりはない。従軍慰安婦と同じで、徴用工は何万人もいることになっている。南京虐殺の30万人と同じである。これら数字には何の根拠も歴史的事実もない。単なる反日の道具なのだ。その道具に踊らされているのが今の状況である。

 戦略家のエドワード・ルトワック が最近「ルトワックの日本改造論」と言う著書を出版している。その中で「 日韓問題は外交では解消できない、韓国民族固有の心理的問題だ」と指摘している。言い得て妙である。さらに「日本民族に対して「恨」を抱き続けているのは、一度も日本とまともに戦ったことがないというコンプレックスが原因だ」と喝破している。この韓国人の日本に対する歪んだ心理を、ドイツと戦った国と戦わなかった国の心理の違いに似ているという。スエーデンやオランダのように「戦わずして従僕のようにナチスドイツに協力した国」が、超がつくほどの反ドイツ感情を保持しているのと共通した心理構造だと言う。

 言われてみればその通りだ。戦後生まれの韓国人からすれば、かつて日本に従順だった父親や祖父の世代を「恥」だと思っていて、消し去りたい過去だと考えている。だから歴史を書き換えて、そういうことはなかったことにしている。従軍慰安婦や徴用工は軍国主義日本の戦争犯罪であって、永久に糾弾すべき対象だとしている。韓国は1945年にそういう極悪日本を自力で追い払って独立した国と学校で教えられている。

 ルトワックは、このような韓国人の屈折した心理は彼ら自身では解消できないので、日本による客観的な歴史研究を公的に知らしめるべき言っているが、それはないだろう。いくら歴史の真実を教えても彼らは聞く耳を持たない。学校で先生が生徒に教えない。外交で条約を結んでも、「恨」の前には意味を持たない。反日の都合に合わなければいつでも反故にする。この心理状態はこの先も変わることがないだろう。日韓関係はそれを前提に考えるべきだ。外交で解決しようなどと言う幻想は決して持つべきではない。もっとドライな関係にしておくことだ。元防衛大臣が言ったという「丁寧な無視」が最善策だろう。常に友好な隣国関係などどこにもないのだ。

 南京30万人虐殺が作り話であることを中国人は重々承知している。承知の上で対日戦略の道具として悪用している。中国人は好きになれないが、彼らの論理や思考方法は同じ人間として理解できる。それに対して、従軍慰安婦や徴用工は正しい歴史的事実だと、どうやら大統領をはじめ多くの韓国人が本気で思い込んでいるらしい。だから日本にはなにをやっても許されると考えている。こういう韓国人の論理や思考方法はどうにも理解できない。まるで異星人のようで、好き嫌いを通り越して薄気味悪い。

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