伝蔵荘日誌

【伝蔵荘日誌】2019年7月13日: 徴用工とホワイト国除外騒動 T.G.

 サクの会の仲間内で徴用工問題に端を発するホワイト国除外問題が話題になっている。多くは韓国のやり口に対する批判だが、その中のAk君からもっと早くホワイト国から外しておくべきだったというメールが届いた。それに対して次のような返事を返した。

 「日本も悪いというか、外交下手なところがありますね。今回の徴用工問題やホワイト国除外の問題でも、マスコミは日本の主張と韓国の言い分を公平に並べて報道する。これでは日本人だってどっちもどっちと思ってしまう。外国人ならなおさらです。韓国にも理があるのだと。韓国が見事なところは、政府も民間も理屈や正義を度外視して一丸となって日本批判に回ること。日本はそれが出来ない。つい理屈を並べる。後ろから鉄砲を打つやつが沢山いる。慰安婦問題だって、未だに日本の戦争犯罪という言うマスコミが多い。NHKや朝日がその代表です。政府が頑張っているのに、足を引っ張る。これでは外交は出来ない。一体全体どこの国のテレビ局か。そういうニュースを見ると不愉快なので速攻でチャンネルを回します。今回の問題も理はすべて日本にありますが、素直にそうならない可能性大。河野談話のように、しびれを切らして日本から折れてしまう可能性大。どうにも憂鬱です。」

 昔から日本は外交下手な国である。戦争で勝ったことはあるが、外交で勝ったことは一度もない。そもそも外交をほとんどしない。クラウゼヴィッツは「戦争論」の中で戦争は外交の延長と喝破したが、日本人にはあまりそういう意識はない。戦争と外交は別物と思っている。戦争をしたくないから外交をやると考える。尖閣問題は外交で解決しろなどと言う。これでは外交は出来ないし、戦争も危うくする。

 1937年に始まった日中戦争(正しくは支那事変)である。開戦当初、日本は向かうところ敵なしだった。蒋介石の国民党軍を蹴散らして進軍した。敗色濃厚な蒋介石はアメリカ育ちで英語が達者な第一婦人の宋美齢をアメリカに送り、議会で日本批判の演説をさせた。そういう外交努力の結果、中立国アメリカは蒋介石支援に回る。援蒋ルートを作って豊富な武器兵器や物資を送り届けた。それと対照的に、日本は支那事変を始める前にアメリカやイギリスに一度も外交的根回しをしていない。その結果日本軍は中国大陸で身動きがとれなくなり、戦力を二分されてアメリカとの戦争に負けた。

 ハルノートである。アメリカは日本をABCD包囲網で追い詰め、日本がどうにも飲めない無理難題を書き並べた国務長官ハルの覚え書きを日本に突きつけた。アメリカとしては戦争の前段階の外交交渉のつもりである。それなのに、ぶち切れた日本は外交をやめて真珠湾に殴り込んでしまった。外交には外交で応じるべきところをそうしなかったのだ。

 関東軍が占領する前の南京には25万人しか住んでいなかった。それなのに戦後の中国は30万人大虐殺と声高に非難した。世界中に30万人虐殺の大宣伝をした。真っ赤な嘘である。それに対して日本はほとんど反論をしなかった。悪うございましたと謝った知識人やマスコミも沢山いた。今では南京大虐殺は世界中に既成事実化してしまっている。言うべき時に言うべき主張をしなかった外交の落ち度である。対外宣伝は外交の一環なのだが、外交下手の日本人はそう思わない。外務省は何のためにある組織か。

 従軍慰安婦である。単なる戦時売春婦で、軍が強制連行した従軍慰安婦などと言う事実も根拠もないのに、そのことを真っ向から主張し、従軍慰安婦は真っ赤な嘘、濡れ衣であることを言い募らなかった。それどころか、朝日、NHKはそれを逆宣伝するような報道をした。当時官房長官だった河野洋平は河野談話で従軍慰安婦を認めてしまった。鬼の首を取った韓国は世界中に従軍慰安婦宣伝をばらまき、今ではそこら中に慰安婦像が建っている。韓国の慰安婦宣伝に対し、日本の外務省は何もしなかった。韓国は外交をしたが、日本はしなかった。韓国の外交力に日本は負けたのだ。

 今回も同じような体たらくになりそうなのが気懸かりだ。そもそも徴用工問題にホワイト国除外を持ち出すのがおかしい。江戸の仇を長崎で討つようなものだ。そんな筋違いをする前に、徴用工が言いがかりに過ぎないこと、徴用工ではなく応募してきた工員であること、日本企業はちゃんと報酬を支払ったこと、民間の賠償問題は日韓基本条約で解決済みであることなどを世界に向けて宣伝することが先決である。外務省は一度もそういう対外努力をしていない。これでは南京大虐殺や従軍慰安婦と同じことになるだろう。世界は事実を知らされず、韓国の一方的宣伝だけを聞かされ、徴用工に対するホワイト国除外は日本が不当なことをしている印象を持つだろう。それでは勝ち目がない。またまた外交上手の韓国にしてやられる。

 ホワイト国除外は純粋に安全保障案件である。これで手違いをすると欧米諸外国の信頼を失う。北朝鮮問題でも発言力、影響力を減じる。徴用工問題とは切り離し、真っ向から日本の真意と目論見を世界に訴えるべきだ。その際、マスコミや野党は政府に協力すべきである。国家安全保障と外交を選挙戦略や政局に利用してはいけない。国が滅びる。日本に二大政党政治が根付かないのは、これが原因である。

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