伝蔵荘日誌

【伝蔵荘日誌】2018年12月29日:エドワード・ルトワック氏の単独インタビュー T.G.

 GP生君から電話が来た。今年の伝蔵荘日誌を自分の病気の話で終わらせたくない。何か別の話で終わらせたい。出来たら明るい話題がいい。正月早々再手術を控えている自分には書くネタがない。君が書いてくれと言う。任せておけと引き受けたが、書こうと思ってもあまりいい話題が見つからない。世の中暗い話ばかりだし、身の回りにもことさら明るい話は見当たらない。そう思いながら今朝の産経新聞朝刊を読んでいたら、世界的に著名な戦略家、エドワード・ルトワック氏の興味深いインタビューが載っている。明るい話題ではないが、日本にとって有益で示唆に富んだ内容なので、これについて書いてみることにした。

 ルトワック氏はルーマニア出身の戦略論研究の権威で、米国防省などでコンサルタントを務めている。たびたび来日し、日本の安全保障にも関心が強い。今回のテーマはトランプと習近平との米中冷戦である。インタビューの中で、米国を中心とする国々との貿易や知財権を巡る争いは冷戦であり、かって中国が掲げた「平和的台頭」路線に回帰しない限り、長期にわたる戦いの末に中国は体制崩壊に至ると予測している。詳細はインタビュー記事に譲るとして、要点は次のようである。

■トランプの対中政策
 外交政策に消極的で何もしなかったオバマと違い、トランプは立候補当初から中国を仮想敵と捉え、あらゆる分野で押し戻すと主張してきた。中国との衝突は、中国の現体制が崩壊するまで続くだろう。米国を中心とする必然的な対中同盟が、日本、豪州、ベトナム、インドなどの間で自然発生的に生まれている。英仏も南シナ海での「航行の自由」作戦に参加している。

■対中同盟における日本の役割
 対中同盟に正式な条約や取り決めはないが、日本は軍備に穴のあるインドネシアやフィリピン、モンゴルのような弱小な国々に対し、安価で取り扱い容易な武器の輸出国になり、対中同盟を補完、補強すべきである。また的確な現地情報を収集する情報組織を外務省に設けるべきである。日本の外務省にはパンダ・ハガー(媚中派)が多いと言われるが、今の外務省はもはや媚中派は一掃されている。また中国が万が一強大化したときに備え、対中牽制のためロシアとの関係を維持すべきだ。

■中国は海洋勢力になれない
 ランドパワー(陸上勢力)である中国は海軍力を増強しているが、中国はシーパワー(海洋勢力)にはなれない。海洋勢力になるには周辺国に艦船が寄港できる友好関係が不可欠だが、中国は友好どころか敵ばかり作っている。このまま海洋に進出すれば各国は警戒する。一帯一路もうまく行かないだろう。

■南シナ海軍事拠点化
 トランプの「航行の自由作戦」で中国が主張する南シナ海の主権は全面否定され、中国の面子は丸つぶれになった。中国が南シナ海に作った軍事拠点は無防備な前哨基地に過ぎず、象徴的価値しかない。軍事衝突が起これば5分で吹き飛ばせる。

 ネットで読めるのは朝刊1面のこの部分までだが、朝刊の2面には続きがあって、朝鮮半島情勢にも話が及んでいる。徴用工問題やレーダー照射で悩まされ続けている我が国にとってはこちらの方が興味深い。

■北朝鮮の核問題
 北朝鮮の完全核放棄は、米国が北の体制保証を確約でき、見返りとして多額の経済支援を提供すれば可能性がないわけではない。しかし北朝鮮国内には非核化に反対する勢力があり、金正恩が国内権力闘争で生き残って非核化にこぎ着けるのは極めて困難である。

■朝鮮半島の独立
 朝鮮半島の中国からの独立を守っているのはあくまでも北朝鮮の核であり、韓国ではない。韓国は歴史的に中国、日本、アメリカの支配下に置かれてきたので、自国の防衛や独立に関心がない。中国に抵抗する意思もない。中国の覇権に対抗するための国際連携の一員には加われない。

■日韓関係
 韓国が自らの独立に関心があれば、在韓米軍と共に韓国の防衛を担う在日米軍基地がある日本と、いさかいを起こしたりはしない。韓国が反日をし続けているのは、韓国が本質的な外交政策に関心がないことを意味している。現在文政権がやっていることは、これまでの米韓同盟を解消し、中国に保護してもらうよう打算的に移行しているに過ぎない。

 今日韓の間で揉めている徴用工問題にしろレーダー照射問題にしろ、対日外交であれば各々の国益をかけた外交交渉になるはずだが、韓国の反日はまったく違う。交渉する気はさらさらなく、ただただ日本を非難し、自らの正当性を言い募るだけ。そうすることによってどういう利を得るか念頭にない。もはや外交ではなくストーカー行為に過ぎない。日本政府はレーダー照射の証拠を示せば、韓国が外交交渉に応じてくると思ったのだろうが、まったく当てが外れた。何を言っても無駄。交渉にはならず、ストーカーのように日本の悪口を喚き散らすだけである。

 ルトワックがいみじくも言うように、韓国人と韓国政府は自国を独立した国民国家と認識していないのだ。だから日本と国家間の外交をする気がない。反日はルサンチマンに過ぎず、気にくわない隣国を誹謗中傷して快感を得るのが目的化している。そうやって媚びを売っていれば、中国の庇護が得られると思っている。この状況は日露戦争直前の李氏朝鮮とロシアの関係にそっくりである。もはや国家の体をなしていない。こういう相手と外交が成り立つと思うのは愚かである。日本は明治以来その愚を繰り返してきたが、そろそろ目を覚ますべきだろう。

 明治維新以来、この国との外交は一度も正常に行われたことがない。彼らにとって外交の結果である条約や合意は何の意味も持たない。不都合が起きれば無視するか無効にしてしまう。遵守するつもりはさらさらない。1910年の日韓併合条約も、1965年の日韓基本条約も、最近の慰安婦合意も然りである。韓国は法治や統治の行き届かない未開国で、国家の体をなしていない。国は経済だけでは維持できない。国家統治の欠如した韓国は、近い将来北朝鮮に飲み込まれるだろう。北朝鮮の方が国としての血筋が正しいからだ。最近の前のめりの南北融和を見ていると、韓国の人たちもそれを望んでいる節がある。どうやら文大統領府はその方向に舵を切ったようだ。そろそろ日本政府も、韓国との外交のあり方を考え直した方がいい。

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