伝蔵荘日誌

【伝蔵荘日誌】2018年9月12日:関西空港と北海道のブラックアウト T.G.

 21号台風による関西空港被害と北海道地震による大停電(ブラックアウト)の後遺症がいまだに続いている。問題の本質から見て、この状態はおそらく今後しばらくは解消しないだろう。その結果、関西と北海道の経済は地盤沈下が避けられず、日本経済の成長率にもマイナス影響を与え続けるだろう。この深刻なダブルパンチに関して、政府も経済界もマスコミもまったく解決に乗り出そうとしない。A滑走路がなんとか復旧したとか、ブラックアウトは解消してほぼ全戸に配電が出来るようになったとか、何ら根本解決に繋がらない皮相的な報道、議論に終始している。これでは救われない。いつから日本はこんな無気力で情けない国になったのか。

 9月7日のネットTV、虎ノ門ニュースで、経済評論家の須田慎一郎氏と中部大学の武田邦彦氏がこの二つの問題について鋭い指摘をしている。冒頭武田氏は今回の大災害は天災ではなく人災だ。国や自治体がちゃんとやるべきことをやっていたら被害は生じなかったと悲憤慷慨する。ちゃんと法律(建築基準法)を守っていたら、風速50m程度で空港が壊れたり、屋根が飛んだりはしない。震度6程度で家が倒れたりしない。大停電も起きないと言う。須田氏は関西空港がいかに欠陥空港だったか、建設当時の出鱈目さを暴露している。(まあ試しにリンクをクリックして虎ノ門ニュースを見て下され。先日も安倍総理が出演していましたよ)

 翌々日10日の虎ノ門ニュースでは、自民党議員の青山繁晴氏が、北海道のブラックアウトは人災である。泊原発さえ稼働させていたら起きなかったこと。泊原発なしに北海道の安定的電力供給は出来ない。泊原発は沸騰水型の福一とは異なる加圧水型の原発で安全。これを稼働出来ないのは怠惰な原子力規制委員会が再稼働許可を与えないこと。こんな馬鹿なことをやっている国はないと、これも悲憤慷慨している。こういう考えや意見があることを表マスコミは一切報道しない。政府内部でも議論されない。だからほとんどの国民は知らない。泊原発は危ない原発と頭に刷り込まれている。出来損ない空港が世界に冠たる国際空港だと思い込まされている。だから欠陥空港関空と北海道の電力問題は永久に解決しない。

 関西空港である。須田氏や青山氏の話を聞いていると、開発経緯にもいかがわしい話がてんこ盛りで、かなりの金食い虫の出来損ない空港のようである。完成時のA滑走路は海面から5mの高さだったが、その後毎年沈下が続き、今回の台風と高潮によりいとも簡単に水没してしまった。日本最大級の国際空港が水没の危険がある欠陥空港であることが世界中にバレてしまったのだ。いったいこれからどうするのだろう。なんとか離発着が出来るようにしても、いつまた大型台風が来るか分からない。来たら営業停止になりかねない。そんな空港は誰も使わなくなる。さりとて一日500便も飛び交う大空港で、今さら滑走路の抜本的かさ上げ工事なんて出来るわけがない。その間にも滑走路は毎日少しずつ沈下し続ける。こんなお荷物空港を抱えて、関西経済はやっていけない。関係者はまちろん、関西の人たちはこの先どうするつもりだろう。

 1998年に東京電力の副社長とアメリカ視察に出かけたことがある。サンフランシスコ空港に着陸寸前、大停電が起きた。いわゆるブラックアウトである。上空で2時間ぐらい旋回待機していたらなんとか着陸出来た。空港を出たらどこのレストランも営業していない。ホテルのチェックインも停電の中で手作業でやった。東電副社長が言うには、こういうことは日本では絶対に起きない。民営化されたアメリカの電力は極めて品質が悪いが、日本の電気の品質は世界一で、こういうことには絶対ならないと。確かに彼が言うように、戦後今の9電力体制になってから、一度もブラックアウトは起きていない。彼の豪語にも関わらず、今回そのブラックアウトが北海道で起きてしまった。副社長の言葉を借りれば、電力品質がアメリカ並みに悪くなったと言うことである。いつからそうなったのか。

 今回のブラックアウトの原因は地震ではない。真の原因はもともと北海道管内の電力供給能力が不足していたことだ。3.11では定格出力500万キロワットの福一原発が止まってもブラックアウトは起きなかった。当時東京電力管内の電力供給能力に十分な余裕があったので、福一電力が喪失しても北海道のように連鎖的に発電所が止まることはなかった。この供給能力の余裕が電力の最も重要な品質であるのに、北海道電力にはそれが欠けていた。その根本原因は泊原発が稼働停止していたことである。仮に出力200万キロワットの泊原発が平常運転していたら、苫東厚真火力発電所が停止しても今回のブラックアウトは起きなかった。泊原発を止めていたので、日常的に電力供給能力がギリギリだったので起きたのだ。つまり北電の電力品質がアメリカ並みに悪かったことが原因である。アメリカではしばしば大停電が起きる。

 そうは言っても、泊原発を未償却のまま新たな発電所を建設する余力は北海道電力にはない。泊原発を再稼働させるしか手がない。テレビ新聞も自民党政府も、そのことが分かっているのに再稼働は決して口にしない。口にするのはせいぜいネットTVの虎ノ門ニュースぐらいである。今のご時世、原発再稼働を口にすると非国民的扱いされる。うっかり政府が口にしたら森友加計のように野党の総攻撃に遭う。総裁選の安倍が口にしたら、石破の格好の攻撃材料になる。そういうわけで、思惑はそれぞれ違っても日本中が知らんぷりを続けている。いつの間にか日本がそういう無責任な偽善国家になってしまったのか。

 原発は地震では壊れない。福一原発も地震では壊れなかった。壊れたのは冷却用の非常電源が津波で水没したことが原因である。非常用電源を高い場所に設置していたら福一事故は起きなかった。泊原発も同じである。停電が起きるとただちに冷却ポンプを非常用電源に切り替えて正常に機能していた。マスコミは福一と同じ電源喪失と騒ぎ立てたが、ためにする嘘、フェイクニュースである。汚い連中だ。単なる停電を電源喪失とは言わない。泊原発は地震にはびくともしなかったのだ。泊原発を再稼働させれば、北海道の電力問題は一気に解決する。

 泊原発が再稼働できない唯一の理由は、原子力規制委員会がいつまでたっても認可を下ろさないからである。泊原発は沸騰水型の福一とはまったく構造が違う加圧水型原発で、より安全性が高いと言われている。福一事故の後も問題なく正常運転していたが、2012年に定期検査のために停止したら、その後検査が終了しても原子力規制委員会が一向に許可を出さないでいる。出さない理由も明らかにしていない。要するに頬被りの知らんぷりなのだ。どこからどういう圧力がかかっているのか知らないが、こういう職責放棄の無責任委員会はさっさとなくした方がいい。

 関空にしても北海道電力にしても、お先真っ暗で先の見通しはまったく立たない。このままでは地域経済がどんどん悪化するだろう。日本経済にボディブローのように効いてくるだろう。原因と対処法は分かっているのに、政府も経済界もマスコミも、誰も解決に乗り出さない。さらに同じような災害に見舞われたらますます事態が悪くなる。この無気力、無責任症状は今の日本に共通している。これではアベノミクスでいくら金をばらまいても効果はない。安倍が外交や安全保障で頑張っても意味がない。要するに日本全体が無気力化しているのだ。こうやってヘタレ日本は衰退を続けていくのだろうか。

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