伝蔵荘日誌

【伝蔵荘日誌】2018年7月3日:ベルギー戦敗退の責任 T.G.

 FIFAランク61位の日本が3位のベルギーを追い詰めたが、最後の詰めが甘く惜敗した。この敗戦の原因と責任はすべて日本のサポータとマスコミにある。監督、選手にはない。

 グループリーグのポーランド戦で、1点負けているにもかかわらず最後の10分をパス回しに徹し、その結果同率2位のセネガルにフェアプレイポイント差で勝った。そのことをマスコミとサポーター達は朝から晩までテレビ新聞で叩いた。卑怯な試合運びとか、サムライジャパンにあるまじき卑劣なサッカーとか、世界の恥とか、ありとあらゆる形容詞で非難した。西野監督のクレバーな作戦を褒め称える人間は一人も出てこない。安倍総理まで面白くない試合と非難した。サッカー好きで知られる明石家サンマは、こういう戦い方は自分好みでないとクレームを付けた。ベルギー戦直前までの三日間、こういうサポーターの西野批判が途切れることがなかった。これでは監督や選手はシュリンクする。思い切った作戦が取れなくなる。

 ベルギー戦では前半で2点先行していたのだから、後は逃げまくればよかったのだ。それも立派な戦略である。いくらベルギーでも、守りに徹した日本から、後半30分で3点取るのは至難の業である。それが出来なかったのは、日本あげてのポーランド戦のパス回し批判大合唱のトラウマである。トラウマの金縛りで、監督も選手も敵に後ろを見せるようなクレバーな試合運びが出来なくなった。2点取っているのに、リスク覚悟で前を向いて攻めるしかなかった。攻撃を止めるための、計算ずくのラフプレーも許されなかった。こうなると一種のフェアプレー病である。これでは世界3位の強豪ベルギーには勝てない。監督選手をそういう内向きの精神状態にさせたのは、ひとえにサポータとマスコミの責任である。

 そもそもポーランド戦の戦い方は非難などされる筋合いはまったくない。ルールに則った極めて戦略性の高い、正しい作戦である。勝ち抜き戦の決勝トーナメントと違い、グループリーグは3戦トータルでの総合点勝負である。勝ち負けの評価には勝ち点、得点差、フェアプレイポイントの三つがあって、その総合点で決められる。西野監督は状況とルールを冷静に見極め、最後の10分をパス回しに徹した。立派な作戦である。馬鹿でなければ、同じ状況になればどの国のチームもやっただろう。負けているのにパス回しは相手に失礼などと言う愚か者がいたが、論外である。どういう勝ち方だろうと勝ちは勝ちである。非難する方がおかしい。他国が非難するのはやむを得ないとしても、首相やサンマを含めて、日本のサポータは全員擁護に廻るべきだ。それなのに批判ばかりして、監督、選手を萎縮させてしまった。一種のオウンゴールのようなものである。

 そもそもサッカーは狡さの塊の様なゲームである。ルールだけで本が一冊出来る野球と違って、極めて単純なスポーツである。ルールはオフサイドとハンドとラフプレイ禁止ぐらいしかない。それを掻い潜っての肉弾戦だから、至る所でずる賢いプレーが展開される。審判を騙すシミュレーションは日常茶飯事である、痛くもないのに転げ回って痛いふりをする。そういう狡をしないのは日本選手ぐらいだ。自分で転んでおいてファールに見せかけ、ペナルティキックを得ようとする。ルールを利用したオフサイドトラップなどという卑怯な戦略が生まれる。如何に騙されないかが審判の腕であるが、それでも騙しが横行するので、今回からVARと言うビデオ判定が持ち込まれた。シミュレーションでのペナルティキック獲得を見破られたネイマールは、照れ笑いしながら舌を出した。そのことを誰も批判しない。当たり前のことと思っている。

 韓国はリーグ戦で敗退したが、3試合でイエローカードを24枚もらった。日本はたった4枚である。それでグループリーグを勝ち抜けた。ルールではイエローカード2枚で退場である。24枚の韓国に退場者が一人も出なかったのは、計算ずくで意図的にラフプレーをやっていたに違いない。ラフプレーは褒められた話ではないが、これも狡ゲームサッカーの作戦の内ではある。朝鮮日報によれば韓国サッカーチームにはファール戦略というのがあるそうだ。フェアプレイポイント狙いのパス回しで批判される純真無垢な日本人には、とても真似が出来ない芸当である。

 ポーランド戦のパス回し批判は従軍慰安婦問題に似ている。何も悪いことなどしていないのに、後ろから鉄砲を撃つやつが大勢いる。その最たるものが朝日新聞である。どこの国の軍隊にもいる戦時売春婦を、日本軍が強制連行した従軍慰安婦と大々的に書き立てた。朝日がねつ造記事を載せたら、日本中が従軍慰安婦がいたと思い込まされた。悪うございましたと謝った。官房長官の河野洋平が、求められてもいないのに大袈裟な謝罪の談話を出した。韓国が鬼の首を取ったように批判の大合唱をしても、それに対する反論は世論にすべて握りつぶされた。今では従軍慰安婦は世界中で既成事実化されている。世界中に慰安婦像が建っている。ポーランド戦のパス回しも、この先いつまでも日本の恥と語り継がれるのだろう。これではW杯も外交も勝てない。日本は実に外交下手、戦下手な国だ。

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