伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2018年2月20日: 平昌オリンピックと南北融和 T.G.

 平昌オリンピックの開会式を中継した米NBCの解説者が、日本の入場行進に合わせて「日本は1910年から1945年にかけて韓国を占領した。しかしすべての韓国人は、自分たちの国が様変わりするにあたって、日本は文化的にも技術的にも経済的にも本当に大事なお手本だったと言うだろう」とアナウンスした。韓国世論の猛反発を受けたNBCは「韓国の人々が侮辱されたと理解し、謝罪する」と声明を出さざるを得なかったという。

 また別の話として、中国選手団が入場するとき、フランスの報道関係者が「中国が日本と韓国のような野蛮人を文明化した」、「ハングルは中国語を表記するために19世紀に作られた」と解説し、同じく激しい反発を買っているという。

 歴史認識に関して、韓国人は常に不寛容だ。この米仏両者の歴史認識は韓国人にとって不愉快極まりないものだろうが、そこそこの真実は含んでいて、韓国に対する西欧社会の歴史認識そのものであることは疑いない。いくら不愉快で受け入れ難くても、そういう現実があることを韓国人は頭に置くべきである。その上で疑義があれば、歴史的根拠を示して反論すべきである。単なる感情的な抗議では意味がない。実際問題として、NBCは謝罪はしたものの、発言内容自体は撤回していない。フランスに至っては謝罪すらしていない。日本を含めた国際社会と韓国の歴史認識は違うのだ。

 歴史を少しでも学べば分かることだが、戦前戦後を通じた朝鮮の発展が、物心共に日本の多大な貢献によるものだったことは紛れもない歴史的事実だし、古代の東夷の野蛮国、日本と朝鮮が、中国文明により開化されたことは間違いないし、公用語が漢字だった李氏朝鮮時代に、漢字の読み方(ルビ)としてハングルが創られたことも歴史的事実である。日本人であれば、未開だった古代日本が、仏教の伝来など、中国の多大な影響を受けて文明開化したことは特段不愉快には思わないし、仮名が漢字を元に創られた表音文字であることも重々承知している。否定できない歴史的事実だからだ。情緒や気分で歴史を偽っても仕方がない。

 韓国の文大統領は平昌オリンピックを人質にして南北宥和を進めている。国際的な北朝鮮包囲網を破って、北に核開発の猶予を与えようとしている。そのことが日米の不信を買い、日米韓の協力関係や安全保障にヒビが入り始めている。オリンピックを餌に一時的な南北宥和が演出できても、北が核を放棄しない限り朝鮮半島を取り巻く緊張は解消されない。かえって危うくする。宥和の先の南北統一など夢のまた夢だ。オリンピックで南北融和を図れたとしても、その先どうするか戦略がない。北に核をどうやって放棄させるか、核を持ったままの南北宥和を世界にどう認めさせるか、日米を離反をさせて統一した朝鮮国をどうやって維持運営するのか、何一つ戦略がない。学生運動のように気分でやっているだけである。こういう一人勝手で安易な南北宥和は何ももたらさない。朝鮮半島の行く末に多大な悪影響を残すだけだろう。

 常々思うのだが、朝鮮民族の一大欠点は歴史を軽んじることである。その結果、歴史観に基づいた戦略を持てず、国家の命運を行き当たりばったりで決める。昨今の韓国を取り巻く国際環境と国家指導者の対応は、日韓併合前の李氏朝鮮時代の状況に似ている。当時の朝鮮王朝は日本の圧迫から逃れるため、日本が最も恐れていた朝鮮半島へのシベリア鉄道延伸を交換条件にロシアに擦り寄り、閔妃暗殺に恐れおののいた高宗が庇護を求めてロシア大使館に逃げ込んだ。それが原因で日露戦争を誘発した。その結果、“運悪く”日本が勝ったので併合されてしまったが、負けていれば朝鮮半島はロシアに占領されていただろう。どのみち李氏朝鮮は消滅した。なぜそう言う不運な目に遭うのかと言うと、指導者が歴史を軽んじ、国家戦略を持たず、行き当たりばったりだったからだ。文在寅はまさに同じことをしようとしている。

 同様なことは北朝鮮にも言える。スターリンの了解を得て38度線を越えたはいいが、金日成はその先統一朝鮮をどうする気だったのか。冷戦下の米ソ両大国の狭間でどうやって統一朝鮮を維持運営しようとしたのか。ソ連や中国が支えてくれるとでも思ったのか。まったく戦略がない。その結果が現在の分断されたままの南北朝鮮である。歴史観に欠け、戦略性に欠ける点では、文在寅も金日成も似たようなものである。

 同じ分断状況にあった東西ドイツが統一できたのは、国家指導者に確固とした歴史観と戦略があったからだ。分断中、東西ドイツは朝鮮戦争のような紛争を一度も起こさなかった。西ドイツはベルリンの壁が崩壊するまでその機をじっくり待つことができたし、当時のコール首相は統一を進める下準備として、アメリカのブッシュやロシアのゴルバチョフ、フランスのミッテラン、イギリスのサッチャーらを粘り強く説得している。国際社会の理解がなければ統一など出来ないことを熟知していたからだ。金日成にしても文在寅にしても金正恩にしても、そういう戦略や歴史観は皆無である。ドイツのように潮時を見計らうことが出来ないし、コールのようにトランプや習近平やプーチンや安倍にじっくり根回する気もない。金正恩に至っては、体制維持の核にしがみつくだけ。これでは統一は無理だ。

 昔から朝鮮民族は、指導者から一般国民に至るまで歴史を軽んじる悪い癖がある。歴史を客観視せず、好悪や情緒で捉える。だから歴史観にもとづく国家戦略を持てない。指導者が国の行く末に思いを馳せない。単なる戦時売春婦を日本軍に強制連行された従軍慰安婦と都合良くねじ曲げ、漢字のルビに過ぎないハングルを世界に冠たる独創文字と曲解し、日本の手を借りなくても韓国の経済成長は出来たと、根拠もなく思い込む。日韓併合は日本が邪悪なだけで朝鮮には責任がない。単なる被害者である。いつまでたっても南北統一が出来ないのは、自分たちではなく周りが悪いからだと考える。歴史を慮らず、常に他力本願で過ごしてきた。この歪んだ歴史認識を反省し、悔い改めるまで、この哀れな半島に未来はやってこないだろう。

 しかしながら日本も、韓国を嗤ってばかりはおれない。歴史観や国家戦略に欠けるのは日本も似たところがある。前の戦争と惨めな敗戦は国家観や歴史観を欠いた国家指導者や軍部が招いたものだし、昨今の野党やリベラルマスコミの安全保障論議は、歴史を無視し、日本の置かれた地政学的状況や世界情勢を考慮せず、外界に対して目も耳も塞ぎ、9条命の空想的な憲法観を唯一の根拠にしている。これでは軽薄な文在寅と金正恩の南北統一と変わらない。朝鮮危うし、日本も大いに危うしである。

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