伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2018年1月21日: トランプのフェイクニュース大賞 T.G.

 就任1年目のトランプ大統領がフェイク(偽)ニュース大賞を発表して話題を呼んでいる。1位に選ばれたのはニューヨークタイムズで、大統領就任当日、ノーベル経済学賞受賞者でコラムニストのポール・クルーグマン氏に「トランプ大統領の歴史的地滑り的勝利の日に経済は決して回復しないだろう」と書かせた。にもかかわらず、トランプ就任以降の株価は31%上昇し、上昇率は81年以降の大統領で最大だという。その結果アメリカは失業率も下がり、好景気に沸いている。ノーベル賞も赤っ恥をかかされたものである。そのほかにもロシア疑惑を報じたABCニュースやCNN、ワシントンポストなど、代表的マスコミの大方が血祭りに上げられている。

 この不名誉な賞を与えられたマスコミからは明確な反論は出されていない。肝心のクルーグマンに至っては、つい三日前のニューヨークタイムスの同じコラムで「トランプ氏のたった1年で、私たちは最悪で最も愚かな政府へと、はるばる連れてこられてしまった。」 などと、懲りもせず意味不明の引かれ者の小唄のようなことを書いている。ノーベル経済学賞がナンボのものかよく分かる。

 アメリカのリベラルマスコミのトランプ批判は、根拠薄弱で感情的なものが多い。依然くすぶっているロシア疑惑がその代表だろう。最初のうちは大統領にあるまじき国家背任で弾劾裁判などと盛り上がっていたが、いつまでたっても疑惑の確証が出てこない。なんとなく怪しいと言う思い込み、印象操作に近い。これでは弾劾など出来っこない。大統領弾劾は刑事裁判ではなく、あくまでも議会政治のプロセスである。確たる根拠を元に議会が一致するしかない。いくらトランプが嫌いでも、気分だけでは辞任させられない。これは安部総理に対する森友加計の印象操作に似ている。マスコミや野党が総力を挙げて追求したが、総理口利きの証拠は何一つ出なかった。

 アメリカのマスコミも、その使いっ走りの日本のマスコミも決して書かないが、トランプ政治1年の最大の功績は、世界中を震撼させたISをものの見事に叩き潰したことだろう。トランプは就任演説で「イスラム過激派テロリズムに対抗して文明世界を団結させる。そして地球上から完全に根絶する」とぶった。出来もしないことをとマスコミは相手にしなったが、事実はその通りになって、あれほど猛威を振るい、世界を恐怖に陥れていたISが、昨年11月にはイラク国内でほぼ壊滅した。トランプに尻を叩かれた米軍が、空爆でイラク軍の地上攻撃を強力に支援したからだ。オバマが手も足も出なかったことを、トランプはあっさりやってのけた。こういう不都合な真実をマスコミは決して報道しない。だからIS壊滅を日本人は知らない。もしかしてアメリカ人も。

 もう一つフェイクに近いのは、マスコミに評判の悪いエルサレム首都移転問題である。朝日は昨年末の紙面で「パレスチナ強く反発、「エルサレム首都」遠のく中東和平」と報じた。その中で「トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認め、在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移転させる方針を示した」と書いているが、これは典型的なフェイクニュースである。アメリカは昔から共和党も民主党もエルサレムをイスラエルの首都と認めていたし、95年には議会で大使館のエルサレム移転を決議している。トランプの思いつきでも専売特許でもない。オバマなど前任者が不作為を決め込んでいたのを、トランプがあえて火中の栗を拾っただけのことだ。

 アメリカがこのような不作為を続けて来たのは、中東和平に不可欠なイスラエルとパレスチナの和解を待つためだったが、何十年経っても和平にはほど遠い状況だ。トランプはそれを打開するために、大使館のエルサレム移転というショック療法を施している節がある。世界中のマスコミがトランプのために中東和平が遠のくように非難するが、これも一種のフェイクである。トランプの大使館移転にかかわらず、中東和平は何十年も遠のいたままだ。その間隙を突いたのがISである。限られた居住地に押し込められたパレスチナ人の不満が中東の不安定要素になっているが、一説によると、イランと主導権を争うサウジとエジプトが、ナイル川下流のかなり広大な地域をパレスチナ人に分割供与する計画があり、アメリカがそれにからんでいるという噂がある。トランプの大使館移転がその大戦略の一環であるとするなら、かなりの深慮遠謀と言えよう。

 日本ではあまり報道されないが、トランプの支持率は“いまだに38%もある”。共和党内や地域には岩盤支持者も多い。保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のジェームス・カラファノ副所長によれば、トランプ政権の1年間は、A〜Fの5段階評価でB(良)だという。特に外交、安全保障で評価が高い。TPPやパリ協定離脱など、アメリカファーストの悪評ばかり言われるが、IS壊滅をはじめ、中国の南シナ海進出や北朝鮮問題、シリア、アフガンなど、戦略的忍耐を掲げて何もしてこなかったオバマと違い、着々と手を打って、そこそこ成果も出している。

 インタビューの最後で前任者のオバマについて聞かれ、カラファノ氏は次のように答えている。「オバマの外交政策はFの落第だ。北朝鮮は一夜にして核保有国になったわけではない。ISのカリフはオバマ氏が就任した時には存在していなかった。アフガニスタンもオバマ氏が退陣した時はひどい状況だった。またオバマ政権は軍隊を酷使した。外交・安全保障にはいい点はつけられない。」と。まったく同感である。

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