伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2017年11月30日: 時事暴論「北朝鮮のミサイル発射について」 T.G.

 久し振りに北朝鮮がミサイルを打ち上げた。複数の弾頭をばらまく多弾頭型ICBMだという。近く7回目の最後の核実験をやるという。最後というのはこれで核ミサイルが完成すると言う意味だ。将軍様が言っていることが本当だとすると、北朝鮮はとうとう核軍事大国になったと言うことである。国民を飢えさせながら、とにかく国富をすべて核ミサイルに注ぎ込んでいる。その馬鹿馬鹿しさは戦艦大和の比ではない。大いにあり得る。情報機関ならいざ知らず、国のトップが国家の大事に関して詐欺師まがいの真っ赤な嘘を言うわけがない。フセインだって大量破壊兵器はないと死ぬまで言っていたが、嘘ではなかった。

 将軍様が核兵器を完成させたら、以後の北東アジア情勢はどうなるか。アメリカが身体を張って(つまり軍事攻撃を仕掛けて)止めない限り、概ね次のようになるだろう。中国から栄養分の点滴を受け、核保有にこぎ着けた北朝鮮はますます強勢大国になる。やがて北と親和性の高い韓国政府が統一を言い出すだろう。将軍様も断るわけがない。核を抱えた軍事強国と、金のなる木サムスンを抱えた金満国家が一緒になる。国のヒエラルキーで言ったら、商業より軍事が上だ。かくて金正恩初代終身大統領隷下、めでたく朝鮮人民共和国が誕生する。

 そうなったらアメリカは朝鮮半島から手を引く。もはや金をかけて5万人もの兵士を駐留させておく意味がない。今でもトランプか訪韓すると、国会の外で韓国民衆がヤンキーゴーホームを叫ぶ。朝鮮半島ではアメリカはそれくらい嫌われ者なのだ。中国もにんまり、やっと熟し額が落ちたと、習近平がほくそ笑むだろう。清王朝以来百年ぶりの朝貢国朝鮮の復活である。

 アメリカが手を引けば、100年前までと同じように、北東アジアは宗主国中国と朝貢国朝鮮の中華序列が支配するようになる。日清戦争前と同じで、中華の言いたい放題、やりたい放題になるだろう。故宮の首脳会談で習近平に言われ、太平洋の東側へ引っ込んだトランプはもはや口を出さない。それに対して日本は何も出来ない。何でも言うことを聞くしかない。100年前は大軍を派遣して中華を叩き潰したが、今はそんな力も気概もない。東京裁判と平和憲法ですっかり骨抜きにされている。国会で安倍が圧力を口にすると、戦争する気かと野党やマスコミが眦決して難詰する。安倍は何も言えない。もはや日本にやる気も能力もないことは、中華はとっくにお見通しだ。安心して見ていられるだろう。

 アメリカが北の核を認めると言うことは、アメリカの核の傘がなくなると言うことである。自分でなんとかしろということである。その先の日本がとれる道は三つしかない。一つ目は、いじめられっ子のようになにをされても黙ってひたすら耐え忍ぶ、二つ目は朝貢国になって朝鮮と一緒に中華体制に入れてもらう。三つ目は日本も核武装する。この三つだけだ。ほかには道はない。

 最も容易で効果的なのは三番目である。やる気になれば3年で出来る。北のミサイルよりはるかに高性能だ。世界中どこでもピンポイントで着弾する。中華は震え上がるだろう。中華の言うことをいちいち聞く必要がなくなる。世界でも日本に対するリスペクトが増す。このあたりを誤解する日本人は多いが、本当のことだ。エマニュエル・トッドやキッシンジャーなど、世界の指導的立場にある、多くの知識人や戦略家が奨めている。日本が核を持たないと、東アジアは安定しないと。核兵器は安上がりで、防衛予算を減らせる。いいことずくめである。

 いくら日本がヘタレでも、一番目はあり得ないから、三番目が駄目なら残るは二番目しかない。日本がとうとう中国の軍門に下ると言うことである。巨大中華帝国の完成である。これを習近平は中国百年の夢と言った。それが実現するのだ。技術大国日本を手中に収めた中華が世界を支配するようになる。アメリカやヨーロッパはもはや対抗手段はない。中国の天下である。朝貢国は植民地と違う。多少の矜持や誇りを捨てれば、日本にとっても悪いことではない。中国の核の傘の下で生きられる。今でもその方がいいという論者が少なくない。朝日やNHKにもたくさんいる。民主党政権時代の首相や中国大使もそうだった。中国と仲良くすると金が儲かると。こういう国はリスペクトされない。

 核兵器を作ることは技術的には簡単だが、憲法改正と同じで戦後の日本人にとっては生理的に難しい。それならトランプに核と将軍様を排除してもらうしかないが、トランプは気まぐれ大統領だし、日本にも北朝鮮大好き人間が大勢いてあれこれ邪魔する。野党と左翼マスコミが毎日のように圧力でなく対話だと迫る。そうすることが将軍様の思うつぼとは思わない。日本人はなぜここまで劣化したのか。日本が最後まで反対すると、トランプは嫌気がさしてエイ面倒だと引き籠もってしまう可能性大だ。支持基盤の弱いトランプは、アベ以外味方がいない。つまり当てにならないトランプに頼るのはバクチと同じなのだ。国家安全保障をバクチに頼るのは、山本五十六の真珠湾攻撃と同じで、必ず失敗する。日本人が愚かでなければ、同じ過ち繰り返すべきではない。

 核ミサイルは究極の相互破壊破壊戦略(MAD)である。相互に核を持てば戦争にはならない。戦後70年間、地球上で一度も大戦争が起きていないのは核による相互確証破壊が成り立っているからだ。中東でいくらかドンパチが起きているが、未開の土人国家同士のいざこざに過ぎない。先進大国日本とアメリカがやった前の戦争とは規模も質も違う。昔の関東軍がシリアに出張ったら、ISなどあっという間に蹴散らされただろう。言うなればアメリカが戦下手なだけだ。数年前までろくな装備も持たなかった関東軍に中国大陸を追い回されていた軟弱毛沢東軍に、マッカーサー米軍はとうとう勝てなかった。やむなく手打ちをして休戦にした。今がその状態である。日本軍にやらせていたら、38度線は愚か、中国も北朝鮮も生まれなかった。

 話を元に戻すと、核ミサイルは日本人が忌み嫌うほど邪悪なものではない。伝家の宝刀と同じで、決して抜かないものだ。床の間に飾っておくだけでいい。それは将軍様も十分分かっている。だからアメリカ相手にあれだけ突っ張れている。相互確証破壊が成立するだろうと。将軍様は案外知的で冷静な男なのだ。それなら日本も同じことをすればいい。それが外交プロトコルと言うものである。戦争は外交の延長なのだ。別に難しい話ではない。金もかからない。使わず持っているだけで将軍様は恐れ入る。悪さをしなくなる。こんな簡単な理屈をなぜ日本人が理解できないのか、不思議だ。

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