伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2017年11月1日: 前立腺ガンの治療を終えて・そして今  GP生

 昨日、6ヶ月ぶりに定期検診のため慈恵医大に行ってきた。尿検査と血液検査の後、放射線科と泌尿器科での診断となる。前立腺ガンの治療は、平成25年7月から26年1月までのホルモン療法で始まった。その後の放射線治療は、高線量の内部照射2回と、16回の外部照射だ。更に2年間、ホルモン療法を行い、昨年1月末、2年半に亘る全ての治療が終了した。以後、経過観察のため3ヶ月毎の通院となり、今年4月以降は6ヶ月毎の検診となった。

 診断のポイントはPSA値の変化にある。治療終了時のPSA値は0.01以下、その後10ヶ月間この値が続いた。今年1月0.01となり、4月は0.04、そして今回は0.09に上昇していた。PSA値が2.0を超えれば再発と判断される。医者の診断は、「PSA値の上昇は男性ホルモンが回復して、前立腺が働き出した結果と思われる」であった。次回の血液検査項目に男性ホルモンの分析をお願いし、了承された。

 高線量の放射線は、ガン治療に奏功しても周辺臓器への影響は大きい。前立腺に隣接する膀胱と尿道への障害は甚大だ。治療前に主治医から、「高線量内部照射は、治療効果は高いが、副作用として膀胱障害が80%の確率で起きる。夜間を含む頻尿と切迫尿意で、3年か4年で完治する場合もあるが、完治しない場合もある。個人差は大きい。」との説明を受けた。

 現在は、極端な頻尿は影を潜めたが、トイレに行って2,3分経つと少し尿意を催し、若干量の尿が排出される。切迫尿意も続いている。尿意を催したとき、我慢が出来ないのだ。長距離運転では、紙おむつ「まるで下着」は必需品だ。外出時は、トイレの場所を常に意識している。医者によれば、「尿意は自立神経によりコントロールされている。尿意を催しても、放射線治療により尿道が硬くなり弾力性が減少している事で、排尿が完全に行われていない、また、膀胱も弾力性を損なっているかもしれない。」であった。この説明には納得である。問題は、現代医学では治療法は無い事だ。医者も「高齢でもあるから、自然快復力による改善の可能性は低い」と言う。ならば、自分で出来ることをしなければならない。

 ノコギリヤシは前立腺肥大のサプリとして有名だ。このノコギリヤシにイソサミジンを加えたサプリを1年前から服用している。イソサミジンは屋久島産ボタンボウフと言う植物から抽出したエキスで、膀胱過敏症に効果があるそうだ。宝ヘルスケアが開発したサプリだ。放射線治療が終了してから、毎日の排尿回数は記録し続けている。サプリを服用して、半年ぐらいから排尿回数の減少傾向に転じ、特に夜間の排尿回数が少なくなった。ゼロの日が増えてきた。それでも、膀胱に溜まった尿が一回で完全に排出されないのは、尿道の硬化の影響が強いと思えてならない。ノコギリヤシによる前立腺肥大が、どこまで改善されるかも、今後の経過待ちだ。排尿記録は、まだまだ継続となる。

 ホルモン療法による男性ホルモンの減少は、血液中の中性脂肪値の上昇をもたらす。基準値は40〜149だ。少々肥満気味の自分は、アルコールを毎日たしなんでいた事もあり、治療前の中性脂肪値は170前後であった。それがホルモン療法開始3ヶ月後に290となった。治療開始後、食事療法と断酒を始めたが、5ヶ月後には330に達した。以後、1ヶ月毎の中性脂肪値は300代の後半を維持し、400を何回もオーバーした。ヒジキの粉末やTG君から勧められた可溶性植物繊維デキストリンの摂取も奏功しなかった。

 昨年1月末、ホルモン療法が終了してから1年9ヶ月が経過した。仕事に対する意欲が回復している感じから、男性ホルモンが多少復活していると思っていた。今年1月末の中性脂肪値は、307に低下したが依然高値であった。4月の値は256、であった。昨日の検診時、泌尿器科の医師に男性ホルモンと中性脂肪値の関係を聞いた。医師は「男性ホルモンの遮断は、筋肉量を低下させるため、基礎代謝量が減少し余分な糖質や脂肪分が中性脂肪に替わる」との説明であった。筋肉量の低下は、持ち上げられる重量が減少して事で実感していた。長時間歩くと下半身に疲労感を覚えることが多かった。加齢だけでは無かったようだ。高齢者が一度落ちた筋肉量を増加させることは、難事の一つである。

 7月から中性脂肪値を下げる幾つかの対策を始めた。一つ目は日本水産で発売している「イーマークS」を飲み始めたことだ。イーマークSはEPA600mg、DHA260mgを含有し、これらの不飽和脂肪酸か中性脂肪値を20%低下させると言う触れ込みであった。それと雪印メグミルクが開発し、内臓脂肪を減らすガゼリ菌SPなる乳酸菌を有するヨーグルトの摂取だ。これには、通常ヨーグルトと飲むヨーグルトの2種類がある。これを朝と昼に分けて食している。最後の対策は、昨年10月から再開していたアルコール類の再断酒だ。その結果、ジムで測定する体重は3.5s減少した。昨日の中性脂肪値は217であった。基準値より未だ高いが、男性ホルモンの幾らかの復活と対策が奏功したと思っている。

 定期検診での血液検査項目にコリンエステラーゼがある。コリンエステラーゼは肝臓で産生される酵素の一つで、肝臓で産生される中性脂肪が多くなると上昇する。高値になれば脂肪肝、低値であれば肝機能障害の判断材料に用いられている。男性の基準値は240〜486だ。今回の値は493でややオーバであった。ホルモン療法以前は、基準値内の数値が続いたが、治療後は500を超えていた。コリンエステラーゼは血中中性脂肪値と当然相関関係がある。男性ホルモンの低下が影響している。

 自分の検査が、今後どのくらい続くのかを医者に聞いたところ、治療が終了してから10年と言われた。あと8年以上、年2回のPSA値チェックが続く。終了時は、85歳を超えている。男性ホルモンの復活につれて、PSA値は上昇を続くのだろうが、2.0を超えないことを願っている。さてどうなるか。中性脂肪値の変化も興味津々だ。次回の検査は来年の4月になる。

 自分の場合、73歳時の5月に激しい血尿に見舞われ、各種検査の結果、前立腺ガンが確定した。体力も未だ余力があったので、主治医の勧める最新の治療を受けることが出来た。その時主治医は、「75歳を過ぎた高齢者の場合、手術も放射線治療も勧めず、ホルモン療法のみに留める。」と言っていた。身体への負担が大きく、かえって寿命を縮めてしまうことが多いからだそうだ。体力に自信があった自分ですら、心身の消耗は想像以上であった。3年9ヶ月を経過した今でも、放射線治療による副作用に悩まされている。

 伝蔵荘仲間のMa君が8月に前立腺ガンと判明した。後期高齢者であるMa君の治療はホルモン療法のみだそうだ。その後、PSA値の低下も順調のようだ。ホルモン療法のみであれば、日常生活で自覚できる副作用は少ない。Ma君は奥様の協力を得て、食事療法に専念している。あれだけ大好きであったアルコール類もキッパリと縁を切ったと聞いている。何れの病でも主治医は自分だ。学習は身を助けると信じている。

 高齢者にとって健康診断やガン検診は悩ましい存在だ。特に、検診でガンが見つかったとしても、標準治療は困難だ。手術にしても抗がん剤投与にしても、寿命を縮めること必定だからだ。医学的治療を受けられず、身体内にガン細胞か存在することは、心的ストレス以外の何物でも無い。健康を維持するための検査が心の健康を損なう不幸な結果となる。高齢者男性の場合、自覚症状が無くとも前立腺ガンに罹患している場合は多い。検査してPSA値が10前後の場合、原因が前立腺肥大が原因であることも多い。それでも10本以上の針を会陰部から前立腺に刺す生検は避けられない。生検なしにはガンの有無が確定できないからだ。一度受けたら二度と御免被る検査だ。TG君が日誌に書いたように、高齢者はガン検診パスが正解なのだ。高齢者にとってガンの有無は、知らぬが仏なのだと思っている。

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