伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2017年10月27日 唐突で短期決戦に終わった総選挙 U.H.

 唐突にやってきた衆議院選挙がまさに短期決戦で終わった。その間、朝日新聞などを中心とするマスコミの論調は、安倍政権をこのまま続けさせて良いのか、止めるべきだと言わんばかりのアピールに終始した。また政策課題においては、憲法改正をさせるのか、消費税増税をさせるのか、原発再稼働を容認するのか、さらに安倍政権の横暴な政治運営や、お友達優先の展開を許して良いのかという点にもっぱら目を向けさせようとした。

 しかし選挙の結果を見ると、そのようなマスコミの恣意的な狙いは不発に終わったと言えよう。なぜ不発に終わったかと言えば、マスコミがくどく繰り返すほど国民はそのような課題に感心が薄かったということでは無かろうか。

 憲法改正、特に9条の改正に拒否反応や敏感な感情を持っているのは、戦中の我が国の記憶が残り、かつ戦後の民主教育に永く染まってきた60代以上の世代が中心であって、若い世代ほど関心は薄い。

 消費税増税に関して、野党は「景気回復の実感が乏しい」という点から凍結・反対を叫んだ。一般の人にとって景気回復の実感が乏しいというのは確かだろうが、一歩進めて考えて欲しい。80年代のバブル時代に感じた好景気など、少子高齢化で成熟した我が国に再び訪れるはずもなく、今の時代の景気回復とは現状レベルがいいところなのである。一方で、社会福祉や教育に要する財源に安定財源である消費税が欠かせないという認識は国民の間に深まってきている。

 原発の再稼働について、段階的に原発依存度を引き下げていく一方で、安全性を高めた原発の再稼働を行うことについて、国民の認識は少しずつ冷静になってきている。

 もう一つ、安倍政権の政治運営や「お友達優先」への批判である。選挙の結果で大多数を得た政権がやや調子に乗った政治運営を行うことはありがちなことである。また時の権力者を取り巻く友人知人や後援者などが権力者を利用しようとしたり、忖度したりすることは有史以来人間社会の通例であろうが、目下の安倍政権の実態レベルはどうであろうか。

 我が国では、「政治家の清廉」を期待するあまり、周囲に問題点が少しでも現れると許し難いものであるかのごとく騒ぎ出す傾向がある。本来的に「清廉な政治家」など現実的でないはずなのにである。昔、海部首相という政治家がいたが、清廉で慣らした一方で、何の政治成果ももたらさなかったように思うが、そうした政治家が評価されるとしたら我が国の民意はどこかおかしい。

 「森加計」の出来事もその典型だが、怪しい展開がひとつや二つあったからと、鬼の首でも取ったように騒ぐ方がバランスを欠いているのではないだろうか。まして一時ならまだしも、緊急性の高い課題をさしおいて何ヶ月も騒ぎたてるレベルの問題であろうか。他方で重要な政策をまじめに展開し成果を上げているならば、相対的に評価しても良さそうに思うが。

 若い人たちが総じて安倍政権を評価し、一般的な市民も比較的冷静に対応している一方で野党やマスコミが絶え間なく難癖を付け続けている様相は、今回の選挙結果によってあらかた評価され明らかになったと言えるのではなかろうか。

 中国やロシアの権力機構・運営を見るまでもなく、本来的に権力の姿は凄まじい。それに比べて我が安倍政権の有り様などは生真面目すぎるほどに一生懸命政策展開をしていていじらしいほどである。目くじらたててあら探しをすることで正義感を振り回すのでなく、成熟した目で見守っていきたいものである。一方、我が国民は世界一飽きっぽい民なので、安倍政権に飽きたと言う反応ばかりはなかなかやっかいであるが・・・。

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