伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2017年6月2日: 身体の自然治癒力と栄養 GP生

 先日、羽鳥湖の山中に独居するSa君から、次のようなメールを貰った。

 また別の本を読んでます・・「サプリメント処方箋」佐藤 務 千葉市の稲毛病院で、日本で始めて「健康支援科ビタミン外来」を作った医者が著者です。この本の中で次のように言ってます。「基本的に私達が行う医療とは、患者自身の自己治癒能力の上にたってます、この治癒能力とは、病気を防ぐ力であり、発症後はその病気と闘う力であり、更にその病気に付随する合併症を防ぐ力であり、私達が行う治療の副作用にも耐える力でもあります、あくまで治療とは自己治癒のサポートであり、最終的に病気を治すのは患者自身です。」・・・医者としては少し言い過ぎでは?しかし理解出来ました。

 3月に座骨神経痛と診断された時、不思議に思ってました。痛みの為医者にも行けず、じっとしていたら回復した、薬も飲まず安静にしていて治癒するとは・・治りかけて医者に行ったら座骨神経痛だと診断、今度痛んだ時にと薬を処方されたが、痛み止めだった。この薬では治癒出来ないことが分かった。

 このメールに対し次の様に返信した。
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 Sa君へ
 著者の説の通りです。医者が病を治すのでは無く、治すのは患者自身に備わった自然治癒力です。自然治癒だけでは直らない時、医者は手術をしたり、放射線を当てたり、投薬等で手伝いをします。その後は患者の治癒力に委ねられます。自然治癒の障害を取り除くのが、医者の役割と思っています。風邪にしても、医者は咳止め、解熱剤、場合によっては抗生物質を出すこともあります。風邪のウィルスには抗生物質は効きませんから、他の感染症の予防のための処方です。風邪をひくと熱が上がるのは、免疫力を含めた代謝機能が体温が高いほど上がるからです。咳は、喉に溜まった菌等の異物を吐き出すために起こる自己保存行為です。薬が必要なのは、熱や咳が人体に著しい悪影響を及ぼす状態になった時と考えています。

 発熱して直ぐに解熱剤を飲むのは、免疫の働きを抑制して風邪の治癒を遅らせます。解熱剤は38度大きく超えたら飲むものと考えています。人体の中で熱に弱いのが脳細胞です。昔から、風邪で熱が出たら頭を冷やし、身体は布団でくるんで暖め、安静を保つ治療が行われてきました、昔の人は、理屈は如何であれ、経験で風邪の正しい治療法を知っていました。子供が風邪を引いたとき、親が抗生物質の処方を先生にお願いする場面をよく見ます。抗生物質は腸内細菌に悪影響を与え、腸管免疫の働きを弱めます。予防薬に過ぎない抗生物質の投与は、風邪には好ましくないことになります。

 「風邪をひいた時は安静にして、栄養をとりなさい」と医者は言いますが、どんな栄養を摂れとまでは言いません。タンパク質とビタミンCが大事なのは、ご承知の通りです。タンパク質でも含硫アミノ酸がポイントです。抗体はY字型で、このYは二重構造になっています。二重架橋を支えるのが硫黄のSです。Sを含む必須アミノ酸は、メチオニンとシスティンの2種しか有りません。必須アミノ酸ではありませんが、栄養ドリンクの主成分タウリンは含硫アミノ酸です。卵には必須アミノ酸がバランス良く含まれています。当然、含硫アミノ酸も含まれています。玉子が腐ると硫黄臭がすることで、含硫アミノ酸が含まれていることが分かります。

 昔から、風邪には「玉子酒」と言われています。昔の人は、含溜アミノ酸は知らなくても、正しい処方箋は知っていたのですね。玉子酒より効果があるのが、「甘酒+ミネドリン+ビタミンC」ドリンクです。甘酒は、米麹から発酵させた物がベターです。疲労したときにも効果がありますから一度試してみて下さい。最近、甘酒の効能が知られてきました。飲む点滴とか言われ、スーパーにも色々な種類が置かれています。テレビで、甘酒は免疫力を高めると放送されました。

 小学校時代の友人は一週間前に帯状疱疹に罹りました。当然ジムのプールはお休みです。姿を見せないので電話をして分かりました。彼は、4月にも風邪にかかり、全快までに10日近くを要しました。何れも、加齢による免疫力の低下が原因です。ミネドリンとビタミンC、飲むヨーグルトを持参し、飲み方を伝授してきました。日頃、友人は風邪に縁が無く、元気が取り柄と豪語していましたが、加齢には勝てませんでした。歳をとれば身体の代謝能力が低下します。エネルギーを作る能力も若いときのそれではありません。日頃から免疫力を高めることを意識した食生活に加えて、必要な栄養補完剤を摂取する必要があります。低下した代謝機能を補うために、必要十分な材料だけは供給する必要があるからです。

 家人は、今朝起きたら、口唇ヘルペスが発症していました。2,3日前から体調不良が続き、食欲が低下していました。夜もよく眠れない様子でした。栄養補完食品の摂取は怠りませんでしたが、代謝機能の低下に追いつきませんでした。ヘルペスも免疫力低下の象徴です。家人の免疫力低下は、メンタルを含む各種ストレスに弱い体質が原因です。それでも70歳過ぎまで、大病と縁が無かったのは、20年来続けてきた、三石理論による分子栄養学の実践に有ると思っています。家人は、栄養補完剤だけに頼ること無く、食生活にも色々工夫をしています。現在、便秘防止のために、濃厚トマトジュースに寒天を加えて作ったトマトゼリーを毎朝食しています。夜は、焼いたミニトマトを食しています。その前は、高速ミキサーVITAMIXを使って野菜と果物のスムージーを飲んでいました。

 貴君が、栄養関係の勉強を進めているのは、高齢者の鑑です。所謂サプリに、速効を求める人は多いのですが、多くは中断してしまいます。期待した効果が実感できないからです。栄養補完剤も食品の一種です。薬ではありませんから、2,3ヶ月で効果を実感出来るわけはありません。継続するには、自分で納得できる理論付けが必要です。「自分の主治医は自分」で有れば、主治医としての学習は欠かせませんね。
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 高齢者が体調不良で病院を訪れると、一通りの検査の後、病状に応じた薬が処方される。加齢の進行に応じて身体の不調箇所は増え、それに応じて投薬の種類は増加する。自分と同年齢の不動産会社の社長は、生活習慣病関連で7種類の薬を飲んでいる。それでいて、病気が完治することも、体調が改善される事も無い。薬効はともかく、副作用は、薬の相乗効果で増すことになる。最近、話しをても声に力が無い。休憩時間はソファーに横になっていることが多い。この社長は食生活には関心が無く、昼はインスタント食品で済ませている事が多い。薬だけでは、体調不良を改善できない。

 高齢者が医者に症状を訴えても、重い症状で無い限り「加齢によるものですから」と軽くいなされることは多い。患者自身も年だからと諦めてしまうこともある。加齢の進行を止めることは出来ないが、遅らすことは可能と信じている。分子栄養学に依れば、身体の部位が要求する栄養を必要十分供給すれば、代謝機能は正常に働くと説いている。理論的裏付けもなされている。

 人はDNAが異なれば、同年齢でも代謝能力に違いが生ずる。同一人でも、一日の中でも身体や精神にかかる負荷は著しく変動する。人は喉が渇けば水を飲む。渇きの自覚があるからだ。必要栄養素が不足しても、通常自覚することは無く、長期間に亘る栄養素の不足の結果、始めて身体異常を知ることになる。口唇ヘルペスや帯状疱疹、風邪等の発症は、免疫力に必要な栄養不足が第一要因だ。

 Sa君は、座骨神経痛と風邪に悩まされたことを契機にして、栄養学や免疫関係の学習を始めた。70代の手習いは、行うは難しの部類だ。思い立ったら吉日である。学び実行し、試行錯誤の結果、自分自身にとっての栄養摂取の必要条件と十分条件を知ることは可能だ。その結果、生命体としての寿命と健康寿命が伸びると信じている。

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