伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2017年3月19日: 森友問題と国会の品位 T.G.

 2月初めから約一ヶ月、森友問題で国会が機能不全に陥っている。あれだけ騒がれた共謀罪(正確には組織犯罪処罰法)問題やPKO問題がどこかへ消えてしまった。北朝鮮が弾道ミサイルを打ち上げ、金政男を暗殺し、韓国で金融、政治不安が重なり、極東アジアに不穏な空気が流れている。世界中がその行く末を注視しているときに、日本の国会ではその対処の議論すらされない。明けても暮れても日本中が森友学園とそれに関わる安倍内閣スキャンダルで持ちきりである。重要法案の審議は進まず、日本全体が機能不全に陥っている

 森友問題である。籠池という胡散臭い学校法人の理事長が、どういう手を使ったか格安で国有地の払い下げを受け、生徒に教育勅語を暗唱させる奇天烈な小学校を作ろうとした。その怪しげな学校経営と払い下げの経緯を朝日新聞がすっぱ抜いて問題に火がついた。マスコミや野党議員がこれ幸いと飛びついて、安部内閣のスキャンダルに仕立て上げようと画策し始める。噂話や関係者の無責任な発言をネタに、面白おかしく煽って話を大きくした。煽っているのは民進党など野党議員と新聞テレビである。話の経緯としては朝日のねつ造報道を、当時最大野党の社会党がまことしやかに実話に仕立て上げた従軍慰安婦問題に似ている。

 野党が強く求めた結果、23日に籠池氏に対する証人喚問が行われるという。トランプ的なフェイクニュースまがいの新聞テレビは論外として、国の最高機関である国会が国政をほったらかして、こんな些末な話に血道を上げているとは世も末である。お隣の韓国を笑えない。森友学園の胡散臭さはともかく、この程度の詐欺話はいくらでもある。警察や検察に任せておけばいい問題だ。国会議員の仕事ではない。国有地売却に不審な点があるのなら警察に捜査させればいい。政治家や役人が絡んだ警察には荷が重い案件であれば地検が動けばいい。国会が乗り出す話ではない。餅は餅屋に任すべきで、そのために警察や検察がある。

 時の首相が絡んだ重大な疑惑なので警察任せに出来ない。国会議員が自ら調査に乗り出すというならそれらしくしたらいい。国会議員には一般人にはない強力な国政調査権がある。調査費もたっぷり出ている。それを駆使して疑惑の実態解明や証拠調べをするならまだしも、やっていることは籠池某とその取り巻きの無責任な作り話の拡散だけ。まるで使い走りのメッセンジャーボーイ、テレビのワイドショーの下請けである。国会議員として恥ずかしくないのか。

 面白いというか興味深いのは、これだけ野党が責め立てても、安部内閣の支持率がほとんど下がらないことである。逆に民進党が支持率を下げている。どうしたことか。想い出すのは10年前の第一次安部内閣である。松岡農相の還元水問題や後任の赤城農相の絆創膏問題で次々に閣僚が辞任に追い込まれ、内閣支持率が激減し、ついには安部首相の辞任に至った。安倍自身が矢面に立たされていることを除くと、騒動の次元は今回とまったく同じである。野党が根拠不明の与太話をスキャンダルに仕立て上げ、国会で責め立てる。テレビ新聞がそれを面白おかしくワイドショー化して報道する。同じ状況で前回は支持率が低下し、今回はしない。なぜなのか。

 理由は国民が10年前よりはるかに情報通で、利口になったのだ。10年前の国民は情報源がテレビと新聞に限られていた。朝日、NHKが野党の尻馬に乗って派手なスキャンダル報道を繰り返すと、国民はそれが正しいものと思い込んだ。今は違う。国民は日々多量の情報に接していて、新聞テレビに頼らなくなっている。今や国民の主たる情報源は新聞テレビではなくネットである。特に若い人にその傾向が強い。スマホの普及がそれに輪をかけている。大方の国民は紙の新聞を読まず、ネットで読む。その方が簡単で安上がりで、なおかつ情報量が格段に多いからだ。ネットには新聞には及びもつかぬ大量の情報が溢れていて、より取り見取りである。

 一例を挙げると、パソコンやスマホユーザの多くがブラウザの初期画面をヤフーに設定している。ヤフーは朝日、NHKをはじめ多くの新聞、報道機関と提携していて、それらの記事を選んで載せている。ブラウザを開くと初期画面にその時間のトップニュースが8通り表示される。ユーザはこれを読めばその日の主な出来事やニュースが分かる。記事は時間を追ってどんどん更新されるので、情報は常に最新である。新聞は要らない。掲載記事の選択権はヤフーにあって、新聞社にはない。どの社のどういう記事が載るかはヤフー次第である。ヤフーはアクセス率を上げるために高度な戦略の元に記事を選んでいる。こうなると報道の主導権はもはや朝日、NHKにはなく、ヤフーが握っていると言って過言でない。ヤフーに選ばれないニュースは読まれないのだ。

 当方のパソコンの初期画面もヤフーにしてある。森友問題が劇場化してから、ヤフーのトップ記事の選び方を注意して見ていた。テレビ新聞が森友問題でお祭り騒ぎになっていても、なぜかヤフーは冷静で、8記事にはそれほど頻度高く選ばれない。たまに載っても淡々と事実を伝える記事がほとんどである。ヤフーでニュースに接しているネットユーザには森友騒動のワイドショウ的やかましさが伝わらない。ネットユーザはこのヤフーの記事を元に情報を辿る。気になったキーワードがあるとヤフーやグーグルの検索窓に書き込む。たちどころに大量の情報がアウトプットされる。たとえば「森友問題」と書き込むと、たちどころに30万件ヒットする。最初の10件ぐらい読めば、、森友問題についておおよそのことが分かる。新聞テレビでは得られない濃密な情報が手に入る。意図的なバイアスのかかった新聞記事と違って、バランスが取れている。国民の判断もバランスが取れる。

 ほかにもTwitterやSNSなど、ネットには多様でフレキシブルな情報が飛び交っている。トランプは既成の大手マスコミを相手にせず、こういったネットツールに頼って選挙戦を戦い、当選した。日本の情報空間もそうなりつつある。いつまでも新聞テレビではないのだ。野党民進党はその今日的な状況を理解できず、古色蒼然とした田舎芝居に明け暮れている。先の展望がない。ワイドショウーまがいの証人喚問で支持率アップが見込めるとでも思っているのだろうか。安倍を追い込めると思っているのだろうか。

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