伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2016年9月19日: 北朝鮮と豊洲移転と蓮舫 T.G.

 最近マスコミを賑わしている三題噺である。

 まずは北朝鮮。太っちょの金正恩が5回目の核実験をやって、ミサイルをバカバカぶっ放した。マスコミは大騒ぎして、普段は戦争法案反対のくせに、明日にでも正恩の核ミサイルが飛んでくるような危機感を煽る。いったいどっちが言いたいの。政府も同調して本邦初の女性防衛大臣がまなじり吊り上げて非難談話を出す。まさに「朝雨は女の腕まくり」である。でもね、ホントに北朝鮮は核兵器を作れたの? それを搭載したミサイルをちゃんと飛ばせるの? そこんところがかなり怪しい。眉唾である。ホントでなければ脅威でも何でもない。子供の、いや刈り上げ坊やの火遊びに過ぎない。

 兵藤二十八氏がブログに面白いことを書いている。この自称軍学者はかなりの軍事通で、かねてから世界中の軍事情勢、軍事力、兵器の水準について蘊蓄をブログで語っている。面白いので時々目を通す。9月10日付のブログで、金正恩の核について論評していてかなりの説得力がある。曰く「北鮮の核の事実と妄想」である。小生が普段考えていることと平仄が合う内容である。

 それによると、核実験をやると上空に放射性同位元素「キセノン133」と「クリプトン85」が放出される。これが実験成功の鉄板証拠だという。しかるに2006年の一回目の核実験以降は検出されたことがない。一回目の爆発はごく小規模で、核爆弾ならぬ“核爆発装置”を持ったことは確かだが、今回を含めて本格的核爆発に成功した証拠はない。不完爆の可能性が高い。つまり核爆弾は持てていない。ウラン濃縮は貧乏な北朝鮮では難しいのでプルトニウム爆弾だろうが、その場合の完爆は最低でも20キロトンの威力である。今回の爆発で起きた地震はその規模に達していない。だから成功したとしても今までと同じ不完爆か、大量の爆薬を使った見せかけの坑道爆破に過ぎないだろうと言う。

 さらに、仮に核爆弾が作れたとして、その核弾頭化はさらに難しい。広島の原爆もそうだったが、初期段階のプルトニウム爆弾は重さ4トン。ミサイルに積むには最低でも5分の1の750キロに小型化する必要がある。それが出来たとして、ペイロード(搭載貨物の重量)750キロの大型弾道ミサイルを北朝鮮は作れていない。ご自慢のテポドンにしてもせいぜい数十キロしかない。つまり北朝鮮にとって核ミサイルなんて夢のまた夢なのだ。

 そのことは世界中の政府や軍事専門家が知っている。アメリカ、中国は当然として、日本の自衛隊だって知っている。知らないふりをしているだけである。知らないのは無知な日本のマスコミと、それに踊らされているナイーブな日本人だけだ。それなのに、なぜ金正恩は世界中に知られている嘘をばらまいて、世界中がそれに騙されているふりをするのか。そこんところを理解できないのが9条命の日本人の致命的欠点、平和惚けの証拠である。知りながらあえて危機を煽る安部内閣は、それを奇貨として憲法改正の機運を高める狙いだろう。ぜひそうであることを願いたい。騙されているふりの理由を、兵藤氏がブログ末尾で書いている。

 ついで豊洲移転問題と蓮舫である。豊洲は小池の話である。蓮舫と何の関係があるのか。豊洲移転と東京オリンピック騒動は近頃にない一大スキャンダルである。自民伝統の金権政治の典型、日本の恥である。こんなに汚らしい黒幕行政が首都東京で行われていたなんて、小池が出るまで大方の都民、国民は知らなかった。知っていたら石原も猪瀬も舛添もなかっただろう。豊洲移転も東京オリンピックもなかっただろう。歴代都知事と都議会議員と都の役人がつるんで、毒まみれ土地に生鮮市場を建て、千億円の当初予算を5千億に膨らませ、デタラメ工事で予算を食い物にした。オリンピックのデタラメはそれ以上である。小池の言うように一丁二丁の豆腐屋である。13兆円の東京都予算は自民党都議連の金城湯池、好きなように出来る。この悪事につるんだ歴代都知事と都議会議員と役人どもは万死に値する。

 日本国民はこういう従来型の自民党の金権体質が大嫌いである。それが頂点に達したのが7年前の政権交代だ。自民のいかがわしさに愛想を尽かした国民は、頼りないのを承知で民主党に政権を取らせた。案の定、無定見のしっちゃかめっちゃか政治。国が潰れそうになって、たった3年で元の自民政治に舞い戻った。その自民党も、野党転落で痛い目に遭っておきながら、いまだに黒幕金権つまみ食い政治と縁を切れずこの体たらく。馬鹿は死ななきゃ治らない。

 今回の東京都の一大スキャンダルは、野党民進党にとって捲土重来の願ってもないチャンスだった。小池がやったことを蓮舫にやらせていたら、どこがいいのかミーちゃんハーちゃん大好き都民の受けだけはいい、蓮舫都知事が誕生していただろう。自民と喧嘩した小池に勝ち目はなかっただろう。「2位では駄目なんですか」などと口だけは達者な蓮舫知事に、胡散臭い都議会の黒幕連中と真っ向対決させたら、劇場型でさぞ人気が出ただろう。この見世物をテコにして、再度政権交代の目が出てきただろう。繰り返すが、国民は自民が好きでやらせているわけではないのだ。

 あーそれなのに、何と愚かなことか、民進は認知症のスケベ耄碌ジジイを候補に立てて惨敗した。代表の座を狙っていた蓮舫を口説けなかった。党執行部の岡田や枝野は何を考えているのか。政権を取る気がないのか。政権より蓮舫が可愛いのか。そうに違いない。それがよく分かったのが今度の代表選挙である。口先だけで政治には無定見の参議院議員をなぜ代表にしたがるのか。国民は自民の金権政治は大嫌いだが、民主の政治オンチにもとことん愛想を尽かしている。ここはいちばん、嘘でもいいからもっともらしい政策を表看板に出して代表選挙をやるべきだった。首班指名候補の資格がある衆議院議員を立てるべきだった。そうしなかったのは政権を取る気がないのだろう。そうとしか考えられない。

 極めつけは蓮舫の二重国籍問題である。マスコミで大騒ぎになったら、本人も執行部も「日本人であることに変わりないし、法的には問題ない」と馬鹿の一つ覚えを言い募った。そういう問題ではないだろう。党運営のリスク管理の問題だ。百歩譲って国籍に関する彼らの言い分が正しいとしても、代表選挙の目的を取り違えている。党の代表は政権交代を目指す旗印である。党代表は安倍政権と対決する切り込み隊長である。それが国籍に疑義のある蓮舫ではどうにもならない。政策論争の前に国籍詐称問題が出る。勝負にならない。国民も二重国籍の疑いに少なからずかがわしい印象を持つ。そういう欠陥議員をあえて党の代表にする意味がどこにあるのか。これでは国民の支持は得られない。党勢はますます衰退する。日本には政権交代可能な健全野党は必須なのだが、残念なことだ。

 代表選挙直後に蓮氏がいまだ台湾国籍が残っていたことを白状した。あれだけ二重国籍ではないと言い募っておきながら、白々しいにも程がある。こういう嘘つきは政治家の資格がない。経歴詐称はれっきとした公職選挙法違反である。代表辞任ではなく議員辞職が妥当だろう。

目次に戻る