伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2016年8月22日: 生まれて初めて熱中症に罹る T.G.

 生まれて初めて熱中症なるものに罹った。症状は軽かったが、回復に予想外の時間がかかった。その間、微熱とだるさと食欲不振が続いた。何か変だなと気がついたのが2週間前の8月8日、熱中症由来の発熱がほぼ治まったのが1週間後の16日、体のきつさが取れたのがその1週間後の今日である。完治まで2週間かかったことになる。

 月初めに会社同期の仲間達と、涼しい伝蔵荘に泊まってゴルフを連チャンでやった。帰宅すると下界は猛暑である。1週間後に孫娘にせがまれてハワイ行きの約束をしている。大事を取ってなるべく外へ出ず、エアコンをかけた涼しい部屋でじっとしていた。後で考えるとこれが良くなかった。8日の朝、ベッドから起きると軽い頭痛がして体がなんとなくだるい。夏風邪かなと思って体温を測ると微熱がある。風邪の三大症状である鼻水、喉の痛み、咳は全くない。

 翌日なっても体調は良くならず、終日37度台の熱が下がらない。夏風邪なら放っておけば治ると思ったが、二日後にハワイに出発しなければならないので、念のために大事を取って近所のかかりつけ医院へ行く。熱中症だという。風邪ではないので薬は出さない。解熱剤も効かない。涼しい部屋で水分をしっかり摂るしかないという。こんなことは初めてなので、狐につままれたような気分である。

 経口補水液を大量に買い込み、エアコンの効いた部屋で安静にしていたら、ハワイへ発つ二日後には、日中の体温が平熱に戻るようになった。それでも夕方から夜にかけて37度台が出る。体のきつさが幾分取れたので、予定通り成田へ向かう。ホノルルに着いた後も、日中は平熱だが、夜寝る前は37度台がぶり返す。体温調節機能が元に戻っていないらしい。体はさしてきつくないので、家人や息子や孫達とショッピングをしたり、食事に出かけたり、ビーチでの海水浴に付き合ったりした。参ったのは食欲不振である。美味しいはずの高価なランチやディナーが何を食べても不味い。酒も飲む気にならない。どうしても食が細くなる。なんとか食欲が戻ったのは、日本に帰る前日である。帰国後も体のだるさは続いた。

 代謝の衰えた老人が、暑い部屋で水分を十分に摂らずにいると熱中症に罹るというのが定説である。当方は高尿酸値の質で、普段から水分は過剰なぐらい摂るようにしているし、伝蔵荘から帰った後は涼しい部屋に入り浸りだった。なぜ熱中症になったのかまったく分からない。ネットでいろいろ調べたら、熱中症にはいろいろのタイプがあって、どうやら小生のケースは「熱疲労」の部類に入るらしい。体温調節機能に異常を来し、頭痛、微熱、だるさが続く。

 ほかには子供や農作業やスポーツマンがなる「熱痙攣、熱失神」がある。いわゆる日射病である。発熱を伴わない軽度の熱中症で、涼しいところで経口補水液を飲ませればすぐに回復する。最も重篤なのは40度近い高熱と意識混濁が起きる「熱射病」である。40度の高熱が何をやっても下がらない。放っておくと命に関わる。熱中症で死亡するのはこのケースである。当方の熱疲労と熱射病は、どちらも自律神経のバランスが崩れ、体温調節機能が働かなくなることが原因で、解熱剤がまったく効かない。自律的な体温調節機能が回復するのを待つしかない。

 小生の場合も、基本的な代謝機能である体温調節機能に異常を来したことで発症した。そうなった理由は分からないが、老化による代謝機能低下も原因の一つだろう。今度の経験で分かったことは、熱中症対策として涼しい環境と水分補給だけでは駄目で、適度に体を動かす必要があることだ。体温調節を司る自律神経を回復させるため、暑くても時々外に出て暑さを感じ、体を動かすことが肝要のようだ。成田で夜のフライトを待つ間に体温を測ったら37.3度あった。ラウンジから出て長いコンコースを早足で歩いたら平熱に戻った。同じことをハワイのホテルで毎晩寝る前に試したが、必ず平熱に戻った。適度な運動の効果である。お陰で夜のカラカウア通りの一人散歩を毎晩楽しめた。寝たきり老人が熱中症に罹りやすいのは、体を動かさないからだ。後期高齢者としては心しよう。

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