伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2016年7月21日: 近頃の世相と国際情勢 T.G.

 都知事選が奇妙な盛り上がり方をしている。鳥越という古手のジャーナリスト候補が奇天烈なことを喋りまくるので、テレビが面白がって取るあげるからだ。軽薄なテレビのオモチャにされ、いじりまくられている。本来地味なはずの自治体選挙が劇場型になっている。

 小池候補が街頭演説で「病み上がりを連れてきてどうするの」とぶったら、「癌サバイバーに対する差別偏見だ」と息巻く。テレビが面白がって盛んに取り上げる。それにしてもこの男は馬鹿だね。テレビで喋りまくらなきゃ、自分が重度の癌患者だったことなど都民のほとんどが知らなかったのに、わざわざ墓穴を掘っている。これ以外にも、「癌検診率100%」とか、「憲法改正反対」とか、三大公約が「平和、憲法、脱原発」などと埒もないことを連発する。これ以上喋らせるとますますぼろが出ると、支援者達が選挙演説をさせない。おかしな都知事候補である。民進共産は何でこんなのを担いだのかとほぞを噛んでいるいるだろう。

 トルコで軍事クーデターが起きた。エルドアン政権に制圧されて失敗に終わったが、軍民合わせて194人が死亡、議事堂など多くが破壊された。逮捕者は軍、裁判所など数千人に上るという。首謀者を処罰するために、EU加入を目標に廃止した死刑制度を復活させるという。先の大戦以来、先進国間では戦争は起こらず、クーデターは死語になっている。日本の226事件は80年前の歴史上の出来事である。トルコはそれを21世紀の今やっている。隣にISISという火薬庫がありながら、国の法治を全うできない。可哀想だがこの国が先進国になれるのはまだまだ先のこと。日本に倣えば80年先だ。

 イギリスのEU離脱のあおりを受けて、円高が進み、株価が下がった。それ見たことか、アベノミクスの失敗だと野党やマスコミ騒ぎ立てる。アベノミクスにも問題はあるが、EU離脱の円高株安とアベノミクスとは因果関係はない。であるのにそう言い募るのは知性の欠如だ。アベノミクスがなかったらもっと悪くなっていたかも知れない。そう言う蒙昧な非難を浴びせていたら、今日あたりの為替レートは106円の大台に乗り、株価も1万6千円を超えてしまった。そうなると円高株安を誰も言わなくなった。新聞テレビもぱパタリと報道しなくなった。マスコミや野党には矜持と言うものがないのか。

 イギリスはEU離脱で失敗したキャメロンがやめてメイ首相が就任した。サッチャー来の女性首相である。冷徹な政治家で、鉄の女サッチャーに対し、氷の女と評されているそうだ。さっそくイギリス人らしい老獪な離脱交渉を始めるだろう。それに対しドイツのメルケル首相が議会で演説し、「移動の自由などを許容することなく単一市場へのアクセスする「いいとこ取り」は許されない」と啖呵を切った。端的にえばイギリスに対する縁切り、絶縁状である。これではメイ首相は取り付く島がない。交渉にならない。ドイツ帝国であるEUとの間に氷のカーテンが下りてしまう。ヒットラーとチャーチルがドーバー海峡を挟んで対峙した80年前に戻ってしまう。歴史は繰り返すのだろうか。

 天皇陛下が突如生前退位のご意向を示された。正確に言うとそのようにマスコミが報道した。天皇がご自身の身の振り方を公言なさるはずがないから、憶測報道に違いない。宮内庁はリークを否定している。ことがことなので政治家が騒ぎ出している。粗忽者の民進党岡田代表が「ご意向をしっかり受け止め、検討を開始すべき」と事実関係も確かめずフライングした。でもね、生前退位の検討なんて簡単なことではないんだよ。そもそも憲法改正しなくては出来ないんだよ。皇室典範だけではダメなんだよ。どうするの? 普段から憲法について不勉強だからこうなる。反省しなさい。

 陛下がご高齢でご公務に耐えられないというのが生前退位の根拠らしいが、それなら摂政という手がある。マッカーサーはこの日のあるのを予期して憲法に第4条と第5条を付け加えた。曰く「天皇は法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる」、曰く「皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は天皇の名でその国事に関する行為を行ふ」。これでどこがまずいのか。大正天皇不如意の時、皇太子だった昭和天皇が摂政を務められた。なぜそれが今は出来ないのか。出来ない理由が知りたい。天皇制に関わる皇室典範改正は、憲法改正より微妙である。憲法と皇室典範の組み合わせはガラス細工のようなもので、下手にいじると天皇制が壊れてしまう。

 南沙諸島問題で、国際司法裁判所が中国敗訴の判決を出した。中国はすぐさま反論して、判決文は紙切れだ、破って捨てるまでと息巻いている。そもそも九段線などという屁理屈がおかしい。誰が見たって中国の領海ではない。フィリピンやベトナムの海だ。同じことを満州でやった日本は、リットン調査団の裁定を蹴飛ばして国際連盟を脱退し、挙げ句に自滅した。同じことを、百年遅れの帝国主義者、習近平がやろうとしている。満州と同じで、領土問題は一度持ち出すと引っ込みがつかなくなる。内政問題になるからだ。習近平はこうなったら前に進むしかない。後戻りは出来ない。国際法を無視し、領土拡張にのめり込むしかない。そうなれば、今中国が最も必要としているグローバルな自由経済体制の制裁を受ける。投資は減り、外資は引き上げる。経済成長が終わった中国にとって死活問題になる。国連を脱退した日本は、ABCD包囲網の経済制裁を受けて破滅した。中国もそうなるのだろうか。

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