伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2016年5月7日: 連休中の交通事故多発 T.G.

 連休中、交通事故が多発した。交通事故死は年々減っていると言うが、マスコミがニュースに取り上げるような特異な事故が増えているのだろうか。

 3日の神戸三宮の事故。駅前ロータリーから車が急発進し、ノーブレーキで歩道に乗り上げ、歩行者5人が重軽傷を負った。運転していた63歳の無職の男は鬱病の治療で向精神薬を常用していて、事故の記憶がないという。以前も同じような事故を繰り返していたと言う。こういう運転不適格者を排除できない免許の更新制度はまったく意味がない。免許の更新料は年間千億円近い額になる。金ばかり取って役立たずの免許更新制度などなくした方がいい。警察の利権に使われているだけだ。自動車先進国のフランスでは、運転免許は一生もので更新がないという。それで何の不都合も起きていない。日本もそうするべきだ。

 同じく3日、山陽道でトラックの追突事故が起き、3人死亡、6人が重軽傷を負ったという。渋滞で止まっていた最後尾の乗用車にトラックがノーブレーキで追突した。ドライバーの50代の女は「ボーッとしていて止まれなかった」と話している。追突は高速道路の典型的事故である。走行車線を車間距離をとらず、高速で連なって走る光景をよく見かける。前方で何かが起きたらどうするつもりか。未熟なドライバーはフルブレーキングで車を止められない。だから追突は避けられない。不注意では済まされず、未必の故意による殺人罪を適用してもいいくらいだ。

 ドライバーのほとんどはフルブレーキングの経験がない。10人に一人もいないだろう。だから車間距離をとらず時速100キロで走行中、前方に何か起きたら追突事故は避けられない。何か起きたとき、間髪を入れずブレーキを全力で踏み、車が止まるまで決して弛めない。パニックブレーキとも言う。この女性はそれをやらなかった。と言うか経験がないのでやれなかった。もしやれていたら、被害は半分で収まったか、死傷者を出さずに済んだもしれない。教習所の実技のカリキュラムに、ぜひ高速でのフルブレーキングを入れるべきだ。経験していなければとっさのフルブレーキングは出来ない。特に女性には難しい。50年に及ぶ運転経験で、フルブレーキを踏んだことが2度ある。いずれも子供の飛び出しだったが、かろうじて避けられた。

 5日、徳島の国道で国道にあるトンネル内で、美馬市の市長が運転する乗用車と、軽自動車が正面衝突する事故があり、2人が死亡、市長を含む4人が重軽傷を負った。トンネル内は車線変更が禁止されている。起きるはずのない正面衝突が起きたのは、市長の車が対向車線にはみ出したからだ。同じ正面衝突事故が7日に常磐道と栃木の国道4号線でも起きている。いずれも事故など起きるわけがない見通しの良い幹線道路である。あまりに不自然で、常磐道の事故は母子無理心中の疑いも出ているという。普段は意識しないが、交通ルールは信頼の原則に基づいている。対向車線の車は、こちらの車線にはみ出してこないという相互信頼である。対向車のドライバーがどんな人間か知らずに信頼を置いている。だから安心して道路を走れる。百人に一人ぐらいはおかしな奴がいるかも知れないなどと考えていたら、怖くて車の運転は出来ない。

 6日に国分寺市で、生後7ヶ月の赤ちゃんをおぶった母親の自転車が車と接触して転倒。頭を打った赤ちゃんが死ぬ事故が起きた。渋滞で止まっていた車の間をすり抜け、対向車にぶつかったらしい。小生も乗っていた自転車が転倒し、頭をしたたか打ちつけたことがある。重い頭が高い位置から落下すると、腕では支えきれない。どうしてもぶつけてしまう。下手をすると死ぬ。以来自転車に乗るときはヘルメットを被るようにしている。いささか大袈裟で気恥ずかしいが、命には替えられない。乳児といえ頭より重い。子供をおぶって自転車に乗っている母親を見るといつもハラハラする。ぶつけた車のドライバーは若い女性だったようだ。避けようがない状況で逮捕されたのは気の毒だが、彼女がパニックブレーキを踏めていたら、赤ちゃんは死なずに済んだかも知れない。

 先日、免許更新のための高齢者講習を受けた。その中に実技テストがある。教習所のコースを使い、車庫入れやS字カーブなどいろいろ試される。教習所のコースを回るのは50年ぶりのことだ。毎日やっているので至極簡単な事のはずだが、それが出来ない老人が実に多い。見ているとほとんどが車庫入れでフェンスにぶつけるわ、コーナリングで縁石に乗り上げるわ、散々である。

 その中で、縁石にタイヤを付けて停車し、アクセルをふかして縁石に乗り上げ、ただちに停止させるテストがあった。急発進、急ブレーキのテストである。至極簡単なことで自分は容易に出来たが、ほとんどの老人が乗り上げた後ただちに止まれず、50cmか1mぐらい進んでしまう。中にはまったく止まれず数メートル先のガードレールにぶつけた老人がいた。要するに反射神経が衰えていて、ブレーキを的確に踏めないのだ。コンビニでブレーキとアクセルを踏み間違える暴走事故が多発しているが、その主原因だろう。こんな老人達が日常的に車で走り回っていると思うと背筋が寒くなる。高齢者講習は認知症検査が主たる目的のようだが、これだけの手間暇かけて検査するのだから、結果をもっと有効に使えないものか。更新制度より大事だろう。

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