伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2016年1月4日: めでたく平成28年の正月 T.G.

 穏やかで晴天続きの三が日が過ぎた。旧年中は家内共々病気もせず、平穏無事に過ごせた。今年もそうでありますように。

 元旦。大晦日まで仕事続きだった息子が、孫を連れて転がり込んできた。来るなりソファで爆睡している。よほど忙しかったのだろう。その爆睡パパを尻目に。孫達はバアバからお年玉をもらって大はしゃぎ。夕方、元旦出勤のママが合流して賑やかな正月の晩餐になる。それにしても息子達が忙しいのはいいことだ。今の日本で、働き盛りの40歳前後で仕事が暇だったら、先が思いやられる。

 二日。孫達が去って元の静けさに戻る。家人と二人、おせちの残りで遅い朝食を済ませる。テレビを点けると恒例の箱根駅伝をやっている。なぜ日本人はこうも駅伝が好きなのだろう。テレビは丸二日中継をし続け、東京から箱根まで沿道は人が鈴なりである。これほど人気があるから、脚に自信のある若者はすべて駅伝にのめり込む。マラソンなど見向きもしない。息子か孫のような年代の若者達が懸命に走るのが家人のお気に入りで、テレビにかじり付いて応援している。三日の復路で繰り上げスタートが行われた。トップより一定時間過ぎても前走者が来ない場合の、駅伝特有の規定である。ほかの競技のように失格にしたらと言ったら、一所懸命走っているのになんて可哀想なことを言うと、家人がお怒りである。

 それにしても駅伝はおかしなスポーツである。日本だけのガラパゴス種目である。1区間20キロは、国際種目である1万メートルの2倍、マラソンの半分と言う中途半端な距離である。だから走り方がまるで違う。1万メートルは中距離の延長で、ほぼ全力疾走であるが、マラソンはペース配分が勝負の鍵になる。トップランナーは先頭集団を作り、35キロ過ぎまではペースを守って決して抜け駆けをしない。したら負ける。最後のラストスパートの余力だけは残しておく。結果は1センチでも勝てばいい。駅伝では各区間走者が出来るだけ相手との差を大きくしたいから、マラソンのような緻密なペース配分を考えない。だから先頭集団がなく、ばらばらに走る。ラストスパートの余力も要らない。同じ陸上でもまったく異質な競技である。サッカーとラグビーほどの違いだろう。当然練習方法も違うだろう。日本が東京オリンピックで好成績をおさめたいなら、今後4年は駅伝をやめたらどうか。(また家人に怒られるかな)

 三日。箱根駅伝の復路が終わった後、NHKの「新春お好み囲碁対局」を見る。これがとても面白かった。武宮九段の解説で、日本人一人を含めたアマチュアの碁好き在日外国人5人と、米国籍レイモンド九段、中国籍の蘇耀国九段が二手に分かれ、一人5手ずつ交代で打つ団体戦である。途中打つ手が分からなくなると、武宮九段かほかの仲間の助けを三回だけ頼める。どうしようもない手を打った場合、囲碁ではタブーの「待った」が一回だけ許される。6人のアマチュアはいずれも有段者で、そこそこの腕前のようだが、それでも打つ手によってプロとアマの力の差が歴然と分かる。アマではマレーシアとドイツの女性がなかなかの腕で、さしたる悪手を打たなかった。終盤、レイモンド九段と、蘇九段の手番になたところで即投了。レイモンドチームの中押し勝ち。プロはかなり前の段階で結果が分かっていたに違いない

 伝蔵荘随一の碁打ちHa君は日本棋院五段である。毎年世界各地で開かれる囲碁大会に単独参加している。昨年はプラハで行われた欧州囲碁選手権に参加した。彼の話では、最初に試合の手合割りを決めるテストマッチがあって、彼には初段が与えられたという。それで勝ったり負けたりだったそうだから、日本棋院の段位が甘すぎるのだろう。Ha君に言わせると、金を出せば買えるのだという。日本棋院五段が言うのだからそうに違いない。世界囲碁選手権で日本のプロの九段が中国、韓国にコロコロ負けるのはそのせいか。お好み囲碁対局で日本の碁について聞かれた蘇耀国九段は、「中国と違い、日本の棋士は勝ち負けより人格や人間性を重視しているようだ」と答えていた。外交辞令に違いないが、当たらずといえど遠からずだろう。

 今日は四日。世の中は仕事始めである。朝から天気も良く、春のように暖かい。体調もすこぶる良い。この1年半、毎年何度も繰り返していた風邪を一度もひいていない。GP生君に教えられたミネドリンのお陰で免疫力が上がったのだろう。必須アミノ酸が主成分の滋養強壮剤である。暮れにもう一つ、タウリン1000mg配合のチオビタドリンクを勧められた。血圧とコレステロールを下げる効果があるという。歳をとったらこういうものに頼るのも悪くはない。さっそく試してみるか。

目次に戻る