伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2015年7月14日: 世界遺産騒動と韓国外交 T.G.

 日経の韓国ウォッチャー鈴置高史氏が、「「世界遺産で勝った」韓国が次に狙うのは……「日本も強制性を認めた」と世界に発信を開始」と言うタイトルの記事を日経ビジネスに書いている。いつもながら興味深い内容だ。それによると、今回の世界遺産に関わる日韓外交は事実上韓国の勝利だという。「韓国メディアはお祭り騒ぎだ。日本の世界遺産登録と引き換えに、新たな外交的武器を勝ち取ったからだ。」と言う。

 記事によると、遺産登録で問題にされた朝鮮人労働は、戦時徴用(Requisition)と言う合法的なもので、推薦文の文言は“forced to work”と言う表現にとどめたいという日本外務省の主張に韓国が譲歩し、それがユネスコの日本側演説の英語原文になった。日本側は「強制労働を意味しない」と言質を取ったつもりだったが、決定後韓国は「強制して労役」と韓国語に訳し「強制労働だったことを日本政府に認めさせた」と対外宣伝活動を開始した。なぜそんなボタンの掛け違いが起こったのかというと、事前の日韓外相会談で、岸田外相が尹炳世外相から『日本がそうした発言をしたからといって、韓国内の裁判で利用することはない』と言う韓国側の発言を信じたのがことの始まりだという。

 それにしても、今更ながら外務省の英語下手、外交下手には恐れ入る。いくら日本人が英語が苦手と言っても、外務省たるものが“force to work”なら強制労働に当たらないと言う英語力には呆れ果てる。中学生に訳させても「労働を強いられた」と訳すだろう。それと「強制労働」とは違いがないだろう。そもそも韓国相手の外交で、条約や口約束が何の意味もなさないことを外務省は忘れたのだろうか。今まで日本はそれに何度も煮え湯を飲まされて来たというのに。

 煮え湯の代表的なものは日韓併合条約と日韓基本条約と河野談話である。細かいものは数え上げたらきりがない。7月号の文藝春秋に、外交評論家の佐藤優氏が、中国、韓国、ロシアの歴史教科書について書いている。その中の韓国教科書の日韓併合に関わる記述は、「乙巳条約(日韓併合条約)は外国との条約締結権を持った皇帝の裁可を受けていないので無効である」と書かれているという。皇帝の裁可は国内の問題であって、国際条約の有効性とは関係ない。当時の韓国を代表する政府が取り交わした条約であることには変わりはない。国際条約は国内法に優先するのが世界常識である。それなのに教科書で条約無効を子供に教え込む。今に至る日本による無法な植民地支配の根拠にされている。これでは条約も何もあったものではない。ちゃぶ台ひっくり返しの最たるものだ。

 それにも懲りず、1965年に今の朴大統領の父親、朴正煕大統領と、8億ドルと言う当時としては巨額の経済支援と引き替えに日韓基本条約を取り結んだ。これで日韓併合以降の日本に対する請求権は完全に解決されたはずだった。にもかかわらず、今頃になってやれ慰安婦だ、強制労働だと、謝罪や賠償を要求するようになった。日韓併合条約と同じく、日韓基本条約自体が無効だとも言い出している。その結果、韓国最高裁で日本企業に対し賠償判決が出されている。これでは条約の意味がない。と言うか、韓国との外交や条約はは意味がない。

 河野談話もそうだ。事前に内容を韓国側と調整し、それを発表したら慰安婦問題は今後問題にしないと、韓国側の了解を得ていた。それなのにいったん談話が発表されたら、日本軍の強制を日本政府が公式に認めたと、鬼の首を取ったように言いつのり始めた。慰安婦問題がこじれ始め、そこら中に慰安婦像が建った。朴大統領は世界中に告げ口外交を展開している。今回の世界遺産に関わる外務省の失策は、河野談話以上の災厄を日本にもたらすだろう。韓国外交に悪用されるだろう。繰り返すが、韓国との外交交渉は無意味なのだ。無意味なことはやるべきでないのだ。同じ失敗を懲りずに繰り返す外務省が愚かなのだ。

 戦争と外交は国益を得るためにやる。結果がすべてである。どんな汚い手を使っても、目的を達すれば勝ちである。その意味で、今回の外交戦は日本の完敗、韓国の完勝だ。韓国民はさぞ溜飲を下げているだろう。どうやらここに来て韓国は反日を国是に据えたようだ。反日外交によってが韓国がどのような国益を得るつもりか、意図は定かでないが、今回のやり口を見ているとそうとしか見えない。最近の韓国経済は下降気味である。1997年の通貨危機の再来との噂も出ている。それもあって、さすがの朴大統領も日本に近寄り始めたと見られていた。にもかかわらずこの派手なちゃぶ台ひっくり返し。彼らにどんな狙いがあるのだろう。

 この異様な対日外交戦略は、長期的に見て韓国にはなんの利益にもならない。一時的にはカタルシスを得ても、長い目で見れば国益にならない。日本に屈辱を与えるだけで、ほかに得るものはない。外交戦略としては拙劣きわまりない。今回のことで、日本国民は批判の矛先を無様な外務省外交に向けているが、それ以上に、今までにない強い反韓感情に傾いてしまった。もう相手にしていられないと、日本人の多くが堪忍袋の緒を切った。今までは日韓併合に対する贖罪意識から、多少の理不尽には譲歩して来たが、どうやら我慢の限界を越えてしまったようだ。もう後には戻らない。戦前の贖罪意識はせいぜいが60代以上のもので、50代以下にはない。百年以上前のひい爺さんがやったことに、なぜ自分らが責任を問われなければならないのかと、反発すら出始めている。反日で頭がいっぱいの韓国は気づいていないが、日韓併合の贖罪は終わってしまったのだ。

 家人は韓流ドラマが大好きで、何度も韓国旅行をしている大の韓国びいきである。韓国の悪口を言うと不機嫌になる。その彼女がさすがに今度のことは怒り出している。実に狡くて、嫌らしくて、不誠実な民族だと。もう韓国には行かないと、怒り心頭である。韓国びいきの家人にしてこうなら、他は推して知るべきである。朴大統領はルビコン河を渡り切ってしまった。もう引き返せない。頼りの中国経済が混乱含みの現在、日本と袂を分かってどうするつもりだろう。家人の怒りは北朝鮮の拉致問題に対する不誠実さにも向けられている。金正恩は、喉から手が出るほど当てにしてた賠償金を取りはぐれた。北も南も、いつもながらの小賢しい朝鮮外交の破綻である。

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