伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2015年2月26日: 春の味覚、ふきのとうを食す。 T.G.

 庭の片隅で、ふきのとうが真っ盛りである。さっそく摘んで甘味噌和えにする。口に入れると春の香りが口いっぱいに広がる。常温の純米吟大醸にぴったりである。年に一度、これを味わうたびにその年初めての春を感じる。大袈裟に言えば、生きていて良かったと言う気分になる。

 10年前の2005年の日誌を読むと、2月11日に同じことを書いている。今年は春が遅いのか、2月11日は、寒くてほとんど芽が出ていなかった。やっと食べられるようになったのは先週半ば過ぎである。10日近く遅れている。これで温暖化とはどういうことだ。

 今週になって急に春めいたのか、この二、三日採れすぎである。朝かごを持って庭に出る。蕾が少し膨らんで、薹が立つ寸前のものを選んで採る。すぐに小籠が一杯になる。老夫婦二人では食べきれない。そもそも蕗のとうはたくさん食べるものではない。形の良いものをより分けて、ご近所に配る。たいそう喜ばれる。これが毎日なので、もらい手を探すのがだんだん大変になる。スーパーにも売りに出されているが、旬のものなので売られているのはほんの一時期、5〜6個入って300円ぐらいする。

 家人が天麩羅にすると美味いというのでやってみた。かりっと揚がったやつを口に含むと、ふきのとう特有の苦みと香りが広がって、これもまた粋な春の味である。あまりに美味しかったので、調子に乗って二晩続けてやったらさすがに飽きた。

 料理雑誌を見ていたら、ちょうどこの時期、ふきのとうの味噌和えが載っていた。小生がいつも作るのとはやり方が少し違う。今までは、米のとぎ汁で軽くゆでてアクを取り、細かく刻んで甘味噌と和えるだけだった。料理雑誌のやり方は、茹でて刻むまでは同じだが、それを少量のサラダ油で軽く煎って、そこへ同量の味噌、砂糖、みりんを入れて混ぜながら煎る。こちらの方が食感と味に丸みが出る。蕗の風味も損なわれない。保存食にもなるので、ご近所に配りきれない残り物は、全部この方法で蕗味噌にするか。しばらくは酒の肴に不自由しない。

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