伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2014年11月11日: パソコン修理の大苦戦 T.G.

 8日の朝、食事を済ませていつものようにパソコンの電源を入れたら立ち上がらない。このパソコンは4年前に自作したものだが、こういうことは初めてである。いろいろ兆候はあったが、壊れてもすぐ直せる自信があったので放ってあった。早速修理に取りかかったが、思いのほか重傷で直らない。翌日明け方まで10数時間、徹夜に近い試行錯誤を繰り返したが、どうにもならない。くたびれ果ててベッドに潜り込んだが、悔しさと神経が高ぶって寝付けない。うとうととしているうちに夜が明けた。いろいろあって、昨日10日の夜にやっと修復できたが、丸三日間パソコンにかじりついていた。暇だから出来るが、仕事を持っていたらどうにもならない。暇な老人にとって、久しぶりの緊張の三日間だった。

 仕事から離れた年寄りにとって、パソコンは外界とつながる窓のようなものである。友人たちとの連絡、情報交換はもっぱらメール。緊急の場合を除いて電話を掛け合うようなことは滅多にない。年賀状だってパソコンで作る。最近は新聞も大方ネットで読む。紙の新聞は1紙だけ取っているが、情報量はネットと比較にならない。テレビは程度が低すぎて時間つぶしにしかならない。ちょっとした情報はすべてネットが頼りである。老人にとってパソコンが使えなくなるというのは大変なことである。数少ない社会の窓が閉じられてしまう。仕事やネット取引に使っていたら生きていけなくなる。パソコンをやらない老人はどうやって毎日を過ごしているのだろう。たまの外出や旅行やゴルフではどうにもならない。

 修理中に一瞬メール機能が復活したのでGP生君に顛末をメールしたら、心配して電話してきた。メールはともかく、伝蔵荘HPはどうなってしまうのかと。あれがなくなると寂しいという。何とか復元して欲しいという。任せておいてくれと言ったが、自信がない。パソコン修理のフェーズは二段階ある。最初はハードウエアの修理、その後はソフトとデーターの復元である。ハードが直っても、ソフトやデータが元通りにならなかったら使い物にならない。伝蔵荘HPの元データが消滅したら復元できない。幸い伝蔵荘HPの全データはBiglobeのサーバーに残っている。パソコンの情報が失われても、そこからダウンロードすれば元通りになると説明して、ひとまず安心してもらった。言えば簡単なことだが、実際にやるとなると大ごとではある。時間はハードの修理の3倍はかかる。今回の大トラブルの混乱で、バックアップしてあったデータの一部が失われてしまった。

 今回のトラブルは、不幸にも原因が三つ重なった。それで大ごとになった。原因が一つだけなら簡単である。数時間で直っただろう。三つ重なるとそうはいかない。最初の原因はハードディスク(HDD)が壊れたことである。それだけならHDDを交換して、バックアップを元に戻すだけでいい。新品のHDDさえあれば、1時間もあれば終わる。それなのにそうはいかなかった。以下は心配してくれたGP生君と、パソコン自作の先生、羽鳥湖のSa君向けに少し詳しい顛末を書く。

 今回のトラブルの原因は三つあった。結果的に分かったことである。一つは単純なHDDの故障、二つめは古いAFT形式のHDDと新しいAFT形式のHDDの互換性の問題、三つ目はグラフィックボード(グラボ)のトラブルである。この2番目の問題はすこし厄介で、最初からその問題があることは承知していた。簡単に言うと、2012年前に製造されたHDD(非AFT仕様)とWindows7が、現在流通している新しいHDD(AFT仕様)と互換性がない問題である。だから新しいHDDを買ってきて、それにWindows7をインストールしたり、バックアップを復元したり出来ない。やっても正常に動作しない。Windowsの大問題なのだが、世の中の人は知らない。

 この解決方法は大きく分けて二通りある。一つはAFT対応の新しいバージョンのWindowsを買うことである。金がかかるし、Win7はもはや売られていない。もう一つは、Windowsがインストールされている古い非AFTのHDDを、新しいAFTのHDDに丸ごとクローンコピーする方法である。羽鳥湖の先生に、コピーに使うソフトはAcronis True Imageが良いと聞いていた。普通のコピーソフトでは駄目らしい。非AFTとAFTの違いは、物理的な書き込みサイズ(セクターサイズ)が違っていることである。新しいセクターサイズに対応していないコピーソフトやWindowsでは互換性を保てない。羽鳥湖の先生からあらかじめ聞いていたので、クローンコピー用のAcronisは用意してあった。古いHDDが壊れる前にこれでクローンコピーしておけば、何も問題はなかったのだ。それをさぼって壊れるまで放っておいたので泥沼にはまりこんでしまった。

 仕方なく、バックアップ用に使っていた外付けケースからもう一台の非AFTを取り出し、これにWindowsのバックアップを復元し、それを新しいAFTHDDにクローンコピーした。目出度く成功と思ったら、今度はその新HDDのWindowsが立ち上がらない。何度繰り返しても駄目。原因がさっぱりわからない。このあたりから泥沼作業が始まった。後でわかったことだが、原因はグラボのトラブルだったのだ。何度か繰り返して諦め、今度は旧HDDに新規インストールしてみたら問題なく立ち上がる。それを新HDDにコピーすると、これも問題なく起動できる。これで大丈夫とほっとして、環境を整える準備を始める。その一環で、マザボとグラボのドライバーをインストールしたらなぜか起動が出来なくなった。何度繰り返しても駄目。どうやらグラボに問題があるらしい。グラボが壊れているのだ。こう書けば簡単に聞こえるが、それがわかるまで、コピーとインストール作業を十数回繰り返した。一回のトライに時間がかかるので、二日目はそれで終わった。もう拷問である。

 三日目、朝食を済ませてパソコンショップへ新しいグラボを買いに行く。ついでにバックアップ用のHDDも買う。もう古いHDDは使い物にならないのだ。帰宅してグラボを取り替えて立ち上げると、今度はうまく動いた。問題のWindows Updateも問題ない。原理的にはこれで成功なのだが、Windowsを最初に戻してしまったので、使えるようにするまでが大変だった。4年も前のWindows7にはUpdateが300個近く溜まっている。それをアップデートするのに半日以上かかった。もっと大変なのはデータや設定の復元である。混乱した作業の中で多くのデータが失われてしまった。大事なものは消さないようにしたが、そのために時間をとられた。やっと基本的な復元が終わって、何とか使えるようになったのは三日目の昨日(10日)の夜である。

 GP生君が気にしていた伝蔵荘HPメンテナンスの環境も何とか復元できて、今これを書いている。うまくアップデートできますように。つくづくパソコンの奥は深い。こういうことをやっていたら、老化防止にはなるだろう。

目次に戻る