伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2014年9月20日: 後期高齢者のゴルフ T.G.

 久し振りに学生時代の寮の友人達と泊まりがけのゴルフを楽しんだ。コースは栃木のニューセントアンドリュース。バブル時代に作られたかなりバブリーな作りではあるが、今は格安の大衆コースになっている。設計者のジャック・ニクラウスが難しく作りすぎたと述懐したそうだが、とにかく難しい。今まで経験した中で最難関のコースである。距離も長く、至る所に池があり、グリーンが蛸壺バンカーで囲まれている。グリーンに転がし上げると言うような誤魔化しが効かない。ショートアイアンやウエッジで高い球を正確に打たないと、池かバンカーにつかまる。バンカーショットがまた難しい。やっとグリーンに乗せても、下手をすると3パット、4パット。よほどの腕利きでないと100を切るのも難しい。

 この超難関コースを後期高齢者4人で廻った。わざわざここを選んだのは、東京と仙台の中間であることと、コース内に宿泊用のホテルがあることだったが、とても美しいコースで、大叩きのスコアは別として大いに楽しめた。夜、コース内のホテルで一献傾けながら、互いの近況や昔話に花が咲いた。

 仙台から車で駆けつけた1年先輩のKiさんは、地元紙の報道部長から役員まで勤め上げたジャーナリストである。以前から悪かった左膝を手術で人工関節に換えたら、ゴルフが出来るようになったという。左膝をコルセットのようなサポーターで固めて、二日にわたる2ラウンドを元気にプレイされた。このコースで特に難しいオールドコースを是非廻りたいと希望したのもKiさんである。プレイ時間が迫るのになかなか到着しない。時間ギリギリに辿り着いたKiさんに聞くと、東北道を飛ばしている途中でカーナビが壊れ、道に迷ったのだという。最近車が壊れて買い換えた。歳を考えて中古車にしたらナビが壊れたのだという。それほどまでしてゴルフを楽しむ気持ちが起きるのはエライ。年寄りの鏡である。

 もう一人の先輩Miさんは資材会社の役員まで勤め上げられた。今は息子さんの事業を手助けしながら悠々自適の生活である。ゴルフが大好きで、退職後ゴルフ仲間とインドネシアに出かけ、1ヶ月毎日ゴルフを楽しんだこともあるという。数年前に心筋梗塞で倒れ、ステント治療を受けた。小生と同じ痛風の質で、尿酸値を下げる薬を飲んでいたが、少しサボったら再発して、足が腫れ上がって歩行も困難になり、去年のこのゴルフ企画には参加できなかった。それが治ったので今年は是非やりたいと希望されていた。 若い頃は70台で廻られていたという。今もステディなゴルフで、球が曲がらない。

 3人で話しが盛り上がっているところへ、4人目のNa君が駆けつけた。同級生の医学部である。Na胃腸科病院の院長で、6時まで患者の診察をし、それが終わって新幹線に飛び乗ったのだという。彼が持参した越後の酒、麒麟山で再び話しが盛り上がる。3年生の死体解剖実習から帰ってきて、食堂で汚れた白衣のまま一緒に夕食を食べている最中、爪をほじりながら、黄色く固まった死体の脂肪を爪で掻き出したなどと平気で言う。はじめて盲腸の手術をしたとき、いくら探しても盲腸が見つからず、あれこれやっているうちに腸を全部引っ張り出してしまったなどと失敗談がでる。そう言う昔話で夜が更けた。

 話の途中で、例の朝日の従軍慰安婦誤報問題が酒の肴になった。古参ジャーナリストのKiさんはあれは朝日新聞の体質だと言う。功名心だけの若手記者がガセネタをつかまされたら、もともと左翼思想が強いデスクが、体制批判のためにどんどん話しをねじ曲げたのだという。どこの新聞社もそうだが、記者が書いた記事原稿がそのまま紙面になることはない。必ずデスクの方針で書き換えられる。根拠のない従軍慰安婦記事を、20年間に19回も載せたのはデスクの方針が決まっていたからだという。その際証言の信憑性などは問題にならず、一度方向が決まったら突っ走ってしまうのだと言う。どの新聞社でも同じだという。

 仮にそうだとしても、そう言うデスクの強い意図は、何か目的があってのことだろう。一連の従軍慰安婦報道で朝日のデスクは何をしたかったのか。左翼マスコミは好きではないが、百歩譲って認めるとしたら、彼ら自身の確たる目的があったはずだ。そうすることで日本を変革するとか、現体制を打破して左翼政権に導くとか。そうであったなら、賛成は出来ないがそれなりに一幅の絵ではある。東電の吉田調書報道にしろ、虚偽と分かっていて日本をことさら貶める意味が分からない。そうすることによって日本をどうしたかったのか、目的がまったく理解できない。従軍慰安婦は旧日本軍の問題で、いくら叩いても現政権批判にはならない。東電作業員撤退報道は日本人の公共心欠如を示すだけで、日本を彼らの好む方向へ引っ張っていくわけではない。何のために朝日はあんな愚かなことをやったのか。

 その疑問に対してKiさんが言うには、そもそも新聞社にはそんな大それた目的などない。ただセンセーショナルに報道して発行部数が上がればいい。それが唯一最大の目的なのだという。デスクが取材ネタを好みでいじくったのは、別に高尚な哲学があるわけではなく、売らんがためだ。エロ記事で部数を伸ばす社もあれば、反体制リベラル左翼で伸ばす会社もある。朝日は一時期それが成功して日本一の発行部数になった。左翼好みの読者が喜んで読んだ。今回はそれが裏目に出ただけで、君の言うことは新聞社を買いかぶり過ぎだという。その通りだとすると、今回のねつ造報道は、根拠もなく朝日をインテリ向けのクォリティペーパーと持ち上げた日本人が悪いと言うことになる。大新聞社とはいえ、国民の手のひらの上で泳いでいるだけ。悪いのは好き勝手に泳がせた国民と言うことだろう。

 翌朝早起きして、再び超難コースを1.5ラウンド楽しんだ。後期高齢者としては上出来だろう。昨夜飲み過ぎたNaドクターは、夜中の2時に目が覚めるまでベットの下で寝ていたという。寝相の悪さは学生寮の頃とまったく変わらない。

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