伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2014年5月24日: なぜタンパク質とビタミンが必要か GP生

 先日、長い間、体調不良に悩まされている30代半ばの知人女性との電話で、 「如何したら、体調が良くなるだろうか」と聞かれた。彼女は、一女の母でもあ る。彼女は、独身時代から、気ままな食生活を送っていたし、結婚してからも、 栄養状態にあまり関心がない事は知っていた。妊娠、出産、育児が、体調不良を 促進させたようだ。彼女は栄養に関心がない事を認めている。所謂、高学歴の文 系女子だ。話しを聞いて、タンパク質とビタミンの絶対量が不足しているのは明 らかだった。「これ等が不足すると、何故、体調不良になるかをメールで送るか ら読んでほしい」と話して電話を置いた。以下は、送信したメールである。

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 タンパク質は人体に不可欠な物質です。筋肉、臓器、血管、毛髪、皮膚、爪、 骨等はタンパク質により造られています。60兆の全ての細胞内での代謝活動に不 可欠な2000種とも言われる酵素もタンパク質です。体内で、これ等酵素の製造が 滞れば、代謝が滞り、身体の不調となって現れます。例えば、インシュリンの産 生やアルコール・薬物・毒物の分解は、酵素なしに出来ません。 免疫の主体となる抗体は、硫黄を含んだアミノ酸が無ければ作れませから、あな たが、風邪をひきやすいのは、含流アミノ酸を含んだタンパク質の不足が、原因 の一つかもしれません。

 アミノ酸の数が5000以下の結合物をペプチド、それ以上の結合物がタンパク質 と呼ばれています。骨はタンパク質の一種であるコラーゲンに、カルシウム等が 結合して造られています。骨も新陳代謝を繰り返しています。カルシウムを幾ら 摂取しても、タンパク質不足では骨の骨格が造れません。骨粗鬆症の原因の一つ はタンパク質不足でしょう。

 日々の食生活でタンパク質が足りないと、人体は筋肉からタンパク質を引き抜 き、アミノ酸に分解して、代謝に利用します。寝たきりに近い入院生活では、歩 く必要がありませんから、足の筋肉から不足するアミノ酸を取り出します。退院 後、通常歩行が困難であったり、痩せるのはその為です。一部の病院を除き、病 院食は高タンパク食ではありません。タンパク質不足は病状の回復を遅らせます。

 妻が入院した時は何時も、病院に隠れて、プロテインパウダー、ビタミンを牛 乳にミックスした飲料(これを人フードと言います)を毎食、運びました。医者や 看護師は、妻の回復力の速さに驚いたものです。何回も経験しています。私達が 病気で無くても、プロテインパウダーとビタミンを摂取しているのは、代謝には、 十分な新品材を供給したほうが良いと考えるからです。特に、歳を取ると通常の 食事だけでは、毎日、必要量のタンパク質をを摂取するのが困難です。

 DNAの情報により、細胞内で造られるのはタンパク質です。材料はアミノ酸で す。DNA情報により造られるタンパク質は棒状で、このままでは機能しません。 タンパク質は立体構造となって初めて機能するからです。棒状タンパク質の必要 な部位にビタミン・ミネラルが結合して立体構造を作ります。タンパク質とビタ ミン等を結びつけるのは、偶然の衝突です。衝突の原動力は細胞内の水分子の運 動です。高等学校の化学で習った、水のブラウン運動を思い出して下さい。細胞 内にビタミンの量が多ければ多いほど、結合する確率が高くなります。これを確 率的親和力と呼んでいます。この衝突の確率は、個人差が大きいことが知られて います。多量のビタミン摂取の発想はここにあります。

 ご存知の様に、ブラウン運動は温度が高いほど運動エネルギーが得られるため、 激しくなります。究極が、水の沸騰です。風邪を引くと熱が出るのは、ブラウン 運動を活発化させ、必要な物質を造られやすくする人体の合目的性による働きで す。風邪、インフルエンザの時、発熱による脳障害を防ぐため、頭を冷やし、身 体は逆に温める行為は、古来からの人類の知恵なのです。体温上昇は代謝を活発 化させます。極端な高熱でない限り、安易な解熱剤の投与は、病の回復を遅らせ ます。

 棒状タンパク質を立体化させるビタミン・ミネラルは、体内ではは造れません。 タンパク質とビタミン・ミネラルが結合する割合は、人それぞれです。確率的親 和力の個人差が大きいと言い換えても良いでしょう。ビタミンは、人によって要 求量が大きく異なります。脂溶性ビタミンE、Aは約10倍、水溶性ビタミンCは10 倍から100倍の個人差が有ると言われています。ビタミンをサプリで摂取しても 効果がないと感じる事があります。これは、その人の要求量より少ないからかも しれません。必要量は体の状況により、大きく変わります。ビタミンCやBは過 剰に摂取すると、直ぐに尿中に排出されます。特有の色が付きますから分かりま す。風邪やインフルエンザの時は、ビタミンCを幾ら摂取しても、尿は無色透明 です。人体のビタミンC必要量が飛躍的に増加している証拠です。摂取量は試行 錯誤的で決めるしかありません。

 若い時には不摂生の食事をしても、若さがカバーしてくれます。若さに頼れる のは20歳代まで。30歳を過ぎると衰えてきます。40歳前までは惰性で何とかなり ます。それでも、特定の病を持ったり、体調不良が続く時は、本来の身体を維持 する新陳代謝以外に、人体のトラブルを治そうとする働きが加わります。治すに は新たな材料が必要になります。中心が、タンパク質とビタミンです。あなたの 現状は、通常の食事で体が必要としている栄養素を満たそうとするのは大変困難 です。電話で話したように、プロテインパウダーとビタミンによる補完が必要だ と思います。

 タンパク質を構成するアミノ酸は20種類ありますが、このうち9種類は人体で 合成できません。これを必須アミノ酸とか不可欠アミノ酸とかの名が付けられて います。WHOでも、一日当たり、体重の1/1000のタンパク質の摂取が必要と提唱 しています。しかも、必須アミノ酸の含有割合が出来るだけ高いことが必要です。 体重60sの人であれば、60gです。例えば、卵一個のタンパク量は7.5g、牛肉ひ れ100g中25g程度です。通常食品から必要量と質のタンパク質を摂取するとすれ ば、多量の脂質を食することになります。牛豚の肉を多量に食すれば、飽和脂肪 酸の大量摂取に繋がり、肥満や動脈硬化の遠因になります。卵には必須アミノ酸 全てが含まれています。卵が完全なタンパク食と言われるのは、卵から、ヒヨコ の完全体が生まれ、残るのは殻だけを考えれば当然でしょう。

 毎日,卵を食べる事が必要です。生食は駄目です。白身に他の栄養素の吸収を 妨げる物質がある上、殻を通して細菌感染の恐れがあります。熱により完全に固 めてしまえば、吸収率が低下します。加熱により白身を固めて障害を除き、黄身 が柔らかい、温泉卵が理想です。我が家では、毎日温泉卵を作っています。卵は 含流アミノ酸を含む数少ない食品の筆頭です。卵が腐ると硫黄臭がするのはその せいです。

 タンパク質やビタミンだけで健康は維持できません。細胞膜を作っている脂肪 酸や微小ホルモンの材料になる不飽和脂肪酸を含有する油脂類、腸管免疫を活性 化させる食材、体内の活性酸素に対抗する抗酸化物質等を摂取する必要がありま す。機会があればメールしますが、基本がタンパク質とビタミンであることを忘 れないでください。

 健康を維持するには、食品に含まれる栄養の知識が必要になります。細かい知 識はともかく、何か不足しているか程度の知見は必要です。あなたや高齢者には、 不足している栄養源を補う為に、健康補完食品の利用が必要になります。所謂、 サプリメントは、唯、健康に良いからとの漠然とした効果を期待して利用しても、 お金の無駄になることがあります。基本は現在の食生活で足りない栄養を認識し、 足らざる物を補う、「補完食品」として利用するのが正道だと思っています。

 漢方薬を処方されたとの事ですが、如何なる薬でも、対処療法です。複雑な人 体の代謝活動の一部に干渉し、それが薬効として現れます。長期に薬を服用すれ ば、人体は、それに対処した代謝を新たに行い、バランスの回復を図ります。あ る日、突然服用を止めたとすれば、薬の存在を前提として行われた代謝が行き場 を失い、体調の不良として現れます。漢方薬は薬効が穏やかですら、弊害は少な いでしょう。けれど、薬以前に、身体の修復力を高める食生活に改善するのが正 道だと思っています。

 長い文章になってしまいした。書きたいことは幾らもありますが、この辺にし ておきます。漢方はあくまで一時的なものと考えてください。健康の基本は食生 活にあります。食生活を立案、実施する責任者の奮闘を願っています。

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 タンパク質とビタミン・ミネラルの摂取が大切なのは事実だが、これは健康を 維持するための必要条件に過ぎず、これ等の摂取だけで健康が維持出来るのなら 苦労はない。高齢者にとって、無関心でいられない高血圧、糖尿病、高脂血症、 心筋梗塞、脳卒中、癌等のいわゆる生活習慣病を高タンパク・ビタミン・ミネラ ルだけで防止できるわけはない。夫々の生活習慣病に対処するには、夫々に対処 法が必要になる。

 栄養物質の不足により、現れる身体の不調は人により異なる。一律ではない。 人はDNAと生活習慣が異なるからだ。高齢者にとっては、更に、加齢の進行が 加わる。加齢を止めることは出来なくとも、少し遅らせる事は可能だ。淡白な食 事だけでは、加齢の進行による体調不良を防ぐことは出来ない。PPKを目指す なら、面倒でも、必要な情報を学習し、実践するしかない。

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