伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2014年5月12日: 妖怪ウオッチと帯状疱疹 T.G.

 今年の連休は妖怪ウオッチと帯状疱疹で明け暮れた。

 まずは今大流行の妖怪ウオッチである。小さな子供がいる人なら誰でも知っているが、いない人は知らない。小生も知らなかった。オモチャメーカーバンダイの久し振りの大ヒット商品だそうだ。売れに売れて品薄で、買いたくても買えない。朝一番にオモチャ売り場に並んで籤を引く。当たるとはじめて買える。一回に数個しか入荷しないので、当たる確率は低い。それが人気を呼んでますます品薄になる。うまい商売である。

 連休直前の2日の夜、小学3年生の孫娘から電話がかかってきた。3日の朝、近くのスーパーで妖怪ウオッチなるものの発売があるから連れて行ってくれと言う。朝一番だという。孫から電話でものを頼まれるのは初めてのことだ。聞かないわけにはいかない。翌3日、早起きして朝一番に孫を迎えに行き、その足で開店前のスーパーに行く。すでに子供連れが50人ぐらい並んでいる。行列はどんどん長くなって、9時の開店時間には数百人に増えていた。開店と同時に係員の案内で行列がオモチャ売り場に進む。もう店内は大勢の子供達のはしゃぎ声で大喧噪である。よほど人気があるのだろう。

 やがて籤が配られ、抽選が始まる。この日はメイン商品の妖怪ウオッチの入荷はなく、妖怪大辞典第二巻がわずか5個、妖怪メダルが2種類144個ずつだけである。当然当たる確率は低い。目玉の大辞典なんて宝くじ並みである。まず品数の多いメダルから抽選が始まった。籤は一緒に並んだ老夫婦と孫の3枚。何とかそのうち2枚が当たって孫は大喜びである。次いで本命の大辞典。数百人に5個だからまず当たらない。諦めかけたとき、小生の籤が当たった。孫が飛び上がって喜ぶ。当たってもタダで貰えるわけではない。レジに並んでメダルと合わせて2千円払って購入する。品物を手にした孫はもう有頂天である。周りを見渡すと、大喜びの子供とがっかりした子供があちこちに大勢いる。ここにいると少子化が嘘のようだ

 これに味を占めた孫が、4日も5日も同じことを頼んできた。あの喜ぶ顔を見てしまったら断れない。三日続けて朝一番にスーパーの列に並ぶ羽目になった。孫は仕事休みのパパと別のスーパーのクジ引きにに参戦するので、こちらは家人と二人だけ。要するにクジ引き要員にされたのだ。今回は大目玉の妖怪ウオッチが8個入荷していたが当たらなかった。孫のがっかりした顔が目に浮かぶ。周りを見渡すと、同じような老夫婦がたくさんいる。うちと同じで孫にクジ引き係に任命されたのだろう。こういう光景が日本中の大手スーパーやショッピングセンターで繰り広げられているに違いない。これが販売戦略としたら、バンダイの商法は大成功である。在庫を持たずに、作ったものが右から左に売れる。品切れでも顧客は逃げないから機会損失もない。

 これで疲れたのか、帯状疱疹を発症した。疲労、ストレス、老化が発症原因の病気だという。5日こどもの日、三日続けての籤引き大抽選騒動から帰宅して顔を洗おうとしたら、鏡に映った左側の首筋にボコボコが広がっている。触っても痛くも痒くもない。下着を脱いでみると、ボコボコは肩から胸にかけて広がっている。家人に見せたら帯状疱疹ではないかという。つい最近彼女の兄弟が罹ったのでそう思ったらしい。虫さされなら痒いはずだし、帯状疱疹なら痛いはずだ。手当が遅れると治りが悪くなると家人が言うので、近くの休日診療所へ行く。担当医は見るなり茶毒蛾にやられたのだろうという。それにしては痒くない。帯状疱疹ではないかと質すと、帯状疱疹はこういう出方はしない。神経に沿って出るので、首から胸には広がらないと自信たっぷりに断言する。後で甚だしい誤診と分かったが、こちらは素人である。医者にそう言われたらそう思うしかない。副腎皮質ホルモン入りの軟膏をもらって帰宅した。

 軟膏を塗り続けても一向に良くならない。次第に痛くなってくる。4日目の9日になって軟膏がなくなりかけたので、近くの掛かり付けのクリニックへ行く。一目見て帯状疱疹だという。これが茶毒蛾であるわけがないという。ただちに点滴と特効薬を処方される。帰宅した頃から痛みが強くなってきて、夜は寝られないくらいの痛さになった。帯状疱疹特有の神経の痛さである。帯状疱疹は痛いのが特徴の病気だそうである。

 帰宅してインターネットでいろいろ調べてみた。変わった病気である。子供の頃に罹った水疱瘡のウイルスが、なぜか神経節の中で生き長らえていて、何かの機会に暴れ出す。症状は皮膚の疱疹と痛み。帯状に疱疹が広がるので帯状疱疹という。身体の左右どちらかで、なぜか両方に出ることはない。トリガーになるのは疲労、ストレス、老化だという。自分の場合は老化と妖怪ウオッチの疲れだろう。誰でも罹る可能性がある。命の危険はないし、臓器がやられたりすることはない。神経細胞が傷めつけられるので、症状がひどいと神経痛が残る場合がある。疱疹が目や耳に出ると、失明、難聴になる場合もあると言う。

 特効薬はバルトレックス。インフルエンザのタミフルに似ていて、ウイルスを細胞内に閉じこめて増殖を防ぐ。それによって治癒を早める。出来るだけ早期に服用すると治癒効果が高い。自分の場合は医者の誤診で4日遅れた。藪医者め! 免疫力が低下した老人に多く、60過ぎると死ぬまでに6〜7人に一人が罹る。80歳を過ぎると二人に一人だそうである。

 来週と再来週に、伝蔵荘泊まり込みのゴルフがある。来週は例会だが、再来週は会社同期の仲間とのゴルフコンペ。家主が行かないと話が始まらない。心配した仲間達から見舞いメールが届く。まだ2週間あるから多分大丈夫だと返事を出しているが、なにせ初めての病気。どうなることか分からないが、最低小屋を開けに行くことくらいは出来るだろう。うまく治ればゴルフも出来るだろう。安静にしていると回復が早いそうなので、せいぜいのんびり楽にしている。そんなわけで今日の食事は久し振りに上げ膳据え膳である。

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