伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

平成26年元旦: 初詣と靖国参拝 T.G.

 遅く起き出して、家人と二人、雑煮とおせち料理でお屠蘇代わりの純米吟醸を飲む。朝っぱらの酒は酔いが早い。酔いが覚めた昼過ぎ、自転車で近くの神社に初詣に行く。荒川流域の農村の、五穀豊穣を祈る神社である。早朝の初詣の賑わいの名残か、午後になっても近隣の人たちが三々五々訪れている。父親に連れられた腕白盛りの少年が、かしこまって二礼二拍手の作法でお参りしている。日頃は人気のない田舎の神社だが、日本人の信仰心はまだまだ捨てたものではない。普段は無宗教に見える日本人も、四季折々の行事で神仏に対する信仰心が呼び起こされるのだろう。

 それで思い出したのが靖国神社のことである。戦争が押し詰まった昭和19年、父が赤紙招集された。小さな呉服商をしていた、30過ぎの6人の子持ちの老兵である。輸送船でフィリピンに出征し、ミンダナオ島に到着した後、あっけなく戦死した。戦病死と言うからろくに鉄砲も撃たなかったに違いない。戦死公報と一緒に送られてきた箱に、小さな石ころが2,3個入っていた。「遺骨かどうか分からないよね」と、亡くなった母親がこぼしていたのを覚えている。

 残された母子7人、名古屋大空襲の中を必死で逃げまどった。一番年上の長姉が小学生。末弟は生まれたばかりの赤ん坊。奇跡的に一人も死ななかった。全員が生き延びたが、幼い子供6人を抱えた母子家庭の戦後は、悲惨そのものだった。父親が残してくれたわずかな蓄えは、出征直前に店をたたんだ金で買った川崎造船の株券だけ。戦争特需で景気の良かった川崎造船を信じたのだろうが、戦争が終わったら、洟もかめないただの紙切れである。父親も家も家財道具も、一切合切失った我が家は、地べたを這いずり回るような母親の働きで戦後の日々を過ごした。少し余裕が出たのは、戦後が終わった昭和33年頃。小生が大学に入る直前である。もう少し戦後が長引いたら、今この日誌を書いていない。生きていたかどうかも分からない。

 父親が銃も撃たずに死んだ役立たずの老兵だったためか、未だに靖国神社からも遺族会からも、何の通知も連絡もない。おそらく靖国には祀られていないのだろう。母が生前、靖国を口にしたのを聞いた憶えがない。それもあってか、靖国には何の思い入れもない。参拝したこともない。会社でコンピュータ商売をしていた頃、顧客の国税庁の担当官に頼まれて、花見の場所取りにゴザ敷きに行ったくらいである。だから靖国には何の関心もない。行きたい人は勝手にお参りをすればいい。例え総理大臣でもとやかく言うことはない。そう思っている。それが信仰であり、文化と言うものだろう。

 アメリカ大使館が安部首相の靖国参拝を「失望した」と言ったら、アメリカ大使館の公式Facebookが炎上した。「中国韓国とは違い、アメリカは信頼できる同盟国と思っていたが、大いに失望した。オバマのアーリントン墓地参拝と何が違うのか。見損なった」という書き込みが殺到したらしい。普段は物言わぬ大人しい日本人の、怒りを込めた書き込みの嵐に、アメリカ政府が驚いたらしく、言い方をトーンダウンさせた。「靖国参拝そのものに失望したのではなく、それによって近隣諸国と摩擦を起こしたことに落胆しているのだ」と。分かりやすく言えば、折角うまく行っている中国との商売の、邪魔をしないでくれと言うことだ。つくづく自分勝手で単細胞の国である。

 アメリカが見誤ったのは、朝日やNHKなどの報道で、大方の日本人が靖国参拝に批判的だと誤解したからだろう。事実日本の新聞テレビは、直後から靖国参拝批判記事で溢れた。ご丁寧に中国、韓国や諸外国の中傷誹謗記事を集め、あたかも世界中が反対しているような報道をした。賛成意見については何も書かない。外国人が見たら、誰だって日本人は靖国反対で凝り固まっていると見えるだろう。そう誤解している日本人も少なからずいる。

 実際問題として、大多数の日本人は首相の靖国参拝に賛成している。少なくとも批判は少数派である。例えば、直後から行ったヤフーの世論調査によれば、「参拝を妥当」と見る割合が76.7%、「妥当でない」が23.3%と、圧倒的に賛成である。多分に誘導的な朝日や共同通信の世論調査でさえ、賛否は拮抗している。控えめに見ても、日本の世論が反対に傾いていると言うことはない。今のネットの時代、バイアスがかかったマスコミ調査より、ネット調査の方が真実に近い。世論調査の母集団なんていくらでも操作できる。確率統計を学んだ元数学科が言うのだから間違いない。

 金詰まりのアメリカは、北東アジアでいざこざを起こしてもらいたくいない。経済音痴のオバマの政策はまったくうまく行っていない。政府予算執行が止められて、危うくデフォルトを起こしかけた。もうオバマはレームダック状態である。FRBのバーナンキがドル札をジャブジャブ撒いているので、何とか持ちこたえているが、いつまでも続けられることではない。近々お終いになる。オバマのアメリカにとって中国経済と中国の対米投資が命綱なのだ。だからオバマは習近平に逆らえない。尖閣やウイグルでおかしな事をやっても、何も言えない。アメリカ得意の人権外交なんてとっくの昔に破綻している。子分の日本は生意気言わずじっとしていろ。靖国ごときで中韓と騒ぎを起こすな。我々の商売の邪魔をするなんて了見違いも甚だしい。引っ込んでいろ。それがアメリカの本音である。

 外国や新聞テレビだけでなく、日本人も訳の分からぬことをつべこべ言う。大方が政教分離とA級戦犯がらみである。戦争犯罪人を祀った神社は不届きだ。そんなところへ参拝する総理も不届きだと言う。ほとんどの連中がA級戦犯とそれを作り出した東京裁判のことを知らない。戦争が犯罪だと誤解させられている。アメリカがそう言うならそうだろうと単純に思いこんでいる。要するに不勉強、無知なのだ。無知を通り越して、参拝が軍国主義賛美だなどと愚かなことを言う。戦争へ繋がる道だなどと、見当違いを言い出す。そう言う自虐で喜んでいる。彼らは神社がどういうものか分かっていない。日本がどういう国かも分かっていない。分かろうともしない。左翼マスコミ、朝日、NHKの受け売りである。

 ネット時代になって、新聞テレビなど既存マスコミは存在意義を失いつつある。今頃は、大方が新聞テレビでなく、ネットで情報を得るようになった。新聞テレビより、ネットの方が真実に近いと気付き始めた。だから新聞の売れ行きと視聴率が下がり始めている。GHQが仕組み、日教組とマスコミが広めた東京裁判史観の化けの皮が剥がれ始めている。多くの人たちが日本の歴史について真実を知り始めている。そのことはアメリカ大使館公式Facebookの何千もの書き込みを見れば分かる。分の悪い既存マスコミは、それをネット右翼などと見当外れの批判をするが、実名投稿のFacebookは2チャンネルとは違う。もう後戻りはないだろう。日本の世論は正しい方向に向かう。そんな気配を感じる新年の元旦である。

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