伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2013年12月19日: 毎年恒例、伝蔵荘忘年会 T.G.

 毎年恒例の伝蔵荘忘年会で、那須の板室温泉に出かけました。2泊3日、2食付き6500円という格安温泉旅館です。経費節減のためか、部屋が暖房が効かなくて寒いのには参りましたが、食事は一泊6500円にしてはそこそこ、温泉は上等。貧乏人の忘年会にはもってこいです。掛け流しのぬるめの湯は何度入っても快適。明け方から夜中まで、三日間で計20回ぐらい入りました。宿に着くなり、Fu君が持ち込んだ一本9000円の純米大吟醸万寿と八海山の一升瓶を開けて酒盛りです。食事の時にはいい加減出来上がっていました。

 翌日は山歩き組と宿に沈没組に別れて別行動です。山歩き組は板室温泉の西側にある百村山に登ることにしました。百村山は標高1085mしかない低山です。少し汗を流したら夜の酒がさぞ美味くなるだろうというぐらいの軽い魂胆です。登り口まで車で行くと、光徳寺というお寺がありました。曹洞宗に属する古寺で、永正九年(1512年)開山だそうです。参道には樹齢数百年の見事な杉並木が続いています。本堂もなかなか立派で、これほどの名刹がこんな片田舎の山村にあるのが驚きです。杉並木は天然記念物に指定されているそうです。

 寺の横から伸びている登山道を辿ると、最初のうちは踝ぐらいまでだったた雪が、登るに連れて膝まで没する深さになり、ラッセルがきつくなり始めました。途中で稜線に出ると小さな雪庇が出来ています。夕べ降った新雪らしく、乗り越えようとすると腰まで埋まってしまいます。足が雪の上に持ち上がりません。手で足を持ち上げながらのラッセルです。たかが千メートルのハイキングと侮っていたのが間違い、ラッセルを交代しながらのきつい登山になりました。

 雪に足を取られながら、尾根に沿って幾つかの小さなピークを過ぎると、やがて百村山の頂上です。夏道だと1時間半のところが2時間半かかりました。1085mと言う標識がぶら下がっています。頂上と言うより稜線上の林の中のコブです。稜線のはるか先の黒滝山(1754m)が主峰なのですが(主峰という言い方も大袈裟ですが)、夏でもここから更に2時間かかります。この雪の深さではとても先には進めそうにないので、ここで引き返すことにしました。下のコンビニで買った握り飯を立ったままそそくさと食べて下山です。寒くて仕方がないので座ってゆっくり食べる気になりません。5分で食事を済ませて下山です。下りはラッセルが出来ているので至極楽チン。どんどん下って1時間半で光徳寺の参道に戻りました。

 帰途、板室温泉をバイパスして、さらに奥の深山ダムまで車で上りました。このダムサイトを溯ると三斗小屋温泉に至るそうです。

 ダムサイトで寒風に曝されていたら、身体が冷えきってしまいました。たかがハイキングと侮って、いつもの登山用下着を着用せず、ユニクロのヒートテック下着で済ませていたのですが、汗に濡れたヒートテックが冷たくなって、胴震いするほど寒く感じました。歩いているうちは暑くて寒さを感じないのですが、身体が冷えると汗で濡れたヒートテックは冷たくなってどうしようもありません。汗を発散させる登山用の下着と違って、汗を吸い込んだままなのです。この状態で一晩ビバークしたら、おそらく凍死するでしょう。ヒートテックは汗を吸収して発熱すると言うのが謳い文句ですが、登山にはまったく向かないと言うことを痛感しました。そもそも汗を吸って発熱すると言うのが変な話です。魔法じゃあるまいし、汗から熱が出るわけがありません。科学の原理に外れています。

 翌日宿をチェックアウトして帰途につきました。途中でいつものチーズケーキ屋さんに立ち寄って、チーズケーキ付きのモーニングコーヒーを楽しみました。那須インターから高速道に乗ると、はるか右方に昨日登った百村山が見えます。那須連山の中でもひときわ低い、地味な稜線です。これで平成25年の伝蔵荘忘年会は無事終了です。

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