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2013年2月3日: 暇爺の朝鮮紀行、アベノミクス講評 T.G.

 前に書いたイザベラ・バードの「朝鮮紀行」とアベノミクスに関する日誌に、暇爺からメールで講評が送られてきた。日韓併合について君が今まで言ってきたことと違うではないかと言う批判と、日銀白川総裁に関する記述が下品すぎるという指摘である。前者については、別に宗旨を変えたわけでなく、今まで言ってきたことと矛盾するわけではない。日韓併合に関する小生の歴史観は一貫しているつもりだ。白川氏の記述については確かに品性に欠けていた。日頃デフレに関する彼のやり口、ものの考え方に大いに疑問を感じていたので、つい筆が(指がと言うべきか?)滑った。さっそく改めます、と返事を送った。以下はそのやり取りである。

TGくん
 伝蔵荘日記に掲載されているイザベラ・バードの朝鮮紀行の読後感想文の調子が、日頃の君の朝鮮に関する話方とちょっと違いますね。日頃の言動では「朝鮮を併合したことで、日本は朝鮮半島の発展に協力したのだ」と言う話しぶりだったのに、朝鮮紀行の日誌では、「日本人は中国、韓国に変な思い入れや過大評価せず、もう少し距離を置いて、客観的な見方をした方がいい。そうしないとまた同じ失敗を繰り返すだろう」などと、かなり客観的な論調になっているように思いますよ。
 一方、「アベノミックスの行方」での白川攻撃は表現がいただけないですね。 意見はいろいろ言ってもいいと思いますが、嫌悪感が前面にでているだけのように感ぜられて、読んでいても嫌な感じになりますよ。 ちょっと読後感を紹介しました。 暇爺より

それに対して次のように返事した。

暇爺どの
 ご講評頂き感謝。ご指摘の朝鮮紀行日誌の最後の論調は、常々思っていることです。日本人は(まさしくバードが指摘した)中華(支那)、小中華(朝鮮)の本質を理解せず、中国大陸と朝鮮半島で数々の間違いを犯して来ました。中華、小中華はかの国の人たちにとって世界の中心、帝国であって、日本はその辺境の冊封国であるに過ぎない。今も昔も彼らは日本をそう見ているのです。良かれと思って日韓併合をしたり、孫文らの辛亥革命を応援したり、満州国を作って、何もない無人の荒野に鉄道インフラや生産工場を造ったりしても、すべて裏目に出ました。彼らはそれを有り難がるどころか、位の低い辺境の冊封国の出しゃばり、生意気、傲慢としか見ていない。その結果、70年前に中華小中華の世界から身ぐるみ剥がれて叩き出されました。

 その歴史の教訓を忘れて、今頃皮相的な日中友好、日韓友好を唱えるのは愚かです。日本人はあの戦争から何も教訓を読み取っていないように見えます。最近その愚かさが再び裏目に出始めました。かの国の経済発展に、良かれと思っていくら日本が尽くしても、反日が出始める。日貨排斥が始まっている。中国各地で繰り返される反日デモの光景は、80年前の日貨排斥運動のデジャブを見ているようです。バードの記述にも、日本がいくら尽くしても朝鮮の人たちに嫌われている様子が随所に出てきます。昔も今も、基本的に朝鮮の人たちは日本人が嫌いなのです。日本人がそのことを忘れ、再び過ちを繰り返そうとしているように見えて仕方ありません。中国朝鮮は、あの頃と何も変わっていないのです。日本人は、日中、日韓友好などと言う軽々しい思いこみ、幻想を捨て、中華、小中華と距離を置くべきです。そうしないと再び70年前のような手痛い目に遭うでしょう。もうすでに遭いかけているかな。

 日韓併合を良いことなどとは昔から思っていません。明治維新以来、日本が犯した愚行の最たるものです。歴史の教訓として、もう二度と繰り返してはいけません。しかしそのことと、併合によって朝鮮が利益を受けた事実は別です。バードの紀行文を読むとそのことがよく分かるでしょう。日本に遅れること30年、インフラも、金融も、教育制度も医療もなかった極貧国が、その10年後には日本のお陰で鉄道が出来、発電所や工場が出来、教育制度と学校が出来、誰でも教育が受けられるようになったのです。その結果今の豊かさがあるのです。国を奪われた屈辱は別として、朝鮮の人たちはその事実から目を逸らさず、受け入れるべきです。歴史に対してそういう風に客観的な見方が出来ないと、また出来ないからこそ、この国はいつまでたっても真の独立国になれない。常々そう思っています。

 アメリカとロシアが、別々の事情でこの半島から手を引きはじめた今、このまま行くと、韓国北朝鮮は10年後には元の中国の冊封国に戻っているでしょう。すでにそうなりかけていますよ。前の李政権や、今度の朴政権を見ていると、どうもそれを望んでいる節がある。アメリカから離れて中国にすり寄っている。日本をけっ飛ばして中国と通貨スワップを結んで安心している。北朝鮮なんかすでに中国の植民地そのものです。中国の点滴注射でなんとか生きながらえている瀕死の病人です。

 白川攻撃は少し品がありませんでした。ご指摘痛み入ります。今までの白川氏のやり口はどうにも気に入りません。日本のデフレを放置した張本人と思って、日々腹に据えかねていました。それでつい筆が滑りました。もう少し婉曲な、上品な表現に変えます。伝蔵荘日誌はいい読者を持って幸せです。       T.G.より

 それに対して暇爺から返事が来た。

TGくん
 日韓併合は確かに朝鮮のことを思ってやったことも多いとは思いますが、何をしたって「国を奪われた屈辱」に比べたら比較にならないんじゃないかと思っています。例え朝鮮が清の朝貢国だとしても、それは彼らが選び、それなりにお互いメリットを感じていたのに、日本が割り込んで入り、挙げ句の果ては併合ということをしたという事実は変えられないと思います。 「そうしなければどうなったか」などというのは架空の話で、日本にとって朝鮮がどうなっても良かったんじゃないでしょうか。我が国に災禍が及ぶようなら断固とした行動をすることは必要だとは考えますが。

 最近の中国の公害問題なんかそれに当たると私は考えています。日本政府は何もしないんですかね。抗議をしたのでは角が立つので、強めの提言などする必要があるのではないかと思っています。

 国家は自国のことだけ考えて、他国のことは国際ルールの範囲で、自国に不都合でないよう付き合うってのが良いんじゃないかと思っていますがね。アメリカなんかその代表じゃないでしょうか。そう言う意味では、あの時代に他国に侵略するのも国際ルールの範囲内だとは思いますが、やりかたが拙かったですね。英国やスペインなどは遥かにひどい事をしていますが、それほど恨まれてもいませんような気がします。ああいうのをよく学んで欲しいですね。現代においても。           暇爺より

 それに対して次のように返事を返した。

暇爺どの
 この問題は日本にとって歴史の教訓ですね。日本人の悪い癖で、すぐ歴史を忘れる。他国のことを言えた義理ではありません。

 「国を奪われた屈辱」と言えば、戦後の日本の歴史はまさにそうです。政治も経済も教育も、進駐軍のいいようにされ、望んでもいない憲法や教育制度を押しつけられたのに、それを屈辱とは感じていない。マッカーサーが憲法9条を押しつけたとき、イギリス大使館は、「日本はさぞ屈辱に感じるだろう。その代償としてアメリカに日本を守らせるだろう」という報告を本国外務省に送っています。でも屈辱は残らなかった。かえって喜んだ。いつまでたっても屈辱を忘れない韓国北朝鮮とは大違いですね。またそれが日本のいいところでもありますね。

 君が言うとおり、中国の冊封国に戻ることは、韓国北朝鮮の人たちにとって、屈辱ではなく自然な成り行きなのでしょう。その方が心地よいのでしょう。日本がとやかく言うことではなく、黙って見ていればいいのは確かです。しかしながらあの時日本が併合したのは、まさしく君が言うように「我が国に災禍が及ぶようなら断固とした行動をする必要」に迫られていたことも事実です。朝鮮のためを思って併合したわけではなく、朝鮮半島を押し寄せるロシアの脅威の防波堤にしたのです。これも厳然たる歴史です。歴史に善し悪しはありません。

 経済的メリットを与えたのだから屈辱は忘れよと言っているのではありません。歴史を直視しろと言っているのです。日韓併合条約には当時の李朝政府が合法的に調印しているのです。いかに不愉快でも、自分の国がなぜそう言う屈辱を余儀なくされたのか、原因はどこにあったのかを見つめる必要があると言っているのです。歴史から目を逸らしては駄目です。最近の韓国が経済的には発展しても、いつまでたっても独立国家としての体をなさないのはそのためでしょう。中国の冊封国に戻る流れです。

 君の言う「国家は自国のことだけ考えて、他国のことは国際ルールの範囲で、自国に不都合でないよう付き合うのが良い」は、まさに国際関係の要諦ですね。どこの国もそうしています。それが僕の言う距離を置くと言う意味です。日本が一番苦手なことです。20世紀初頭、日本はそれに気が付かずに、数々のへまを犯しました。特に中国朝鮮を相手に。日韓併合なんて、距離を置かない稚拙な国家関係の典型です。日本にはイギリスやスペインのような、距離を置く植民地経営の老獪さがなかったのです。だから良かれと思って教育にまで手を出した。そのことをいつまでも恨まれている。イギリスはインド人の教育などしませんでした。ただただ搾取した。だから恨まれていない。不思議なものです。

 最近の日本がその愚を繰り返そうとしているのが気懸かりです。いくら中国朝鮮に袖にされても、安易に友好をとなえて付き合おうとする。工場を破壊されてもトヨタパナソニックは進出をやめない。この風潮は、たびたび日誌にも書いていますが、戦前の財閥が、「満蒙は日本の生命線」と煽ったのと似ています。このまま行くと70年前の再現になるでしょう。欧米の中国進出は、いつでも逃げ出せるように、資本進出とアップルがやっているような下請けだけにとどめています。日本のように首までどっぷり浸かって設備投資し、自前の工場や店舗など作りません。あれを見倣うべきですね。

 僕は前からこういう意見です。別に考えを変えたわけではありません。 TGより

 久しぶりの爺さん同士のメール論争。幾つになっても持つべきものは友達だ。

 

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