2012年12月27日: 一寸先の闇 GP生 ![]() 最近の事だ。結婚3年で1歳の女の子を持つ、知人の夫婦に危機が訪れた。 夫が妻のカードを使い、スロットに50万円近くをつぎ込んだ事が発覚したことに端を発する。 以前にも、妻に隠れて70万円の借金をサラ金で行いギャンブルにつぎ込んだ。これが妻に分かり、この時は離婚寸前まで行った。 離婚を留まったのは、程なくして妻の妊娠が分かったからだ。その時は、夫は心配する双方の両親に対して、「今後、絶対にこの様なことを事はしない」旨、頭を下げて誓った。 それから、一年半足らずして再び同様な事を行った。 妻に責められた夫は「死んで償うと」家を飛び出し、連絡が途絶えた。 4日目に、死にきれず持ち金を使い果たして、やせ細って屍の様な形相で戻ってきた。 夫は間違いなく心を病んでいた。 親族が相談の上、遠方地に住む夫の両親が息子を治療させるため、引き取り連れて帰った。 診断の結果はギャンブル依存症であった。 誰が見ても、今後の夫婦生活は困難。殆んどの縁者は、この機会に離婚した方が子供の為にも良いとの意見だった。 しかし、妻は子供と二人の生活に自信がなく、決心がつかぬまま心が揺らいでいる。 ![]() 自分にも忘れられない記憶がある。 対馬の鉱山勤務時代で30代の初めの頃だ。二の方で行った坑道での溶接作業の不始末から出火し、坑木に燃え広がった。 この為、全山の生産は10日間止まつた。 鉱山消防隊の決死的作業や、酸素遮断の為の坑道閉塞作業、延焼坑道めがけての幾本も打ち込んだボーリング孔からの注水作業等を、鉱山総動員で行い消し止めた。 自分は出火責任者として、10日間坑内に詰めっきりで、自分のチームの陣頭指揮を行った。 幸い、家人は所用で実家に帰っていたので、辛い思いをさせずに済んだ。 坑内で数回寝た記憶はあるが、細かい事は覚えていない。 三交代の作業チームを果てることない思いで、24時間指揮した事は、今も心に残っている。 消火が確認された当日、睡眠不足と疲労困憊の極限の中、労働組合事務所で安堵感に浸っていた。 信賞必罰の鉱山社会だ。後は、会社からの処分を待つだけだ。 命を取られるわけではない。好きなようにしてくれとの思いだった。そんな時、実家から電話がかかってきた。「父が、くも膜下出血で倒れ、意識不明」だと言う。 正に、一寸先は闇だ。放心状態で天を仰いだ。天は坑内火災鎮火だけでは解放してくれなかった。 更なる試練が待っていた。翌朝、博多港行の船の飛び乗った。 今にして思う、天が自分に与えた、この世での試練であったのだろう。 ![]() 阪神淡路大震災の時の村山総理は「何せ初めての経験だから」と言って、自衛隊即時派遣を決定すらできなかった。 革新系の兵庫県知事も自衛隊派遣要請をためらった。 その結果、初期救援は遅れ、死傷者は増加した。 3.11大災害に際しては、菅総理は周章狼狽し、官邸は機能不全に陥った。 施政者にとって、一寸先は闇、何が起こるか判らないとの心構えが必要なのに、両者ともその自覚すらなかった。 突然の事態に際して必要とされるのは、胆力である。 如何に優秀なスキルを有しているとしても、胆が据わっていなければ発揮は出来ない。 かくも最低無能の最高責任者の施政時を狙ったように、大災害が発生するのは偶然ではないだろう。 ![]() この世は荒い波動に満ちていて、一時も安定していない世界であると言われている。 この世に生きる者にとっては、一寸先は闇に包まれ、先の見えない人生を強いられる。 潜在意識が開かれていない故に、自分がこの世に生を受けた目的も、役割も闇に包まれたままだ。 其れが、人の魂の修行に繋がるそうだが、大変に厳しい現世と言える。 もし、先が見えてしまったら、どれ程、味気ない人生になる事だろう。 何年か先に、自分が病気ゃ事故により命を失い、死に至る前に、かくかくの苦しみに悩まされると事前に分かったとしたら。また、人生真っ盛りの時期に、自分がこれから辿る道を見通す事が出来たとしたら、生きる意欲は生じるだろうか。 人がこの世で生きる上で、一寸先が闇であることは天の配剤でもあるのだろう。 施政者にとっても、我々庶民にとっても、例え、一寸先に闇が存在しているとしても、漫然と手をこまねく事無く、事が生じた時に最善の判断と決断を行えるよう、自らの人間力を磨き続ける事が必要なのだろう。 事を行うに際して、「最悪を予想し、最善の備えを」との危機管理の鉄則も、心に留めておく必要がある。 先が見えぬ闇が存在しているからこそ、時には生きるために、苦しみあがきながら、突然生じる困難に立ち向かわざるを得ない事になる。 困難や苦難を全力で乗り越える事は、人がこの世に誕生した目的の一部を、果たすことに繋がるのかもしれない。 先の若夫婦が今後、如何なる道を辿るのかは闇の中だ。 しかし、闇の中に光を照らせるかは、双方が思い遣りの心を持って、信頼関係を築けるかに掛かっている。 例え、明日を見通す事が出来なくとも、自身の誤りを正すには、己の自覚と努力しかない。 親兄弟、親類縁者、医者、カウンセラー等周囲の助力は必要かもしれないが、自らを助けるのは自分自身しかない事を、若い夫が悟ってくれる事を願っている。まだ、物心つかぬ幼い我が子の為にも。 |