【伝蔵荘日誌】

2012年12月17日: 選挙のたびに繰り返される憂鬱 T.G.

 総選挙が終わった。 自民が圧勝、294議席だという。 それに対して民主はたったの54議席。 小沢の離反で議席が230に減っていたとは言え、壊滅状態に近い。 官房長官をはじめ、閣僚級が次々に落選した。 3年前は308議席も取ったというのに、この体たらくはどういうことだろう。 見るも無惨である。 出口調査によれば、前回民主支持だった有権者のうち、わずか27%しか民主に投票していないという。 28%が自民党に票を入れたのだという。 こうなると、民主党の体たらくより、選挙民のお粗末さに首をかしげたくなる。 自民に投票したこの28%は、3年前何を考えて民主に投票し、今回は何を思って自民に票を入れたのだろうか。 AKBの選挙ではあるまいし。 この浅薄極まる選挙民あってこの政府。 民度以上の政府は持てないとはよく言ったものだ。

 有権者が民主を見放した理由は重々分かる。 あれだけ無能で、あれだけ政治理念に欠けたやり口を見せつけられれば、誰だって嫌になるだろう。 嘘つきの代名詞になったマニフェストを思い出すと、腹が立つのは無理からぬことだ。 しかし、そうなることは3年前から分かっていたはずだ。 あのマニフェストが実行不可能な絵空事であることは、足し算引き算しかできない小学生でも分かる。 鳩山や菅が政治見識を欠いた無能力者であることは前から分かっていた。 左から右までの寄せ集め政党ではなにも出来ないことは、よほどの馬鹿でない限り分からないはずがない。 それすら分からず、前回も今回も、雪崩をうって無定見な投票行動に走った日本人は、つくづく民度が低い。 マッカーサーが言う精神年齢12歳の日本人には、議会制民主主義や二大政党政治は向かないのだ。

 3年前の8月31日に、、「ああ、ついに民主党政権」とヤケクソの日誌を書いた。 その中で日本人の未成熟で浅薄な政治意識を嘆いたが、再びまったく同じことが繰り返された。 この3年間、日本人は何一つ成長していなかった。 おそらくこの先も成長しないのだろう。 民主党の出来不出来はさておき、3年前の選挙では、日本にも二大政党政治が近づいたかと一縷の望みを持ったりしたが、夢まぼろしに終わった。 あの時の日誌には、「国家安全保障以外は何やっても許す」とやけくそで書いたが、この3年間の民主党の外交を見ていると、そのわずかな希望さえ吹っ飛んだ。 日本の外交、安全保障はこの3年間で見るも無惨に破壊された。 西を向いても東を見ても、危うい限りの状況ガ続いている。 おそらく日本には二大政党制は無理なのだ。 今回政党が13にも分裂したところを見ると、その方が日本人に向いているのと言うことなのだろう。

 今さら民主党の不出来、デタラメさをあげつらっても詮方ないが、要するに政治理念を欠いた烏合の衆に政治をやらせるとこうなるという見本だろう。 民主党に唯一アドバンテージがあったとすれば、古い政治から新しい政治へ脱却してくれることの期待だったはずだ。 反民主の小生ですら多少は期待した。 それを生かして思い切ったことをやれば、これほどの惨敗にはならなかっただろう。 多少の齟齬はあっても、政治的混乱があったとしても、もう少しやらせてみようと言う有権者は少なからずいたはずだ。 現に我々の仲間にもいる。

 どうせこう言う結末になるなら、支持母体の労組の反対を押し切って、公務員給与2割削減を強行し、浮いた金で子供手当や農家の個別補償も満額支給し、高速道路を無料化すれば良かったのだ。 県外と言ったらあくまで県外を押し通すべきだった。 いくら役人にいびられても、政治主導を貫けば良かったのだ。 そうすれば国民も評価しただろう。 叶わずといえど良くやったと認めただろう。 それが政権を取った途端腰が砕け、右顧左眄を始めた。 菅、野田に至っては、財務省の操り人形になって、マニフェストにもない消費税を言い出した。 あれやこれや、政治家の弱さ卑しさを嫌になるほど見せつけられた。 首相まで務めた鳩山や菅の末路を見ているとそうとしか思えない。 小沢に至っては論外である。 

 今回の選挙結果で大いに期待出来そうなことがある。 一つは選挙活動で安部総裁が憲法改正と自衛隊の国防軍化を公約として明確に謳っても、得票に影響しなかったことだ。 以前だったら、これだけで選挙は惨敗しただろう。 例のごとく朝日、毎日が盛んに攻撃したが、投票行動には影響しなかった。 追いつめられた野田も盛んにネガティブキャンペーンをやったが、効果がなかった。 田中真紀子が、「自民党が政権を取ると戦争になる。 そうなっていい人はいますか? いたら手を挙げて下さい」とぶったら、ハイハイとたくさんの手が上がったのには笑った。 こういうバカ婆さんが消えてくれて清々した。

 もう一つは、菅直人や、もう一人の変な婆さんが党首の未来の党が、反原発を旗印に選挙活動をしたが、ほとんど票に結びつかなかったことだ。 憲法問題と安全保障、原発問題を、国民が現実的に考え始めたと言うことだろう。 問題は、この日本国民の政治的成熟を、3分の2以上の議席を取った安部政権がどれだけ政策に反映出来るかにある。 民主の「政治主導」や「子供手当」や「事業仕分け」や「高速道路無料化」のように、初めからやる気がない空虚な公約に終わったら、再び次の選挙では惨敗するだろう。 日本の未来もないだろう。
  

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