【伝蔵荘日誌】

2012年7月21日: 巷に溢れる奇っ怪な話 T.G.

 暑い夏が来た。 今年は珍しく梅雨明けが早かった。 このクソ暑さの中、巷には奇っ怪な話が溢れている。 いっそう暑さが増す。

 まずは反原発デモの話である。 代々木から国会周辺を数万人が取り巻いたと言うから、60年安保以来の、日本では滅多に見られない大規模デモである。 それなのになぜか新聞テレビは一切報道しない。 これはどうしたことか。 普天間でごく少数のプロ市民活動家が騒いだだけで、鬼の首を取ったように大仰に報道するあの新聞テレビが。 いかにも奇っ怪な話である。 誰がどう手を回して報道を押さえているのだろうか。 これでは報道の自由がない、悪名高き一党独裁国家中国と変わらない。

 その反原発デモの話である。 大江健三郎や坂本龍一ら文化人も大勢参加してアジっているらしいが、彼らは原発止めたらどうなるのか、承知の上で騒いでいるのだろうか。 原発廃止したら確実に生産が滞り、国際競争力が失われ、GDPは激減し、国民の生活レベルは下がる。 下手をすると終戦直後ぐらいの悲惨な生活状態に戻るかも知れない。 そう言う生活レベルがどんなものか知った上で、覚悟の上で騒いでいるのだろうか。 無知蒙昧な一般国民はともかく、そこそこの文化人と自称する連中が、無思慮、無分別にデモを煽るのは奇っ怪である。 奇っ怪を通り越して悪意すら感じる。 日本の衰退を喜ぶ他国の手先ではないかと。

 その原発の話である。 福島4号機で試験的に燃料プールから燃料棒の取り出しが行われたという。 テレビで見ると、壊れた建て屋の屋上にクレーン車が載っている。 どうやって運び上げたのか。 試しに未使用の燃料棒を1本引き抜いて調べるという。 まだ核反応の起きていない未使用燃料棒は温度も放射能レベルも低い。 表面で25ミリシーベルト、レントゲン撮影と同じ程度だという。 それに引き替え、使用済み燃料棒は高温で、空気に曝せば数時間でメルトダウンする。 表面の放射能は人間が即死するレベルだという。 それがプールに1500本も残されている。 どうやって始末するのだろう。 考えただけで気が遠くなる。 全国に53カ所ある原発に、これとほぼ同じ状態の燃料プールがある。 違うのはプールが壊れていないだけ。 でも福島のようにいつ壊れるか分からない。 多少の地震でも壊れないよう補強することもせず、闇雲に再稼働に突っ走る野田内閣は、実に奇っ怪な政権である。

 大津市のイジメの話である。 小生は年甲斐もなく2チャンネル愛読者なので、このおかしな事件のことはだいぶ前から知っていた。 加害少年や父親、PTA会長の母親の顔写真、住所姓名も知っていた。 新聞テレビで報道されるようになったのはつい最近のことだ。 それも最初のうちは教育委員会や校長や警察、市長の一方話だけ。 警察は父親の訴えを門前払いしたし、校長も教育委員も大津市長も、揃ってイジメの証拠はないと白を切っていた。 それがある時を境にころっと変わった。 それまでと正反対のことを言い始めた。 あれはイジメだと。 それまで動かなかった警察も捜査を始めた。 新聞テレビで騒ぎが大きくなって、これはまずいと思ったのだろう。 彼らはどんな心根で高い給料もらって仕事をしているのだろう。 奇っ怪な話である。 したり顔で真反対なことを言い始めた教育委員や警察署長や大津市長の顔が、化け物のように醜悪に見える。

 北朝鮮の話である。 重大発表があるというので何事かと思っていたら、金正恩が元帥になったんだと。 元帥と将軍様はどっちが偉いのか。 元帥になると何がどう変わるのか。 写真で見ると最近、元帥殿のお近くにはすらっとした妙齢の美女が侍っている。 奥さんではないかと憶測が飛び交っているが、いまだに重大発表には至らない。 やっぱりお妾さんか、朝鮮お得意の喜び組か。 それにしてもおかしな国だ。 将軍様が死んで、アーこの国は潰れるなと世界中が思っていたら、2年経ってもまだ潰れない。 国民は飢えているのに、ジャスミン革命の兆しもない。 おそらく隣の中国から、生かさず殺さずの点滴注射を受けているのだろう。 だから保っているのだろう。 偉そうなことを言いながらこの国は、北も南も小判鮫のように大国の腹に張り付いて生きるしか能がない。 その状態は昔も今も変わらない。 21世紀の今日、おかしいを通り越して奇っ怪な国である。

 オスプレイの話である。 ヘリのように飛び立って、飛行機のように高速で水平飛行し、大量の兵士を運べる。 まさに空飛ぶ上陸用舟艇、奇襲作戦にはもってこいだ。 もし日本が自力で作れたら、自衛隊は必ず配備するだろう。 それも特に必要とする沖縄に。 それが危険だと大騒ぎしている。 街中にある普天間にはとんでもないと。 それなら早く辺野古に移せばいいが、それはほおかぶり。 軍用機が民間のバスや旅客機より安全でないことは当たり前である。 オスプレイ以上に危ない兵器はいくらもある。 沖縄や広島の知事どもは、オスプレイの危険度と国防の重要性を意図的にごっちゃにしている。 さすがに我らがドジョウ首相は「アメリカの方針に口は出せない」と突っぱねたが、偽メールの前原は「党として反対だ」と真逆なことを言い出した。 鳩山の「最低でも県外」一転「海兵隊の抑止力が分かった」と同じパターンを繰り返している。 消費税上げたり、それに反対したり。 何を考えているんだか分からぬ、実に奇っ怪な政党である。 気違いに刃物ではないが、バカに308議席も与えたツケは大きい。

 大雨洪水の話である。 先週も大分熊本で起きた。 あちこちで山が崩れて、家屋が押し流された。 こういう土砂災害をテレビ映像で見ると、マッチ棒のような真っ直ぐな樹木が至る所に折り重なっている。 流された杉の木である。 山崩れの現場写真を見ると、例外なく杉林の斜面である。 杉以外の自然林は滅多に崩れない。 杉林は日当たりが悪く下生えが茂らない。 地肌剥き出しで保水力がない。 杉自体も地中深く根が張らないから地盤が弱くなる。 ちょっとした雨で土砂崩れを起こす。 大雨もさることながら、最近の土砂災害は杉林が原因であることが多い。 戦後山々の木々を切り倒し、杉ばかり植えた愚かな農林行政のツケである。 専門家の解説を聞いていても、バカの一つ覚えの地球温暖化しか言わない。 杉林のことは誰一人として口にしない。 だからいつまでたっても対策を講じる様子がない。 何かわけでもあるのか。 奇っ怪な話である。

 橋下市長の話である。 突然というか再びというか、週刊文春が彼の過去の女性問題を書き立てた。 若いうちは女遊びぐらいするだろう。 いいじゃないかその程度のこと。 ほっとけよ。 アンタだってやってるだろ。

 相方だった水商売女のぶっちゃけ話らしいが、よほど大金を握らせたに違いない。 まだテレビタレントやっていた何年も前の話を、何故今頃、総選挙間近のこのタイミングで出すのか。 大阪市長選の時の同和記事と言い、小沢一郎の奥方からの離縁状と言い、文春の企みはかなりというか、悪質な政治的意図だ。 おそらく裏で“その筋”が書かせているのだろう。 地方分権を旗印に国政に進出しようとする橋下は、霞ヶ関利権集団の天敵である。 衆院解散前に叩いておこうという意図がありありだ。 また財務省が例の要人スキャンダル丸秘手帳を持ち出したに違いない。 そのお先棒を担がされた文春は、いつからこういう薄汚いイエロー出版社になったのか。 この手帳のターゲットにされて潰された政治家は沢山いる。 その結果、世の中は財務省の思惑通りに進んでいる。 これでは共産党一党独裁ならぬ、霞ヶ関一党独裁だ。 表向きは民主主義を装っている国の、奇っ怪な話である。  

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