【伝蔵荘日誌】

2010年12月18日: 従軍慰安婦、新聞報道比較 T.G.

 韓国の李明博大統領が来日して、野田総理と会談した。 予期されたことだが、さっそく慰安婦問題をぶつけている。 報道によれば、1時間の会談中従軍慰安婦問題が40分を占めたという。 首脳会談としては異様と言うしかない。 18日付の各紙のウエブ新聞報道は次のようである。

朝日:「「李大統領「慰安婦問題、優先的に解決を」 日韓首脳会談」
 「野田佳彦首相は18日午前、京都迎賓館(京都市)で韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領と会談した。 韓国側の代表取材によると、李大統領は会談で「両国関係の障害になっている慰安婦問題を優先的に解決する真の勇気を持たなければならない」と述べ、元日本軍従軍慰安婦の補償問題への前向きな対応を求めた。 会談終了後、野田首相は記者団に「我が国の法的立場はすでに決まっている。決着済みだ、と申し上げた」と語り、1965年の国交正常化時に交わした請求権協定で解決済みとの立場を改めて伝えたと説明。 さらに、今月14日にソウルの日本大使館前に元慰安婦の支援団体などが建てた記念像について、首相は「誠に残念だ。早急に撤去するように(求める)」と申し入れたことも明らかにした。」

毎日:「「韓国大統領:慰安婦「優先的解決」求める 野田首相と会談」
 「野田佳彦首相は18日午前、韓国の李明博大統領と京都迎賓館(京都市)で会談した。 冒頭、大統領は元従軍慰安婦の問題について「優先的な解決」を求め、日本側に強く対応を迫った。 首相は賠償や謝罪について解決済みとの認識を表明する一方で人道的見地から努力する考えを示した。 大統領は「両国関係の障害となっている慰安婦問題を優先的に解決する誠実な勇気を持つ必要がある」と述べた。 これに対し、首相は「これからも人道的立場で知恵を絞ろう」と答えた。(共同)」

読売:「少女像「早期に撤去を」…首相、李大統領に」
 「野田首相と韓国の李明博イミョンバク大統領は18日午前、京都市の京都迎賓館で会談した。 李大統領が、いわゆる従軍慰安婦問題に言及したのに対し、野田首相は、日韓国交正常化の際の協定で請求権問題は完全かつ最終的に解決済みであり、賠償は全て終わったとの立場を強調した上で、「人道的な見地から知恵を絞っていきたい」と述べた。 野田首相は、韓国の日本大使館前に従軍慰安婦問題を連想させる少女像が設置されたことについて、「誠に残念だ」と述べた上で、「早期に撤去してほしい」と要請した。」

産経:「日韓首脳会談 首相「慰安婦の碑」撤去を要請」
 「野田佳彦首相は18日午前、韓国の李明博大統領と京都市の京都迎賓館で会談した。 反日団体がソウルの在韓日本大使館前に「慰安婦の碑」を設置したことについて「誠に残念だ」と述べ、早期に撤去するよう求めた。 大統領は賠償請求問題に関する政府間協議を念頭に、元慰安婦をめぐる問題に言及した。 首相は「決着済みだ」と応じた。 同問題について日本は昭和40(1965)年の日韓基本条約で「完全かつ最終的に」解決したとの立場を貫いている。 ただ、首相は「人道的見地からさまざまな努力をしており、これからも知恵を絞ろう」とも伝えた。」

 同じことを報道しているにもかかわらず、ニュアンスはそれぞれ異なる。 朝日、毎日は李明博大統領の発言を主題にする文面であるのに対し、読売と産経は野田総理の「この問題は過去に決着済み」という日本側の主張を前面に出している。 これは似ているようで大違いである。 読み手の受け取り方がまるで違ってくる。 読者の頭の中には、どうしても最初にぶつけられた方の主張が印象に残る。

 朝日の書き方はさらに巧妙というか、異様である。 李大統領の方は“韓国側の取材をもとに”、公式会談中の発言として書いているのに、野田総理の主張は「首脳会談後の記者会見で語った発言」として書いている。 李大統領の方を首脳会談中の公式発言とし、野田総理の方は会談後の記者会見と言うのは、いくらなんでも片手落ちだ。 これでは野田総理が首脳会談後に負け犬の遠吠えをしたように聞こえる。 相も変わらぬ朝日特有のごまかし、手品である。 そもそも日韓首脳会談に関して、日本の大新聞が相手国側のの取材をもとに記事を書くとは言語道断である。 どこの国の新聞かと言いたくなる。 

 毎日は朝日ほど頭が良くないのでそこまで巧妙ではないが、自社取材ではなく、共同通信社の配信記事として書いている。 これも誤魔化しというか大いに頂けない。  大新聞が自国内で行われた首脳会談について独自取材しないなんて情けなさ過ぎるではないか。 それも、「決着済み」、「慰安婦像撤去」と言う野田総理の明確な主張より、「人道的見地から努力」の方に重点を置いた文面にしている。 要するに朝日、毎日は、「彼らの期待に反して野田総理が毅然とものを言った」ことがよほど都合が悪かったのだろう。 繰り返すが、朝日、毎日はどこの国の新聞か。 ちなみに共同通信のウエブサイトを見ると、この首脳会談の記事は載っていない。 馬脚を現すとはこのことだ。

 そもそも「日本軍が強制連行した従軍慰安婦」は朝日新聞によるねつ造である。 1991年に朝日新聞が「軍に強制連行された元従軍慰安婦が名乗りをあげた」と言うスクープ記事を書くまで「従軍慰安婦」と言う言葉さえなかった。 小生も聞いたことがなかった。 その証拠に、戦後賠償を基本とする1965年の日韓基本条約締結の際も、「従軍慰安婦」問題は提起されていないし、その後91年の朝日報道に至るまで、年中行事のような韓国の反日運動でもこの言葉は持ち出されていない。 つまり、今さら従軍慰安婦が虚構だと分かってしまうと、ねつ造元の朝日としては極めて都合が悪いことになる。 それを誤魔化しているのだ。

 91年の朝日報道で火のついた「従軍慰安婦」問題に、困り果てた当時の宮沢内閣が、国家意識皆無のヘナチョコ官房長官、河野洋平に「河野談話」を出させ、日本政府として認めてしまった。 それが今まで尾を引いている。 まさに“綸言汗の如し”である。 河野の下で副官房長官を務めていた石原信雄氏は、新聞取材に対して「元慰安婦と称する韓国女性の証言のほかは、国内外の公文書や聞き取り調査を含め、八方手を尽くして調べても、軍が強制して慰安婦を集めたという証拠は一切見つけられなかった」、と証言している。 日本政府としては、朝日のねつ造や韓国側の一方的な物言いではなく、こちらの方を重視すべきであろう。

 古今東西、軍隊に売春宿と売春婦はつきものである。 今の普天間基地の周辺にもあるし、ベトナム戦争時の米軍基地にも韓国軍基地にもあった。 当然日本軍にもあった。 若い兵士の性欲処理は、どこの国の軍隊でも悩ましい問題なのだ。 勝新太郎、田村高廣主演の「兵隊ヤクザ」という戦争映画に、中国戦線における慰安所、つまり売春宿の風景が出てくる。 経営者は中国人、売春婦は日本女性と中国人女性である。 その中には“日本人”としての朝鮮人女性も出てくる。 これが実態であろう。 軍が強制連行などする必要はなく、ほうっておいても基地の近くには金儲けの商売人の売春宿が出来たのだ。 金に困った親や夫は、日本人も朝鮮人も中国人も、女衒に娘や妻を売ったのだ。

 野田総理に注文を付けるなら、「軍が強制連行した従軍慰安婦は虚構である。 こんな問題で貴重な首脳会談の時間を潰してもらいたくない。」と、李大統領に一喝してもらいたかった。 李大統領は、「日本政府が誠意を見せないと、第2、第3の慰安婦像が建つ」と、ヤクザまがいの恫喝をしたそうだが、一国の大統領とは思えない品の悪さである。 戦後70年経っても、こういう問題に、こういうやり方でこだわり続ける韓国は、とても自律国家とは言えない。 歴史を振り返ると、明、清の朝貢国であった過去から現在に至るまで、北も南も朝鮮が自律的に国を治めたことは一度もない。 常に他力依存、他力本願である。 日本の新聞がねつ造した70年も前の与太話を、反日のシンボルにして、愛国心、ナショナリズムの支えにするこの国は、この先どこへ行くのだろうか。
  

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