【伝蔵荘日誌】

2011年11月28日: アー面白かった大阪市長選 T.G.

 大阪市長選が終わった。 やれTPPがどうの消費税がどうのと、どうでもいいふやけた話ばっかしの中央政治に比べ、生きのいいチャンバラ活劇を見ているようで久しぶりに面白かった。 組織や政党の支持もなく、府知事選と合わせて圧勝した橋下という男はなかなかなものだ。 投票締め切り直後から記者会見が行われたが、記者からの質問が出なくなるまで、3時間以上逃げずに受け答えしていた。 時々テレビ中継で映されたのを見ていると、どんな質問にも立て板に水を流すような弁舌で即答していたのも感心した。 よほど頭の回転がいいのだろう。 普通ああいう状況では、きわどい質問に逃げを打ったり、時間だからと切り上げたり、見当違いの間の抜けた答弁したりするものだが、そう言うことが一切ない。 どんな質問も受けて立って見事に切り返す。 口達者なオバマでもああは行かないだろう。 マスコミから逃げ回っている野田君はもちろん、枝野も前原も、もう少し見倣ったほうがいい。

 そもそも箱根の山のこちら側の人間は、大阪のことなどほとんど知らないし、関心もない。 有り体に言えばどうでもいい。 大阪がどうなろうと知ったことではない。 平松という相方は大阪では知名度の高い局アナ上がりの有名人らしいが、我々箱根の山のこちら側の人間は今度の選挙戦まで名前も顔も知らなかった。 眼鏡越しでもっともらしく話すしたり顔が何か胡散臭い感じで、一見してアーこれはダメだなと思ったが、その通りになった。 何と言っても男は顔だ。 この人相判断が間違ったことはない。

 橋下の言う大阪都構想もそうだ。 どんな内容かよく知らない。 東京都だってそううまく行っていないのに、大阪都にしたら何がどう良くなるのかよく分からない。 そんなことは箱根の山のこちら側ではまったく関心がない。 でも歴代知事や市長の放漫財政で第二の夕張になりそうだとか、それなのに生活保護受給者が全国一多いとか、役人の給料が全国一高いとか、その役人がたびたび不行跡を犯すとか、路上犯罪が世界一多いとか、教育委員会が卒業式で国旗掲揚させないとか、君が代を歌わせないとか、先進国の大都市とは思えないひどい話を風の便りに聞いていると、アーそう言うことを橋下は変えようとしているのだな、と分かる。 大阪都構想を奇貨として、伏魔殿のような大阪市行政の吏道刷新、綱紀粛正を謀ろうと言うのだなと。 あくまで岡目八目です。 岡目八目とは当事者より傍目の方が物事がよく分かるという碁の格言です。

 それにしても、既成政党がこぞって平松を応援したのには驚いた。 驚きを通り越してあきれ果てた。 これでは政党政治なんて意味がないではないか。 時には政党相乗り候補と言うケースもあるが、民主、自民から社民、共産、公明に至るまでオール既成政党が呉越同舟で候補者応援なんて馬鹿げた話を聞いたことがない。 政党政治の否定である。 既成政党が右も左もこぞって反対というなら、それなりの理由がなければならない。 橋下構想のどこがどうおかしいのかつまびらかにするのが筋だ。 そう言う話はまったく聞こえて来ない。 応援演説を聞いていると、どいつもこいつも馬鹿の一つ覚えのように、“独裁政治反対”しか言わない。 橋下は「断固実行」を「独裁」と言葉の綾で表現しただけなのに、橋下を当選させると独裁政治になるとまことしやかに煽り立てた。 今の多数決主義の議会政治で独裁政治など出来るわけがないだろう。 記者会見でアホな記者が「これからは独裁政治ですか」と間の抜けた質問をしたら、「あなたの言う独裁とはどういう意味ですか? 法律も議会もあるのだから市長と言えど独裁なんて出来るわけないでしょ!」と切り替えされていた。 こういう程度の低い連中が記者と言うから、マスコミも劣化したものだ。

 マスコミの劣化と言えば、おしなべて新聞、テレビ、雑誌がひどかった。 政党以上に総掛かりで平松に肩入れし、オールマスコミが毎日のように橋下批判をした。 都構想の何たるかの取材もせずに、「独裁(橋下)か実績(平松)か」などと扇情的な書き方をした。 ヘタレ左翼の朝日毎日はともかく、あの右翼新聞の産経ですら、君が代日の丸大嫌いの日教組と自治労がバックであることを知りながら、平松の提灯持ち記事を書いた。 右翼も左翼も、マスコミは橋下が当選するとよほど美味しい既得権益を失うのだろう。 そうとしか思えない。 もう産経はエセ保守の看板を下ろせ! 二度と日の丸君が代を口にするな!

 選挙戦のさなか、週刊新潮、週刊文春が橋下に対するひどい中傷誹謗記事を書いた。 ひどいを通り越して悪辣ですらある。 曰く父親がヤクザだったとか、同和地区出身の部落民だったとか、あることないことを書き立てた。 事実関係はともかくとして、一体全体今回の政治論争とどういう関係があるのか。 父親がヤクザで同和だったら市長になってはいけないのか。 百歩譲って「橋下の暴政」を未然に防ぐための非常手段だというなら、その前に暴政の内容をきちんと伝えるべきだろう。 それもせずこういう週間実話も真っ青のイエロー記事を書く。 親会社の新潮と文藝春秋はクォリティペーパーの看板を下ろせ。 はからずも同和の出自を逆手にとって選挙戦を戦った橋下も、そうと知りながら彼を当選させた大阪市民もアッパレである。

   そもそも大阪はかねて同和問題の本場である。 差別解消の同和行政が盛んだが、うまく行っていない。 一種の既得権益化して地方行政の負担になっている。 歴史的経緯もあって同和問題は難しい。 一朝一夕には解決しない。 金で解決できる話でもない。 最良の策は風化させることだ。 アメリカの人種差別と違って、みんなが同和のことを忘れてしまえば即解決である。 学校でも教えず、親も周りも子供に話さなければ、やがては消えてなくなる話なのだ。 今の若い人たちは昔ほど部落や同和のことを知らないし、関心もない。 何かの機会に知って、そんなことがあったのかとびっくりする。 おそらく30代以前の若者のほとんどは知らないだろう。 この状態が後20年続けば、おそらく同和問題は消えてなくなるはずだ。 それなのに新潮と文春は寝た子を起こしてしまった。 橋下という時代のマスコミの寵児を同和だと囃し立て、同和の大宣伝をしてしまった。 この報道で大勢の無知な若者達が同和の何たるかを知ってしまった。 これで同和問題の解決は数十年遅れるだろう。 新潮と文春は万死に値する! 有害無益のマスコミは消えてなくなれ!

 もう一つ、今度のことで自民党には失望した。 政権奪取の熾烈な争いをしているはずの民主党と組むなんて、何を考えているのか。 野党政党として自殺行為に等しい。 民主と同調しなければならなかった理由がまったく分からない。 天敵と肩を組まなければならないほど、平松が良くて橋下がダメとは思えない。 要するに自民党には橋下改革で失う既得権益や都合の悪いことがいろいろあるのだろう。 相も変わらぬ既得権益大事の利権まみれ政党だ。 そのことを今度の選挙で皆が知ってしまった。 いまだに変わっていなかったのかと。 これでは未来永劫民主に勝てない。 国民は利権まみれの自民党に愛想を尽かして政権交代させたのだ。 忘れたのか。 こんなことをやっているようでは、自民党は間違いなく万年野党で終わるか、2、3年後に消滅するだろう。 谷垣君! いい加減に目を覚ましなさいよ!

 大阪都構想がナンボのものか知らないが、実現には地方自治法改正と大幅な地方分権が必要になる。 既得権益を侵される中央官僚の一番いやがることである。 その官僚達に籠絡され、TPPだ消費税だとご託を並べている頭の悪いドジョウ総理を、まっとうな道に引き戻すかやめさせる。 そのきっかけにでもなれば、それで十分だ。
  

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