2011年6月23日: 嘘をつくこととは GP生 ![]() 解約理由は「職場が神奈川県に変わったので、近場に転居したい」と言うことだった。 解約時、夫たる男性と一緒に現状確認の立会を部屋で行ったが、部屋に入るなり異様な光景が目に飛び込んできた。 リビングの天井、壁のクロスは真白なペンキが塗られていた。 トイレの壁も同様であった。 リビングからキッチンにかけてのクッションフロアーの床は、一面真っ白な粘着性プラスチックタイルで敷き詰められていた。 「どうしたのか」と聞いたら、「妻が自分の好みに改装した」とのことであった。 自然損耗や汚損は別として「人為的な改装は原状回復するのが契約条項にある。 この状態を元に戻すのに預かっている敷金では足りない」旨、具体的に説明したら、男性は真っ青になった。 良く聞いてみたら、「戻ってくるであろう敷金を当てにしていた。 実は奥さんとは既に離婚していて、現金や預金通帳を全部持って行かれ一文無し」とのことであった。 神奈川に職場が変わったのは奥さんの方で、解約理由は嘘をついたようだ。 彼女は解約手続き等の面倒な後始末を元旦那におしつけ、全財産を持って安全圏逃げ込んだ。 連絡も取れないという。 入居時から、はっきりとものを言うパリパリの女性と、体は大きいが何処か締まりのない物言いの男性の組み合わせに妙な安定感を覚えていた。 この男性、解約申し入り時に、さすが「女房に逃げられた」とは書けなかったようだ。 話していて、同じ男として彼に哀れを覚えた。 ![]() 人は生きていく上で「嘘」を上手に活用している。 「俺は今まで嘘をついたことはない」が真っ赤な嘘であるように、嘘をつかなかった人間はいないだろう。 子供が悪いことをして親から怒られそうになった時、誰に教わったわけでもないのに咄嗟に嘘をつく。 その場しのぎの嘘をつき、後でつじつま合わせに四苦八苦した経験は誰にでもあるだろう。 付いた嘘は必ずバレる。 天に吐いた唾が確実に己の顔にかかるように。 鳩山にしても菅にしても、ついた嘘が次々に暴かれても平然としているが、それらの連鎖が総理大臣としての地位を汚し、自らの信頼が失墜していくことに気が付かない。 気が付いていても、自らの地位を守るためさらに嘘を重ねざるを得ないとしたら、アリ地獄と同じだ。 一般庶民が彼らのような嘘を一回でもついたら、周囲の人間は誰も相手にしなくなるだろう。 世の人はそれを知っているから、自らの立場を悪くするような嘘は滅多につかない。 菅直人のような職業的詐欺師は別にして、嘘をついた人の心は平常心を保つことは難しい筈だ。 何故なら、人は自分の心に嘘をつけないからだ。 嘘をつけない自分の心が、嘘をついた自分を許せないからこそ、己の過ちを反省し二度と同じ嘘をつかないと心に誓う行為が日常の中で繰り替えされている。 この心の働きが、自分の魂を磨き、心を大きく丸く成長させる所以だ。 ![]() 元妻に捨てられた彼は隣町に居を構えた。 元妻の内装破壊の現状回復費用は敷金を6000円弱オーバーした。 本来なら支払いを請求するところだが、5年間家賃の滞納は一度もないことと、彼の現状に哀れをもようしたので、支払不要との連絡をした。 離婚のきっかけは、入籍後、彼が大病して彼女に迷惑をかけたことだそうだ。 好きあって一緒になった男が大病すれば、一生懸命看病するのが普通の妻だと思うが、そうではなかったようだ。 「僕が病気をしたのが悪いのです」とうなだれる彼にかける言葉がなかった。 立会点検でガスコンロの魚焼き器を見たら、5年前の入居時と同じ新品同様だった。 魚を焼いたことは一度もなかったとは彼の言。 表面的な見てくれを大事にする生活姿勢は部屋の隅々に溜まった大量のほこりが現している。 夫の看病を負担と感じ、魚を焼くことのない女性のどこに、彼は魅力を感じたのだろうか。 別れるとき「まだ若いのだから、今度結婚するときは、家庭的な女性を選ぶのだね」と何時ものように余計なひと言を付け加えた。 彼の様な哀れな嘘を付くことなく、毅然としてし女性を袖にする男は吾がテナントに存在しないようだ。 |