【伝蔵荘日誌】

2011年6月7日: 自分が癌と宣告されたとき GP生

 先頃、俳優の児玉清さんが亡くなった。享年77歳、死因は胃ガンであった。現在では俳優としてよりテレビ番組の「アタック25」の司会者として有名だ。少し旧聞に属するが「HERO」と言うドラマがあった。木村拓哉が演じる検事久利生公平を主人公とする城西支部を中心とした検事たちの人間模様を描いた作品だ。児玉さんは秘かに久利生公平を温かく見守る検事正役で出演していた。ほのぼのとした温かい人柄を感じさせる名演技であった。新聞によれば胃ガンは2月下旬の検査で判明し、3月末から入院治療を受けていたが5月16日に逝去された。惜しい俳優を失ったと思う。何年か前からテレビで見る限り顔のやつれと生気の薄れた感じが気になっていた。そのころから、ひょっとしたらとの思いがあった。人の健康や栄養条件に関心を持って久しいが、60歳を過ぎてから人の顔色を見るのが倣いになってしまった。感じた思いを相手に告げることは、家族でも余程の事でなければしないのを常としている。不快な思いをさせるだけだから。

 日本でガンによる死亡率がトップになってから久しい。ガン発症のメカニズムからして、高齢者の発ガン率が高くなるのは避けられないだろう。自分も健康には注意しているが、人の身体に絶対はない。十分生きてきたから死自体に恐れはないけれど、苦しむのは嫌だし、残された人生が制約されるのはもっといやだ。自分がガンと宣告されたら、どのような治療を選択するかは、転ばぬ先の杖として考えておくことは無駄ではないと思う。自分のみならず、家族にも同じリスクが存在するのだから。

 「手術、抗ガン剤、放射線」治療はガンの三大治療と呼ばれているが、いずれも対処療法で強烈な副作用を伴う。専門の大病院では、これ等の治療法が主流になっている。ガンが発症する部位や病態はさまざまだから、これ等の治療法を頭から無視するつもりはないが、最初から全てを医者にお任せするつもりはない。

 最初の選択肢は「超高濃度ビタミンC点滴療法」を考える。ビタミンC効用の研究はアメリカのポーリング博士に嚆矢を発する。10年以上前から高濃度ビタミンC点滴かガン治療法としてアメリカで広まり認知されて来た。日本では水上治先生が始めたが、一時中断後2008年ごろから、当時杏林大学病院の柳沢厚生先生が試み始めた。両先生の努力で次第に試みる医者が増え、現在では全国で100人を超えたと聞いている。

 ビタミンCは低濃度では抗酸化物質として作用する。点滴治療には50g~100gの大量ビタミンCが用いられる。高濃度のビタミンCは体内では活性酸素の一種である過酸化水素を発生する。ガン細胞内で発生した過酸化水素は、細胞内のエネルギー産生器官ATP やDNAを酸化し細胞を死滅させる。ビタミンCが血液中や正常細胞内で活性酸素を発生しても、過酸化水素分解酵素であるカタラーゼやグルタチオンベルオキシダーゼにより水と酸素に分解され無害化される。正常細胞には無害で、ガン細胞のみ攻撃することになる。ビタミンC点滴で血清中のビタミンC濃度を400mg/dl以上にすれば、ほとんどのガン細胞が死滅することがアメリカでの研究で知られている。最初は少量から始めて、血清濃度を測定しながら点滴量を徐々に増加していく。目的濃度な達するビタミンC量と点滴回数の個人差は極めて大きい。通常、週2,3回の点滴で25~30回で目的濃度に達する事例が多いようだ。

 義弟の前立腺ガンの場合、週2回の点滴を行ったが、260mg/dl以上に上がらなかった。最後には100gまで上げたが駄目だった。ストレス要因が大きかった様だが本当の原因は分からない。マーカーの値上昇は止まっていたので、もう少し続けていれば違った結果になったかもしれない。トータル点滴回数は30回には少し及ばなかった。費用の関係もあってこのあたりで諦めてしまう人は多い様だ。ビタミンCは検査では発見できない転移ガン細胞に特に効果的に作用する。ガン自体が小さいので特に効果があるそうだ。転移防止のために抗ガン剤を処方する医師は多いが、転移防止効果はほとんど期待できず、医者の気休めの感すらある。明確なのは副作用のみだ。

 ビタミンCはガン細胞殺傷以外にも、免疫力の向上効果が大きい。ウィルスに対抗するインターフェロンの産生にはビタミンCは不可欠だ。細胞間物質はコラーゲンだが、ビタミンCはコラーゲンを増殖させる。増殖したコラーゲンはガン細胞の転移を防止する砦となる。義弟は仙台の病院で点滴を受けたが、仙台で高濃度ビタミンC点滴を行っている病院は2か所のみ。効果の出方に個人差が極めて大きい治療法であるので、経験のある病院を選ぶのが要だと思う。東京に居住する自分は選択病院の多いことは有難いことだと思っている。

 二つ目の選択肢は「自律神経免疫療法」だ。ガン患者の白血球中でリンパ球が極めて少ないことが知られている。人の自律神経は交感神経と副交感神経のバランスで成り立っていて、これがどちらに偏りすぎても病気の原因となることは知られている。ストレス等により交感神経の緊張が続くと、リンパ球が減少して免疫力が低下する。人の体内では一日に数千のガン細胞が発生するが、それをいち早く察して潰していくのはNK細胞を中心とした免疫機構だ。

 交感神経優位の体調になっているガン患者を副交感神経優位に傾け、リンパ球の増殖を図って、免疫力アップによりガン細胞を死滅させようとするのが「自律神経免疫療法」だ。新潟大学の安保徹先生の理論をもとに宇野克明医師らがさらに発展させた治療法だ。ガン細胞を攻撃するリンパ球はNK細胞とキラーT細胞だが、攻撃の主役はキラーT細胞の様だ。ガン細胞を攻撃したマクロファージ、樹脂細胞からの情報でT細胞系は活性化し、インターロイキン12、インターフェロンγ、TNFα等の抗ガン性善玉サイトカインを放出して、キラーT細胞を活性化させる。

 アガリスクやメシマコブ、AHCC等が免疫力を向上させるサプリメントとして用いられている。これ等のサプリで刺激を受けたリンパ球はサイトカインの産生を強めるが、サイトカイン産生原料のアミノ酸の供給が追い付かず産生量が低下したり、産生過程でのエネルギー消費の結果、リンパ球自体が酸化され善玉サイトカインを作れなくなり抗ガン力を失ってしまう。自律神経免疫療法では免疫活性サプリメント、免疫枯渇現象を防止するハーブ系アミノ酸複合体のサプリメント等の使用や鍼灸、基礎体温上昇による免疫力賦活等総合的に免疫力維持向上を図る。

 更に、イノムドツクと呼ばれる手法で免疫力を管理する。これは、抗ガン性サイトカインのインターロイキン12、インターフェロンγ、TNFα、NK細胞活性、Th1,Th2,Th1/Th2さらに、21項目の腫瘍マーカーを数値化する。血液採取ですべての項目が分析できるそうだ。ガン患者には善玉サイトカインが極めて少ないいことが証明されている。この治療法は人が有する「自然治癒力」を高めることで、ガン細胞を根絶させるのだから、前記ハーブ系サプリを飲めば良いというほど単純ではない。食生活を含めた生活習慣をすべて見直し、免疫力を低下させている要因を改善しなければ効果が期待できない。ガン細胞は長年の生活習慣の中から発生し育成されてきたのだから、それを正さない限りいかなる治療も無駄となる。自律神経免疫療法を行う病院では生活習慣の指導から始めると聞いている。

 もし、自分がガンと診断されたら、根本治療の「自律神経免疫療法」を主体とし、対処療法として「高濃度ビタミンC点滴療法」を選択することになる。手術による腫瘍の摘出が可能で、身体に対する負担が少ないと判断された場合には、「手術」の選択は拒否はしない。この場合でも抗ガン剤や放射線治療は絶対に行わない。転移防止とQOL向上のためビタミンC点滴療法は併用する。

 考えてみると、これら二つの治療法は健常者の日常生活に必要な要素をたくさん含んでいる。リンパ球の材料はアミノ酸、すなわちタンパク質だし、ビタミンCのみならず各種ビタミン、ミネラルは身体全ての代謝の原材料として必需品だ。運動は循環器系や呼吸器系の機能を高め、睡眠休養は免疫力を向上させる。ガン発症を宣告されて、如何しようかあわてるより、規則正しい生活と食生活の中に回答があるようだ。   

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