２０１１年６月４日： 馬鹿と阿呆の騙し合い Ｔ．Ｇ．
古い奴だとお思いでしょうが、古い奴こそ新しいものを欲しがるもんでございます。 どこに新しいものがございましょう。 生れた土地は荒れ放題、今の世の中、右も左も真っ暗闇じゃござんせんか。〜何から何まで 真っ暗闇よ
〜筋の通らぬ ことばかり
〜右を向いても 左を見ても
〜馬鹿と阿呆（あほう）の 絡み合い
〜どこに男の 夢がある
（鶴田浩二「傷だらけの人生」）
馬鹿馬鹿しいから政治のことはしばらく書かなかったが、あまりの馬鹿馬鹿しさに思わず書きたくなった。 昨日の内閣不信任案に対する民主党の内紛劇である。 野党が出した菅内閣不信任案が、民主党内の妙な空気で可決されそうになった。 慌てた鳩山が菅のところへ乗り込んで合意書を突きつけ、６月中に菅が辞任する条件で不信任案に反対票を投じると言った。 追いつめられた菅はそれを飲んで合意した。 鳩山が念のため合意書に署名してくれと言ったら、「あんたと私の仲じゃないか。 信用してよ」と愛想笑いで誤魔化した。 案の定、不信任案が否決されると、途端に菅は「辞任の約束などしていない」と手のひらを返した。 騙された鳩山は、「政治家同士の約束を守れないのならペテン師だ」と怒り狂ったが後の祭り。
まるで“馬鹿と阿呆の絡み合い”と言うか“騙し合い”。 鶴田浩二の「傷だらけの人生」を地でいっている。 こういう茶番劇が日本国の現首相と前首相の間で繰り広げられるのだからあきれ果ててものが言えない。 前代未聞、とても先進国の政治中枢とは思えない。 鳩山と言えば、「トラストミー」でアメリカの大統領をころっと騙した、生まれついてのペテン師である。 そのペテン師がさらにその上を行く上級ペテン師にころりと騙される。 あのデタラメペテン師のことだから、もしかして騙されたふりをしているだけかも知れない。 もうこうなると右も左も真っ暗闇。 詐欺師の世界である。 勝手にやってろと言いたいところだがそうはいかない。 何と言っても彼らは日本国の最高責任者なのだ。 そう言う権限を日本国民が彼らに与えたのだ。 震災の復興も福島原発も、はたまた日本国の将来も、悲しいながら彼らの手のひらに乗っているのだ。
菅内閣は３月１１日以来何もやっていない。 やったことは菅のパフォーマンスだけで、この３ヶ月肝心の震災対策法案を一本も通していない。 菅好みの学者馬鹿を集めた復興会議は、論点整理なんてお遊びに明け暮れていて、いまだに何の対策を打ち出せていない。 被災地の瓦礫処理も仮設住宅も遅々として進んでいない。 これ見よがしに浜岡原発を止めさせたが、それを埋め合わせる電力確保対策は何も打たれていない。 こういう見かけ倒しの、無能力の、出来損ない政府を、少し前、日本国民が拍手喝采して作ったことを思い出すと絶望的になる。 要するに議会制民主主義の国では、３１１議席も与えたら事実上独裁政権を作ったのと同じなのだ。 馬鹿と阿呆の独裁政権はやりきれない。 背筋が寒くなる。 これなら一党独裁の中国共産党政府の方がはるかにマシではあるまいか。 胡錦涛や温家宝は、決して菅や鳩山のような馬鹿と阿呆ではない。
そもそも多数決が基本原理の議院内閣制で、３０５議席も持っている与党内閣に対し、内閣不信任案など通るわけがないのだ。 数少ない例外は、瓢箪から駒が出た１９９３年の宮沢内閣、嘘つき解散と、１９５３年の吉田内閣、バカヤロー解散ぐらいなものだ。 あの時は与野党の議員数が接近していた。 それなのに絶対多数の与党政権が不信任案に怯えること自体、政権政党の体をなしていない。 確たる政治目標もなく、政党内部の統制が乱れ、統治能力を失っている証拠である。 みんなが菅をやめさせたがっている。 それなのに誰も無能首相を辞めさせられない。 議会制民主主義の最も悪い点だ。
テレビの街頭インタビューを見ていると、「こんな時期に不信任案などやっていないで、震災復興をちゃんとやれ」などと、もっともらしいことを被災地の人たちは言うが、これも勘違いが酷すぎる。 今の内閣ではちゃんとやれそうにないから、仕方なしに不信任案を出しているのだ。 急流を渡る途中でも、馬を乗り換えなければならない状況なのだ。 不信任案は時間の無駄と言うが、菅内閣は3.11以来、すでに３ヶ月を無駄にしている。 さらにその時間の無駄を長引かせろと言うのか。 議会制民主主義は愚民民主主義でもある。
もはや民主党が内部崩壊でもしない限り、菅内閣は少なくとも後２年、任期いっぱい続くことだろう。 議院内閣制のもとでは、誰が何と言おうとやめるつもりが無い首相を辞めさせるのは不可能に近い。 自民党末期に首相がころころ変わったのは、安部や福田や麻生に、菅のような、何があろうと首相を辞めない執念としぶとさが無かったからに過ぎない。 そう言う意味では菅のしぶとさは大したものだが、しぶといだけの馬鹿が首相を続けるのはなおさら悪い。 後２年、震災対策も原発処理も、外交も内政も経済も何もかも、確たる手が打たれないまま日本は坂道をどんどん転がり落ちるだろう。 民主党を喝采した国民は、身から出た錆と諦めるしかない。 あーヤダヤダ！