【伝蔵荘日誌】

2010年3月14日: レベル7についてのSa君の疑問 T.G.

 この激しい余震の中、羽鳥湖山中に隠棲している伝蔵荘仲間のSa君からメールが届いた。 「BS放送で保安院が福島原発をチェルノブイリと同じレベル7に上げたニュースを見た。 なぜ今頃そんなことを言うのか。 保安院の説明はどうも奥歯に物の挟まった感じがする。 何か隠していることがあるのだろうか。 新聞もインターネットも見られないので、よく分からない。 知っていることがあったら教えてくれ。」と言う。 下記のように返信した。

Sa君へ。
 今頃レベル7は確かにおかしい。 保安院が理由に挙げた放射性物質排出量53万ベクレルは520万ベクレルだったチェルノブイリの10分の1にすぎない。 しかもこの排出はほとんど3月16日までに終わっていて、その後は微量しか出ていない。 総排出量でレベル7と言うなら、とっくに出していなければならない。 今日の産経新聞にも「福島レベル7 「最悪」評価はおかしい チェルノブイリとは全く違う」と言う記事が載っている。 ロシアの専門家からも行き過ぎと声が上がっている。

 チェルノブイリは格納容器もない原子炉が爆発して放射性物質が全部外に飛び出してしまった。 死者の多くは放射能の危険性も知らされず、防護服も纏わないで消火に駆けつけ、大量被爆した消防隊員。 6000人の子供が甲状腺癌に罹ったが、これも何も知らされない付近の住民が、高濃度に汚染されたミルクを飲ませたため。 とりあえず放射性物質が格納容器に閉じこめられていて、拡散放射性物質が微量で、情報が行き渡っている福島とはまったく違います。

   ロシア科学アカデミー原子力エネルギー安全発展問題研究所のアルチュニャン副所長は、福島の事故で住民が浴びている放射線量は、日常生活で自然環境から受ける量の10分の1程度であり、「健康への影響から判断すればレベル4にも届かない」と言っています。 IAEAも「事故の構造や規模では全く異なる」とコメントしています。 なぜ今頃こんな人騒がせな発表をするのか。 民主党政権の危機管理はまったくお粗末。 こんな連中にいつまでもやらせていては本当に日本が駄目になります。

 しかし、チェルノブイリより深刻なのは核燃料の多さです。 チェルノブイリは何と言っても小さな原発だった。 それもたった1基。 福島は高出力の原子炉が6基もあって、そのすべてに使用済みを含めて大量の核燃料が残っています。 広島原爆の数千倍です。 休止中の4号機燃料プールだけで、数千本入っています。 冷却がうまく出来ないと、燃料が溶解し、再臨界が起こり、全部吹き飛びます。 そうなったらチェルノブイリの比ではありません。 バカ菅ではないが、本当に「東日本が(もしかすると日本そのものが)全滅する」でしょう。

 今は海水注入など、後先のことを考えない目茶目茶な方法で何とか押さえていますが、いつまでもこんなことは出来ません。 通常でも常温冷却までもっていくには少なくとも5〜6年かかります。 安定的な方法(冷却水の循環)で冷却が出来るようになるまで、まったく油断は出来ません。 1基でも駄目なら全部アウトですから。 どうやら原子炉や格納容器にひびが入っているらしく、今のところ安定冷却の目処はまったくついていません。 その意味ではチェルノブイリより深刻かも知れません。 保安院がはっきり物を言わないのは、そのせいでしょう。 僕はレベル7よりこの方を心配しています。 大げさに言うと、夜も寝られないほど。 体重が少し落ちました。 T.G.

 追伸: いろいろ調べましたが、福井の高速増殖炉もんじゅの状況は福島以上に危ういですね。 聞くだに身の毛がよだちます。 ますます寝られなくなるので、忘れるようにしています。 危機管理の出来ない日本人には原発は無理だと思い始めました。

 この返信メールのCCを見たGP生君から届いたメール。

 T.G.君へ。
 福島第一の事故対策は一歩前進三歩後退の感じで焦燥感を以て見守っていました。 高濃度廃水の除去を始めようとした矢先、マグニチュード7クラスの余震により二日のロス。 全く呪われているとしか思えない感じです。 昨夜から何とか始まったようですが、先の長い第一歩ですね。 関東や東北の大気中の放射線濃度の推移をみていると、どの地域でも3月15日から16日にかけてにピークが来て、後はおおむね漸減状態が続いています。 盛岡から新宿まで同じ傾向です。 3月14日に3号機使用済み燃料貯蔵庫で、15日は午前中に4号機の同核燃料貯蔵庫で水素爆発がありました。 各地の測定時間との時間差は判りませんが、因果関係は間違いないと思います。 大前研一氏のレポートにあるように、最悪状態は既に過去形です。

 過去の事故と異なり、3基の原子炉と4槽の貯蔵庫の同時コントロールと言う、厳しい状態ではあり、安定冷却の見通しが立っていない現状は確かですが、この時期にレベル7の発表は唐突すぎる感じです。 海中の放射線量もピット水の流出を止めて以来低減傾向を示しています。 1万トン近い低レベル放射線水の放出もピット水より影響が少ないようです。 レベル7とは言え、チェルノブイリと違うのだと、長々と解説をしなければならないのなら、何故今の時期に発表しなければならないのでしょう。 IAEAですら13日に記者会見をして「福島はチェルノブイリとは、構造も規模も違うのだ。」とコメントしている。 風評被害ではないが、中身はともかくレベル7が国際社会の中で独り歩きしてしまい、日本製品に対する過剰な忌避反応が起こるでしょう。 レベル7なのか6なのかの判断基準は素人には判りませんが、危機管理上は安定冷却の見通しが立った時点で、最終評価をすべきであったと思います。

 国内的にも国際的にも、今発表することがどんな意味があるのか。 バカ菅を始め無能極まる瓦礫同然の大臣どもをどうにかしなければ。 国民が出来るのは内閣支持率を一桁にすることぐらいですが。支持率アップではこれも無理。

 Sa君は4月中は羽鳥湖滞在とのこと。 余震に限らず、今の世の中一寸先は闇。 何が起こるかわかりません。 必要以上に脅えることはないと、腹はくくっていますが、当分家族のため、テナントさんたちのために情報へのアンテナだけは神経を尖らしています。 Sa君も今の時期に一人で山籠もりはどうかと思います。 君の所に情報を求めて来るぐらいなら、一日も早く蓮田に帰るべきでしょうね。 福島原発は時間がかかっても、現場の頑張りがある限り落ち着くところに落ち着くと思っています。 GP生
                

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