【伝蔵荘日誌】

2011年4月8日: 震災からの復興 T.G.

 震災からひと月経った。 この一ヶ月、小生もGP生君も日誌にほかのことを書いていない。 それ以外のことはどうでもいいことに思えて、書く気が起こらなかったのだ。 身の回りでも、友人や団地の人たちとの旅行計画やゴルフコンペはすべて取りやめになった。 観光地やゴルフ場は閑古鳥が鳴いてているらしい。 もうそろそろ震災パニックを卒業しないと、日本経済がますます落ち込んで、二次的災害を被りそうだ。

 悪いことばかり考えず、震災がもたらしたよい結果について考えてみる。 一つは今回の震災を奇貨として、ほとんど沈没しかけていた日本経済を立て直すチャンスになることだ。 もう一つは、避けられそうもない今年の夏の電力危機を、日本の社会変革のトリガーにすることである。

 バブル以降この20年、日本経済は沈みっぱなしで、いくらあがいても浮かび上がれない。 少子高齢化で経済は低迷し、成長率は先進国最低。 GDPは中国に追い越され、20年後には韓国にさえ追い越されると言うのがあながち冗談ではなくなった。 もはや失われた20年ではなく、これが日本のあるがままの常態なのだと気づかされた。 政府の景気対策も金融措置も、すべて空振り。 何をやっても効果が上がらない。 今回の震災がなかったとしても、いずれ日本は沈没していただろう。 戦前だったら、このあたりで一発、ケインズ効果を見込んだ戦争でも仕掛けて、一気に体勢挽回を図るところだが、このご時世それも難しい。 さあどうするか!

 多くの識者が口をそろえて、今回の震災復興には少なくとも100兆円の資金が必要と言う。 1兆2兆のはした金ではどうにもならない。 政府はあれこれやりくりして、3兆円の補正予算を組むと言っているが、その程度では焼け石に水だ。 毎年巨額の補正を組む税源があるわけでもない。 これをチャンスと財務省のバカ官僚がバカ菅を焚きつけて、増税話が持ち上がっているが、現在の税収はわずか40兆円。 1割上げてもたかだか4兆円しかひねり出せないし、そんなことしたら日本経済は窒息する。 だからと言って赤字国債を100兆円も増発したらデフォルト間違いなし。 国が潰れる。 まさに雪隠詰めである。

 昨日の産経新聞に埼玉大名誉教授の長谷川三千子氏が復興財源にための政府の貨幣発行特権行使を提案している。 国家の危機にこれくらいの蛮勇は奮えと。 これと同じことを最近幾人かの識者が言い出している。 要するに金なんか輪転機で印刷すればいくらでも作れると言うことだ。 税金や国債などに頼らず、政府の責任で1万円札を100兆円分印刷して、それを復興に使えという意味だ。 だけど国家の命運よりただただインフレが怖いだけの軟弱日銀はやらない。 だから政府が自らやれと。 法的にそれは可能だと。

 輪転機で印刷しただけの、何の担保もない金を100兆円も市中に流したら、ハイパーインフレは免れない。 国が潰れる。 だからどこの中央銀行もそんなことはやらない。 北朝鮮だってやらない。 しかし日本は、日本だけは、それが出来るデフレギャップと言う究極の奥の手がある。 需要と供給力の差を意味するデフレギャップは日本経済低迷の根本原因、悩みの種だった。 作っても売れないから在庫ばかり増え、価格が下がる。 それに伴い売り上げも雇用も賃金も下がる。 だからますます売れなくなる。 悪魔の罠、デフレスパイラルだ。 このデフレギャップを逆手に取る。 ギャップの大きさはGDPの8%、40兆円もあると言う。 この分だけ金をばらまいてもインフレにはならない。 他の国にはない日本経済の強み、凄さだ。

 政府が財務省印刷局に指示して、今後5年間、毎年1万円札を20兆円分印刷し、復興予算に充てる。 予算は時限的な特別会計にして、一般会計予算とは別にする。 ごちゃ混ぜにすると、子供手当のような人気取りのバラマキに使われるから。 現金バラマキハほとんど貯蓄に廻って内需拡大には結びつかない。 だから予算の執行は現金のバラマキではなく、すべて復興のための公共工事に当てる。 石巻や気仙沼の高台に新たな町や村を建設し、全員そこへ引っ越す。 壊れた港を作り直し、漁船の建造に補助金を出す。  公共工事の乗数効果は高い。 使った金が直ちに内需を生む。 これまで公共工事が悪者にされたのは、熊しか通らない道路とか、役立たずのダムばかり造っていたからだが、今回は被災地の復興に使われるのだから誰も文句は言わない。 真水予算による5年間で100兆円の内需拡大は、震災復興だけでなく、日本経済再復活の後押しをするだろう。 一種の戦時特需のようなもので、企業は潤い、雇用は増え、被災地に金が落ちる。 その好循環が日本経済を押し上げる。 今までどうにもならなかったデフレスパイラルから抜け出せる可能性は大だ。 我ながら名案である。

 戦後の日本経済復活は朝鮮戦争の特需に依った。 今回の震災が失われた20年から再復活するきっかけになるに違いない。 残るは、政治指導者の骨太な展望と決断だけだ。 菅首相は現地視察で「被害地の復興は高台に新しいエコタウン建設」とぶち上げたが、そんな大それたこと、1兆、2兆のはした金で出来るわけがない。 福島原発の後始末だけで6兆円かかる。 100兆円構想はこの右顧左眄のへなちょこ総理が男を上げるいいチャンスだと思うが…、駄目だろうな。 やっぱり。 人間には持って生まれた資質というものがある。

 次に電力危機の問題だが…と、ここまで書きかけて眠たくなった。 続きは明日書くことにしよう。   

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