【伝蔵荘日誌】

2011年1月10日: 中期高齢者の健康談議 T.G.

 GP生君の日誌に触発され、自身の健康に関心を持つようになった。 昨年来、友人、知人達から訃報や健康トラブルの知らせが多くなったこともある。 正月明けの二日に、1年先輩の秋田のWaさんから電話をもらった。 糖尿病に由来する網膜剥離で、突然失明状態になったという。 周囲がぼんやり見える程度で、テレビも見られず新聞も読めない。 もちろん車の運転も出来ず、寝たきりに近い状態という。 一昨年仙台で行われたワンゲル50周年で会ったが、「あの時が君の顔の見納めだった」などと電話口の向こうで情けないことを言う。 それまで健康だった人の失明は、寝たきりになるよりつらいことだろう。 慰める言葉も持たなかった。

 6年前、ヒマラヤへ出かける直前に痛風の発作を起こした。 足の親指の付け根が腫れ上がり、歩けなくなった。 以来病院で定期検査を欠かさず受け、尿酸値抑制剤を服用しているので再発はしていない。 痛風は尿酸値さへ正常なら、まったく支障がない病気である。 GP生君が言うには、尿酸は本来身体に不可欠な成分で、なおかつ強い抗酸化作用がある。 癌予防にとても効果があるのだそうだ。 尿酸値が高くて羨ましいなどとも言われた。 そうは言っても過ぎたるは及ばざるが如し。 高尿酸値を放っておくと腎臓に来る。 腎臓が壊れると人工透析を余儀なくされる。 92歳で亡くなった義父がそうだった。 それではいくら癌が予防出来ても意味がない。 それが怖いので、薬はきちんと飲んでいる。

 尿酸値は3ヶ月に一度の血液検査で調べる。 尿酸値以外にも数十項目の検査数値が分かって、格好の健康管理になっている。 ある時血清アミラーゼの数値が幾分高いのでエコー検査を受けろと言われた。 処置してくれた女医さんに何の検査か聞くと、膵臓炎、もしくは膵臓癌を調べているというから穏やかでない。 青くなってどんな様子か聞いたら、「何も問題はありません。 正常でも値が高くなる人は時々います」と言われ安堵した。 検査数値の上下限は平均的なもので、人によっては器質的にこれを外れても正常であるケースは多々あるらしい。

 以前、ほかにも似たような経験をしたことがある。 まだ現役の頃、会社の半日ドックの眼底検査で、「視神経乳頭の陥没が大きい。 眼圧が高いのが原因で、緑内障のおそれがあるから精密検査を受けろ」と言われた。 びっくりして病院の眼科へ駆け込んだら、眼圧も視野もまったく問題なかった。 その際医者に、「生まれつき器質的に眼底のくぼみが深い人もいます。 あなたの場合もそうでしょう」と言われた。

 2年ほど前、血液検査の結果を見た主治医から、コレステロール値が高いから低下剤を飲めと言われた。 リピトールというスタチン剤を処方されたが、これが恐ろしいほど劇的に効く。 260近くあったものが、あっという間に160ぐらいまで下がった。 ちなみに日本の“通常の医学界”では、220以上を高脂血症と規定している。 伝蔵荘からの帰り車の中でこの話をGP生君にしたら、「260なんてまったく問題ない。 むしろ長生きする。 コレステロールは身体の代謝に有用かつ必要不可欠な要素で、これを薬で無理に低下させるといろいろ不具合が起きる。 最も深刻なのは癌予防機能の低下だ。 リピトールの服用は即刻やめるべき」、と言われた。 それでもリピトールの効き目にホクホクして、まともに話を聞かなかったら、これを読めと1冊の本を送ってきた。 医療ビジランスセンター(NPOJIP)理事長、浜六郎氏の著書、「コレステロールに薬はいらない!」(角川書店)である。

 これを読んで、目から鱗が落ちた。 もともと高コレステロールの危険性は、心筋梗塞患者が多いアメリカの製薬会社の言い出したことで、高コレステロールの患者にコレステロール低下剤を処方したら心筋梗塞発症の確率が幾分抑えられたという調査データによっている。 日本人の場合、心筋梗塞はアメリカ人よりはるかに少ない。 また心筋梗塞患者に偏らない一般的な調査では、むしろコレステロール値が240〜280と高めの人の方が長生きすると言うデータがいくらもある。 これはコレステロールが本来身体の新陳代謝に不可欠な重要成分で、その生成を薬で無理に抑えると細胞の活力が弱まり、ひいては身体の抵抗力、免疫機能が低下するためだと言う。 老人の場合、活力や性的能力が衰え、鬱病にかかりやすくなり、肺炎など細菌感染に対する抵抗力が弱まる。 最も深刻な問題は癌になりやすくなることだと言う。 だからコレステロール値が300以上あって、なおかつ血縁者に心筋梗塞の病歴がある人以外は、コレステロール低下剤は飲むべきではないと言うのだ。

 この著書では、これらの主張を各種の医学文献や調査データを基に、理路整然と解説している。 新陳代謝に関するコレステロール意義と役割についても分かりやすく説明している。 面白いのは、「悪玉コレステロールなどという言い方は間違い。 コレステロールに善も悪もない。 あれは製薬会社のプロパガンダだ」と喝破していることだ。 いわゆるLDL(低比重リボ蛋白)を悪玉コレステロールと呼ぶのは、これが細胞にコレステロールを送り届ける働きをしていることによる。 コレステロールを細胞に送り届けるから悪玉というのはとんでもない話で、細胞膜の原料であるコレステロールが細胞に届かなかったら人間は死んでしまう。 言われなき誹謗だという。 スタチン剤など多くのコレステロール低下剤は、本来身体に必要なコレステロールの生成を無理やり抑制してしまうので、服用すると身体にいろいろな不具合が起きる。 最も深刻なのは癌にかかりやすくなることだ。

 現在日本医学会はコレステロール値に関するガイドラインを出し、220以上を高脂血症と規定している。 これに対し、最近いろいろな反論が出されている。 浜氏の著書もその一つだ。 自分はコレステロール値260。 微妙なレベルだから大いに関心がある。 それでいろいろ調べてみると、コレステロール値240〜280が最も長生きという調査データが世界中にいくらもあることが分かった。 昨年発表された日本脂質栄養学会の新ガイドラインは浜氏の主張とまったく同じで、コレステロール値を薬で下げるのは間違い、コレステロール値が240〜280の人が最も長命、と指摘している。  これに対して、日本医学の最高権威である日本医師会は「容認出来ない」と異端視している。。 さてどちらが本当なのか! しかしながら、高コレステロールと心筋梗塞の因果関係を示したデータは、依然としてバイアスのかかった製薬会社のものしか示せず、大いに説得力を欠く。 コレステロール低下剤は毎年世界中で何兆円も売り上げる製薬会社のドル箱商品で、日本だけでも数千億円に達するという。 むべなるかなとは思うが、権威主義に過ぎて本当に患者の立場に立っているのか疑問である。

 浜六郎氏の著書に、「心筋梗塞で死にますか? それとも癌で死にますか?」と言う殺し文句が出てくる。 自分の血縁に心筋梗塞はいないが、癌はいろいろある。 GP生君の忠告に従いリピトールをやめたら、たちどころに数値が260に戻った。 “最も長命”の範囲に属する値である。 浜六郎氏によれば、リピトールはスタチン剤の代表的薬剤で、最も危険だという。 そんな毒のような薬はとても飲む気にならぬ。 しかしながら医者からは、毎度きちんと薬を飲まなければ駄目と叱られる。 気弱な小生は、正当派医術に殉じる心優しき主治医とコレステロール論争をするに忍びず、アホ面を演じてひたすら頭を下げるだけ。 そろそろ病院通いが鬱陶しくなってきた。 長生きも大変だな。 誰か助けて!

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