【伝蔵荘日誌】

2010年11月25日: 懲りない金正日の火遊び T.G.

 北朝鮮による韓国・延坪島への砲撃で大騒ぎになっている。  テレビで我がカン総理の記者会見を見ていたら、まず開口一番、「北朝鮮が韓国の島に砲撃を加え、韓国軍も応戦したという報道があり、私にも3時半ごろに秘書官を通して連絡がありました」とのたまった。 それに続いて「情報収集に努めることと、不測の事態に備えることを指示した」と付け加えた。

 いくらなんでもそれはないだろう。 真っ昼間、一国の総理が隣国の戦争状態をテレビニュースで知らされることがそもそもあり得ないお粗末なのに、それをテレビカメラに向かって平気でしゃべる。 この男は総理大臣が何たるかまるで分かっていない。 正真正銘の馬鹿だ。 たとえテレビで初めて知ったのが事実だとしても、絶対にそのことを口にしてはいけない。 日本政府の危機管理体制のお粗末さを世界に知らしめることになるからだ。 これでさぞ胡錦涛も金正日も安心しただろう。 日本政府の無能無策、脳天気ぶりが分かって。 もう尖閣は俺のものだと確信したに違いない

 それに続いて出てきた言葉が、「情報収集」「不測の事態に備えること」の2点だけだったのも輪を掛けてお粗末だ。 一国の総理がまず口にすべきは、北朝鮮の暴挙に対する非難でなければならない。  情報収集や不測の事態対処なんて言わずもがな、やって当たり前のことは言う必要もない。 実際オバマ大統領はそうしている。  まず北を非難し、返す刀で同盟国韓国の防衛に言及している。 それが一国の外交、防衛を預かるものの当然の姿勢だ。 もしかすると我が左翼総理は、前々からの友愛的心情で、つい将軍様に気を遣ったのか? 大いにあり得るが、そうだとしたら尚更やりきれない。 この民主党政府のお粗末さについて、ジャーナリストの上杉隆氏が「首相が北朝鮮砲撃を報道で知ったと語る、もはや“無政府状態”の危機管理態勢を憂う」と言う痛烈な記事をダイアモンド誌に書いている。

 それにしても北朝鮮の軍隊はなっていないね。 まるで子供の火遊びだ。 あれで強盛大国とは聞いて呆れる。 わずか12キロ先から150発撃って、半分しか着弾していない。 それ以外は海に落ちたか、不発弾だったのか、とにかく命中率が低い。 普通山向こうなどの直視出来ない対象物を射撃するには榴弾砲や迫撃砲などの曲射砲を使う。 弾丸が放物線を描いて山向こうに届く。 見えないところに撃つのだから、初弾はターゲットを外れる。 それを目視出来る場所にいる観測員からの報告で照準を修正し、着弾精度を上げる。 日本の自衛隊なら、初弾以外はほぼ百発百中だろう。 実際の写真を見ると、砲弾は広い範囲に脈絡なく着弾しており、もはやメクラ撃ちに等しい。 北の工作員は韓国内にうじゃうじゃいるはずだから、観測員も置かずに砲撃したとは思えない。 単に大砲射撃が下手なだけだ。

 「さるさる日記」と言うブログで、24日付の日経新聞記事について書いている。 それによれば、後継者の金正恩は金日成軍事総合大学で砲兵学を学んだ砲術の専門家で、砲撃に関する論文も著し、「百発百中の名人」なんだそうである。 今年1月に陸海空合同軍事訓練での砲射撃訓練も金正恩氏が総指揮したという。 今回の砲撃は後継者金正恩氏の体制固めだとも言う。 そうだとしたら尚更お粗末だ。 キム大将はさぞかし面目を潰されて怒っているだろう。 砲術士官は厳罰に処されただろう。 さるさる日記では、次代を担う「将軍様」が「ミサイル工学の泰斗」というのなら分かるが、いまさらローテク砲術を修めるってのが北朝鮮らしい所、とおちょくっている。

 歴史的に見て、朝鮮人と中国人は実に戦下手な民族だ。 朝鮮は、老いぼれ秀吉の気まぐれな朝鮮出兵の折、瞬く間に全羅道を除く全土を日本軍に制圧された。 わずかに郭再祐率いる民兵のゲリラ戦で全羅道を守った。 秀吉が死ななかったら、あの時点で朝鮮半島は日本の属領になっていただろう。 明治以降も、日本のような貧弱な軍隊しか持たない後進国に、何ら抵抗することもないまま、あっけなく併合を許している。 大戦末期の金日成の抗日パルチザンも、ソ連の衣の下に隠れて、ただあちこち逃げ回っているだけで、日本軍には歯牙にも掛けられなかった。 その金日成が起こした朝鮮戦争も、韓国側に備えがなかった初期は当たるところ敵なしだったが、アメリカ軍の本格的反攻が始まるとあっけなく鴨緑江まで追いつめられ、毛沢東に泣きを入れて中共軍に助けてもらい、何とか38度線まで押し戻した。 その間に数百万人の兵士や人民が犠牲になり、国家の存続が危ぶまれるほどになった。

 その中国共産党の人民解放軍も実に戦に弱い軍隊で、少し前までは日露戦争以来の時代遅れの三八式歩兵銃ぐらいしか装備を持たない関東軍にいいように押しまくられ、逃げまどっていた。 日本が戦争に負けたのは、凄まじい物量にものを言わせたアメリカ軍によってであり、断じて中国軍によってではない。 蒋介石の国民党軍も、毛沢東の八路軍も、昭和20年8月15日にいたる最後の最後まで日本軍には歯が立たなかったのだ。 朝鮮戦争は中国の人民解放軍を私兵に使ったソ連とアメリカの代理戦争で、スターリンの許しを得た毛沢東は、300万の兵士を朝鮮半島に送り込み、アメリカ軍に対抗した。 その戦の中で100万の兵士を死なせた。 つい数年前まで、ろくな兵器も持たない関東軍にいいように追いまくられていた八路軍とは思えない勇猛ぶりだが、単なる兵士消耗戦で、とても戦に強い軍隊とは言えない。 毛沢東は常々、「兵士などいくらでもいる。 たかだか数百万の兵を死なせることなど、何ら問題ない」と豪語していた。 おそらく今の人民解放軍もそうなのだろう。

 歴史的に見て、中国(支那)が外国軍との戦いで勝ったためしがない。 清朝時代のアヘン戦争でも、当時上海に駐留していたわずか400人イギリス兵相手にこてんぱんに負かされ、香港を割譲させられている。 日清戦争でも、自分より貧弱な戦艦や兵器しか持たない日本軍にわずか9ヶ月で負けている。 朝鮮戦争以来、中国人民解放軍が外国に戦争を仕掛けたのはチベットとベトナムぐらいのものだが、1979年の中越戦争ではホーチミンにはあっけなく蹴散らされ、たった1ヶ月で敗退している。 唯一勝てたのは、軍隊も兵器も持たない穏やかな仏教国のチベットだけである。 胡錦涛を含め歴代の中国指導者達はそのことをよく知っており、彼らが最も恐れるのは日本の憲法9条改正と本格的再軍備なのだ。

 その日本も威張れたものではない。 確かに戦闘には強いが、戦術や戦略にはまったく弱い。 弱いと言うより戦略などないといった方がいい。 後先のことなど考えず、出たとこ勝負のそれ行けどんどん。 テンション民族日本の最大欠点だ。 日清日露には運良く勝ったものの、日中戦争、太平洋戦争では戦略など皆無のごり押し一辺倒。 戦略的にうまく落としどころを考えておれば、今頃満州の権益も残っていただろうし、北方四島どころではなく、千島も南樺太も日本国領土のままだっただろう。 ましてや尖閣程度の離れ小島で問題が起きることもなかっただろう。 我がカン総理の「砲撃はテレビで知った」発言は、戦略不毛の日本の伝統、DNAなのかもしれない。 なにせそう言うお粗末な内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮官なのだから。 日本の指導者は、胡錦涛や金正日のしたたかな外交戦略を大いに学ぶべきだ。   

目次に戻る