【伝蔵荘日誌】

2010年11月7日: 2チャンネルのお祭り騒ぎ T.G.

 尖閣のビデオ映像がYouTubeに流出して、大騒ぎになっている。 我らが民主党政権は周章狼狽。 慌ててとりあえずYouTubeからは消させたが、すでに世界中で少なくとも100万人が見ていて、自分のパソコンにコピーしているからそれこそ後の祭り。 YouTubeは世界最大の動画投稿サイトである。 出回ったコピーはおそらく数十万本あるだろう。 小生でさえその一つ、44分版を持っている。 もうこの映像は永遠に地球上から無くならない。 インターネットの絶大な威力である。 今回のことは、この未成熟な小児病政権の統治能力の限界を、痛々しいまでにさらけ出した。

 最初にビデオが流出したのはYouTubeだが、それを見て最初に騒ぎ出したのは2チャンネルだ。 小生も新聞テレビが報道し始めた11月5日より前に、2チャンネルで知った。 この件に関する新聞テレビの報道は、すべてYouTubeと2チャンネルの後追いである。 表マスコミはとても敵わないこのネットチャンネルの切れ味、威力を今更ながら思い知らされた。

 2チャンネルではこのニュースが“お祭り”になっている。 “お祭り”とは2チャンネルで話題になって、“書き込みやアクセス数が異常に膨れあがった記事”を指す2チャンネル用語である。 “通称“2NN”(2channel News Nabigator)”と言うウェブサイトで閲覧出来る。 本日午後7時現在で2NNで取り上げられた記事は次の8本である。

【尖閣ビデオ】中国漁船衝突の映像、YouTubeに流出…動画は海保研修用のものと判明、複数本コピーが存在★140
【尖閣ビデオ流出】 原口前総務相 「国家への反逆だ」★3
【社会】「山コン(山で男女が親交を深める)」が一転、凍死の危機に…山ガールブームに死角
【尖閣ビデオ流出】 鳩山前首相 「クーデターだ」★4
【政治】菅内閣支持率32% 共同通信の全国電話世論調査 2010年11月07日
【社会】大阪の地下鉄で20代の女性4時間半閉じこめ…終電で寝過ごす
【社会】 「英語が不自由な人は、21世紀を生き残ることはできない」…グーグル日本法人名誉会長(かぼす大使)★2
【尖閣ビデオ流出】 仙谷官房長官 「中国政府に説明を申し上げることになる」★11

 数ある“2チャンネル速報”の内、どれが2NNに取り上げられるかは、このサイトの編集者の選択による。 読む人によっては実にくだらないと思えるニュースもある。 しかしながらこれが2チャンネルの感性なのだ。 ニュースタイトルの末尾に“★140”とあるのは、この記事に対する書き込みスレッドが140本に達したことを意味している。 スレッドは千人が書き込みとそこで打ち切られ、次の新しいスレッドに移る。 ★140とは、この記事に対し、これまでに14万人が自分の意見を書き込んだことを意味している。 閲覧数はその100倍、1400万アクセスに達するだろう。 この数が多いほどいわゆる“祭り”になる。

 最初の【尖閣ビデオ】中国漁船衝突の映像、YouTubeに流出…」はこの話題の最初の問題提起、お祭りの頂点である。 ニュースソースはNHKだ。 最初の内はまともな書き込みが半分ぐらい混じっていたが、140スレッドにも達すると、面白半分の野次馬書き込みがほとんどになる。 通常の“祭り”だと、スレッド数はたかだか10程度である。 140とは2チャンネルでも異常だ。 その意味からもこの記事がネットユーザーに極めて強い関心を呼んでいることが分かる。 この問題に対する国民の関心、批判の高さが感じられる。 2チャンネルの出自、品性はともかく、意見表明の母集団が1万を超えたらそれは世論そのものなのだ。

 そういう見方で残りの7タイトルの書き込みを読んでみる。 【尖閣ビデオ流出】 原口前総務相 「国家への反逆だ」【尖閣ビデオ流出】 鳩山前首相 「クーデターだ」はメインに対するサブテーマである。 トッチャンボウヤの原口一博前総務相やルーピー鳩山が、「(流出が)役所がやったとすると、国家への反逆だ」とか、「政権に対するクーデターだ」などと意味もなくわめいたことに対するオチョクリである。  2チャンネル用語で言うと、「お前が言うな!」だ。 これは2チャンネルの批判精神の発露でもある。 最も典型的使い方は、朝日新聞の珊瑚落書き事件に対するものだ。 1989年4月20日の朝日新聞夕刊に、沖縄県西表島の珊瑚礁に“K.Y”といういたずら書きがあったことを批判する記事が載った。 しばらくして、それが朝日の記者の自作自演だったことが判明して大騒ぎになった。 それ以来、朝日新聞が自然環境破壊について何か批判記事を載せると、“お前が言うな!”となる。 「お前には言う資格がない」と言う意味である。

 【社会】「山コン(山で男女が親交を深める)」が一転、凍死の危機に…山ガールブームに死角」は、静岡のハイキングルートで“山コン”をしていた20代の男女5人が遭難し、翌日助けられた記事についての書き込みである。 「沢口山で遭難なんて聞いたことがない 」とか、「山勘?、山姦?」などと皮肉たっぷりである。 「【社会】大阪の地下鉄で20代の女性4時間半閉じこめ…終電で寝過ごす」は、大阪の地下鉄で、最終電車内で眠っていた女性客に誰も気が付かず、翌朝始発まで車内に閉じこめられたニュースだ。 「いいじゃん 、終電乗り過ごしじゃ帰れなかったんだし」とか、「トイレは大丈夫だったの? 」とか、からかいながらも幾分暖かな書き込みが目に付く。

 【社会】 英語が不自由な人は、21世紀を生き残ることはできない」は、グーグル日本法人の村上憲郎氏の発言を報じた大分合同新聞の記事が元になっている。 これには、「英語=国際化だと思ってる人は生き残れない 」とか、「英語が話せなくても金髪ネーちゃんとやれれば十分 」などと硬軟取り混ぜた反論、批判で溢れている。 この種の軽薄な外国語礼賛は明治時代からあった。 その代表的なものは、森有礼の「国語英語化論」と志賀直哉の「国語フランス語化論」だ。 今でもそういう暴論を吐く輩が実に多いが、英語が出来なくて日本が滅びるなどと言う馬鹿なことはあり得ない。 その証拠に、英語が下手でも世界第二の経済大国になれたし、ノーベル賞も沢山もらっている。 最近日本に元気がないのは英語下手のせいなどではない。 グローバリズムの毒気に当てられて、国民の気力が削がれていることが原因だ。 勘違いも甚だしい。

 最期の「【尖閣ビデオ流出】 仙谷官房長官 「中国政府に説明を申し上げることになる」は、ビデオ流出で取り乱した(としか思えない)仙石官房長官が、「公務員が故意に流出したとすれば明らかに罰則付きの国家公務員法違反になる」と凄んだ後、「事実関係が調査できれば、(中国に)しかるべくご説明を申し上げることになる」と馬鹿丁寧な敬語を使ったことを問題視している。 これに対しては、「国民には恫喝。 中国様には変な敬語。 この人なにもの? 」とか、「もう完全に土下座外交」とか、「国内問題なのに、なんで中国に報告が必要なんだ? 」などと総スカンである。

 Youtubeも2チャンネルも、これまでのジャーナリズムとはまったく異質である。 玉石混淆で、内容の99.9%は愚にも付かない映像や書き込みである。 その中から石をより分け、玉を選ぶのは読者(閲覧者)の責任である。 尖閣ビデオだって、アップされている膨大な投稿ビデオの中から閲覧者が見つけたのだ。 情報量や速報性もさることながら、こういうネットジャーナリズムの切り口や批判精神はNHK、朝日読売と言った表マスコミでは絶対に見られない。 今回の尖閣問題も、報道の主導権は完全にYouTubeや2チャンネルなどのネットジャーナリズムが取っている。 表マスコミはその後追いをしているだけだ。 プロの記者が書く記事内容にしても、本質において2チャンネルの書き込みとどれほどの差があるというのだろう。 ネットと違い、記者の恣意や主観が混じるだけ、客観性に欠ける。 報道に関する限り、従来的な新聞テレビの役割はそう遠くないうちに終わるに違いない。   

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