【伝蔵荘日誌】

2010年10月10日: 義弟の前立腺ガン GP生

  義弟が生検で前立腺ガンと判ったのは昨年の11月末のことである。 前立腺肥大と前立腺ガンは全く異なるが、前立腺のトラブルは60歳を過ぎた男性なら誰にでもその可能性がある。 他人ごととは言えない。 夜中の排尿回数の増加や尿切れの悪さなどは、高齢者なら誰でも経験があるだろう。

 前立腺ガンの早期発見にはPSA(前立腺特異抗原)値のチェックが大切だ。 この値が前立腺ガン発生の確率と疑いの程度を示している。 最終的には前立腺に針を刺して採取した組織を顕微鏡で調べ、ガンの有無を確定することになる。 PSA値が4から10未満では低リスク、10から20未満では中リスク、20以上では高リスクと言われている。 義弟の場合は11月の検査でこのPSA値が8.99ng/mlであった。 前立腺ガンは他のガンに比べて進行が遅いため、低リスクの段階では治療に幅広い選択肢がある。

 低リスク段階の標準治療法には「手術」・「放射線療法」・「ホルモン療法」がある。 放射線治療には、外部照射と直径1ミリ以下の線原を数十本以上埋め込む二つの方法がある。 ホルモン療法は男性ホルモンの分泌を抑え、ガンを縮小させようとする方法だ。 いずれの方法も副作用は避けられない。 義弟は医者が勧める標準的な療法を拒否して「超高濃度ビタミンC点滴療法」を選択した。 この治療法は日本では3年ぐらい前から本格化したが、世界的には60年近い歴史がある。

 ビタミンC点滴療法は、50〜120グラムのビタミンCを点滴することにより、一定時間体内のビタミンC濃度を保ち、ビタミンCがガン細胞内で活性酸素の一種である過酸化水素を発生させることでガン細胞を死滅させる方法である。 ビタミンCを口径で摂取しても、腸管からの吸収に限度があるため必要な血中濃度が得られない。 そのため点滴という手段が用いられる。 血清中のビタミンC濃度を400mg/dl以上にすれば、大量発生した過酸化水素がガン細胞を殺すことは経験的に知られている。 義弟は12月末から仙台の病院でビタミンCの点滴を始めた。 現在ビタミンC点滴療法を行う医師は全国で300人近くになったそうだが、本当の経験者は少ないようだ。 仙台ですら2病院しかない。 治療費は当然保険適用外で、1回に3万円前後を要する。 週に3回ぐらいがベターのようだが、義弟は週2回を選択した。 それでも検査等を含めて1ヶ月当たり30万円近くかかる。

 最初は50グラムから始めて少しずつビタミンCの量を増やし、100グラムまで上げたが、血清中の濃度がなかなか上がらず、200から260の間を前後していた。 ビタミンCが全身の細胞に入っても、他の目的に消費される量が多ければ血清中の濃度は上がらない。 義弟の場合、夜中に5回から6回のトイレ行きを余儀なくされ、睡眠不足による慢性的ストレスのためビタミンC の消耗量が多く、血清中濃度が上昇しなかったと推察される。 この場合薬物により一回の排尿量を多くして夜間のトイレ行きを減らすか、点滴回数を増やしてみることが対策となる。 義弟が点滴を始める直前のPSA値は10.86だったが、今年4月初旬に点滴をやめた時の値は9.57であった。 点滴を続けた正味3ヶ月の間、血中のビタミンC 濃度は400には届かなかった。 しかしながら僅かではあったがPSA値改善の兆しがあっただけに、点滴の終了は残念だが、治療開始時の予算を100万円としていたために、他者が口を挟む余地はなかった。

 現在義弟は副作用の比較的少ないホルモン療法を行っている。 これはガンを縮小させるが完治させるものでなく、放射線治療の前段階と考えた方がよい。 ガン治療にかかわらず、ビタミンC点滴をすることで身体の健康レベルが上がることは間違いない。 義弟の場合、毎年冬にひいていた風邪にかからなかった。 ビタミンCが人の代謝にいろいろな関わりを持つことを考えれば当然で、健康維持のため月2回程度の点滴を受けている人もいる。 ビタミンCは正常細胞でも過酸化水素を発生させるが、正常細胞内ではカタラーゼ等の酵素により水と酸素に分解され、無害化されるため、副作用は生じない。

 東京には日本でビタミンC点滴療法を始めた先達の病院を含め、この治療法を施す多くの医院がある。 自分または家族がガンと告知されたとき、そういう病院を選びたいものだが、最大の問題は治療費である。 保険適用は当分先の話となろう。 経済力により人の健康が左右されるのは愉快な話ではないが、いざ鎌倉のため「備えあれば憂い無し」を心がけるしかないようだ。        

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