【伝蔵荘日誌】

2010年7月12日: 民主大敗でひと安堵 T.G.

 4日前の予想通り、与党民主党が大敗した。 これで一安心である。 ねじれで国政が停滞すると危ぶむ向きもあるが、たいした問題ではない。 この20年、停滞のしっぱなしで、それがちょっと伸びるだけのことだ。 マスコミが騒ぐ消費税など、これも大した問題ではない。 いずれは上げざるを得ないだろうが、焦眉の急ではない。 誰がどうやっても結果は似たようなものだ。

 最も心配したのは、消費税などではなく、外国人参政権、夫婦別姓法案、人権保護法案の帰趨だった。 人権保護法案は名ばかりで、実態は在日外国人(特に中韓の)におもねった今様“治安維持法”である。 うっかり与党が過半数をとっていたら、次期国会でこの三悪法案がやすやす国会で成立しただろう。 日本はどえらいことになっていただろう。 小沢も菅も岡田もハトヤマも、仙石も輿石も千葉もやりたくて仕方がない。 特に外国人参政権については、小沢やハトヤマがのこのこ出かけていって、胡錦涛やイミョンバクに請け負っていた。 民主にとってはいわば国際公約なのだ。 それなのに自国民向けのマニフェストには何も書いていない。 この詐欺まがいのやり口は、勝手に外国と不平等条約を結んで、桜田門外で暗殺された井伊直弼よりひどい。 国民がそのいかがわしさに気づいて今回の選挙結果に至ったのなら、日本にはまだ救いがある。

 この3法案は、昨今の世界情勢と日本の状況を鑑みれば、亡国法案と言っていいだろう。 長きにわたる経済低迷、少子化、高齢化の日本が何とか命脈を保っているのは、我が国が規律のある国民国家として存在できているからだ。 その国の骨格が、夫婦を核にした家族制度を根幹にしているからだ。 この二つの条件を取り除いたら、経済成長はおろか、今の東アジアで日本は生きながらえられない。 あっという間に、それこそ10年ぐらいで、溶解してしまうだろう。 おそらく中国あたりに吸収されてしまうだろう。 中国はそれを待っている節がある。

 革マル派や市民運動家上がりの民主党左派の連中は、どうやらそれを望んでいるらしい。 21世紀の現在、もはや国民国家は古い概念だ。 これからは国境や民族を超えたグローバルな国造りをするべきだと、本気で思っているらしい。 夫婦単位の社会制度も同様だ。 そんなもの要らないと。 もしかすると婚姻制度そのものも否定しているのかもしれない。 男女の生殖行為の正当化に過ぎないと。 生殖すら要らない。 人口問題は有り余っている中国からの移民で解決すればいいと。 友愛ハトヤマが「日本列島は日本人だけの所有物ではない」と抜かしたのはそういう意味に違いない。

 共通の価値観、社会秩序、法体系などに支えられた国民国家(Nation-State)は古くからあるものではない。 ヨーロッパではフランス革命、産業革命以後、アメリカは南北戦争以降、日本は明治維新以降出来上がった比較的新しい概念だ。 それまで今のような国民国家や国民は地球上に存在しなかった。 王族や領主によって私的に支配されている領土に過ぎなかった。  日本では封建的な幕藩体制で、支配階級である侍にも民衆にも国家、国民意識はなかった。 日本国も存在しなかった、 お隣中国、韓国に至っては、戦後この方、たった50年程度の歴史しかないのだ。

 リベラル左翼の連中は、国民国家はもはや古い概念で、国境を越えたグローバル時代にはそぐわないという。 国民国家は少数民族や先住民族を抑圧するだけの存在だと非難する。 理想論としては一理あるとしても、現実問題として現在の世界は国民国家で構成されている。 大きな国も小さな国も、すべて国民国家という形態で成り立っている。 ソマリアや北朝鮮のような不完全な国でも、一応国民国家の体裁をとっている。 そうしないと弱肉強食の世界情勢では、あっという間に消滅してしまうからだ。 今の世界情勢で、どこの国も国民国家をやめようと言う動きはない。 つい50年前に、まがりなりに国民国家になった中国は、この国家形態維持に懸命である。 そうしないとチベットやウイグルなど、国の半分があっという間に雲散霧消してしまうからだ。 そういう時代に日本だけが理想主義に走って国民国家の枠組みをはずすのは、自殺行為に等しい。

 ヨーロッパはヨーロッパ統合へ梶を切ったが、ギリシャ問題で風前の灯火である。 EUは国民国家からの進歩発展などと言うきれい事ではない。 ドイツを籠に閉じこめて、二度と戦争をさせないようにする政治的思惑に過ぎない。 今のヨーロッパ経済はドイツの一人勝ちである。 なぜかと言えば、ドイツだけが働き者で、他の国は怠け者だからだ。 統一通貨をいいこと、怠け者のギリシャやスペイン、ポルトガルをドイツの金で支えようとするメルケル首相に、ドイツ国民は怒り始めている。 ワイマール体制で押さえつけられたドイツの不満が、ナチスヒトラーで爆発した時代を思い出す。 おそらく後10年でEUは瓦解するだろう。 少なくとも統一通貨ユーロはなくなるだろう。 国民国家の否定は、少なくとも百年は早いのだ。

 国民国家の基軸である参政権は、国民に付与された最重要な基本権である。 外国人向けのサービスではない。 ヨーロッパのいくつかの国は在住外国人に参政権を与えている。 その多くは旧植民地に対する宗主国の贖罪から出たなりゆきだが、大方の国は社会秩序の乱れや経済問題で苦しんでいる。 日本はそういう失敗例をいまさら見習う必要はない。 在日の方々には地方参政権ではなく、帰化してもらって日本国民としての全権利を与えるべきだ。 祖国を失いたくないという方には、残念ながら遠慮してもらうしかない。 その選択権は一方的にあなた方にある。 中国など、その他の国は問題外である。

 そういう世界状況の中で、この3法案はよく言えば理想論、悪く言っても青二才の理想論でしかない。 一昔前の“安保反対”や“全面講和”と同じ、現実を直視しないえせ左翼のたわごとである。 家族は国家社会を形成する最小単位だ。 国家が体とすると、家族はそれを構成する細胞である。 細胞を融解させたら体が崩れる。 夫婦別姓は細胞を守る細胞膜を弱めるのと同じだ。 夫婦関係や家族意識は、愛情や誠意だけで維持できるものではない。 人間の感情はあやふやなものだから、ある程度の制度的縛りが必要だ。 夫婦親子同姓はその重要な一つでである。 今でも離婚率が3割を超えるという。 別姓にしたら家族制度そのものが崩壊するだろう。 その結果、少子化は止めどもなく進むだろう。 社会は弱体化するだろう。

 うちの嫁は二人の子供を育てながら、フルタイムのキャリアウーマンとして頑張っている。 職場では旧姓で通している。 ある時、やむを得ざる急用で職場に電話したら、電話口に出た人が「Gさんなんて方はここにはおりません」と素っ気ない。 しばらくして、「ああTさんのことですね」と話が通じた。 後で嫁に話したら笑っていた。 夫婦同姓が女性の社会進出を妨げるなんて大嘘である。         

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