伝蔵荘日誌
             【伝蔵荘日誌】

2010年6月12日: 自作パソコンが完成した! T.G.

 やっと自作パソコンが完成した。本来なら組み立てからWindowsのインストールまで半日もあれば済む作業に、1週間かかった。途中で水疱瘡にかかった孫の世話(保育園に行けないので、ジジババが子守)に駆り出され、丸2日中断したのが痛かったが、何より苦労したのはパーツのトラブルシューティングである。自作の悲しさ、どの部品が悪いのかなかなか見つけられない。夜中の3時まで、脂汗をかきながら悪戦苦闘したが、結局分からずじまいで、翌日パーツを購入した店に持ち込んだ。なかなか親切な店で、PCクリニック担当者(というのがいるらしい)が調べて、不良部品を突き止めてくれた。それやこれやで、悪戦苦闘の1週間だった。徹夜のデバッグで苦労した昔のプログラマ時代を思い出した。

 パソコン自作は伝蔵荘仲間のS君の影響である。彼が難なく組み立てたと聞いて、それに刺激されて始めた。さしたる高級技術はいらないが、料理と同じで頭と手先を使う。老化防止に効果があるのではないか。これでもかってはコンピュータ会社のプログラマである。パソコンのことはよく知らないが、一般論としてのコンピュータには多少の土地勘はある。さっそく本や雑誌を買い込み、パーツの選び方や作成手順をあれこれ勉強した。本屋のパソコンコーナーにはパソコンの自作本があふれている。さぞ愛好者が多いのだろう。そういうことも知らなかった。そういえば秋葉原の電気街のパソコンショップでは、完成品よりパーツ売り場のほうが広い。

 選択したパーツリストは次のようである。

 CPU: インテルCore-i5-750、
 マザーボード: ギガバイト、GA-P55-USB3
 メモリ: UMAX、2GB×2(計4GB)
 HDD: Western Digital、500GB
 グラフィックボード:Randeon H5450(512MB)
 光学ドライブ: LGスーパーマルチドライブ
 電源: ANTEC 550W
 PCケース: Owltech PC617
 OS: Windows7 Professional(64ビット)

 PC自作なんて、おそらくこれが最初で最後だろうと思い、少し張り込んで最新のCPU、最新のボードにした。Core-iシリーズは、インテル最新のCPUである。マザーボードもそれに合わせた1156ソケットのP55チップ搭載でなければならない。これも新しいUSB3.0端子を搭載したギガバイト製ボードにした。メモリの4GBは我々の時代の超大型スーパーコンピュータをはるかに超えている。これがたったの1万円と言うのは泣けてくる。昔ならメモリだけで数億円はしただろう。時代の流れというか、技術進歩の凄まじさを実感する。

 Windows7は4千円高い64ビットのProfessionalにした。これだと仮想XPマシン、XP Mode機能が使える。メモリも4GB以上アクセスできる。従来の32ビットOSだと、3GBちょっとしか使えない。大きなアプリは動かせない。Windows Vistaと7の泣き所は、従来のXPと互換性がなく、それまで使っていたソフトが動かない点だ。このために7の前のVistaはまったく売れなかった。業務ソフトが動かなければ仕事にならない。パソコンの最大手ユーザである企業が買わない。マイクロソフトの大誤算、大失敗である。こんな馬鹿なことをやっていると、そのうちマイクロソフトは軒が傾くだろう。この互換性問題の切り札がXP Modeだが、普通のユーザーが選ぶ、4000円安いHome Premium Editionでは使えない。それやこれやで、8万円を超える出費になった。これでも同性能レベルのメーカー製パソコンよりはるかに安い。

 朝食を食べ終わって、満を持して自作に取り掛かる。自作はプラモデル作りと同じで、組み立ても楽しみの一つである。ここを楽しまないなら完成品を買ったほうがいい。箱を開けて、パーツを取り出し、一つ一つ確かめる。やはり百聞は一見にしかず。納得がいった後、やおら気合を入れて組み立てにかかる。PC組み立てで最も失敗しやすいのはマザーボードへのCPU取り付けだという。解説書にもくどいほど注意が書いてある。少し乱暴に扱って、数百本ある極小のピンを1本曲げただけで、高価なCPUがオシャカになる。ここを何とか乗り切ったのは昼過ぎ。もう汗だくである。こういう緊張感を味わうのは久しぶりだ。そのあと、マザーボードにメモリを装着し、PCケースにハードディスクや光学ドライブを装着し、マザーボードを取り付ける。そのあと、電源ケーブルや各種の信号ケーブルの配線接続が終わり、目出度く電源投入。いわば開通式である。ピッというモニタ音がして、ファンが回り出し、ランプ類が点灯する。どうやら組み立てはうまく行ったらしい。まずは第一関門突破。一安心である。

 夕食を済ませた後、いよいよマザーボードのBIOS設定とWindowsのインストールにかかる。BIOS設定は難なく終わり、Windowsのインストールに入る。序盤は問題なく進んだが、インストーラがシステムファイルをHDDに展開した後、再起動時にトラブルが起こった。世に言う”死のスクリーン”、ブルースクリーン(BSoD)が画面表示され、先に進まなくなる。何度やり直してもうまく行かない。どうやら組み立ての不手際か、パーツの不具合があるらしい。大いに焦る。夜中の3時ごろまでかかって、もう疲労困憊。諦めて寝る。ベッドに入っても、悔しくてなかなか寝付けない。うとうとしているうちに夜が明けた。

 翌日、朝食もそこそこに、パーツ類を購入したパソコンショップへケースごと持ち込んだ。幸いショップが近いので助かる。ツールも予備のテストマシンも持たない初心者アマチュアには、不良箇所の突き止めは至難の業、と言うか不可能に近い。案に相違して店の対応は親切である。おそらくメモリの相性が悪いのか、ボードか電源のトラブルでしょうという。商売柄、自作トラブルの大体の傾向は分かっているらしい。調べてみるから預けろという。手馴れたものである。小生と同じような”迷える子羊”が大勢いるに違いない。

 4日後、店から電話があった。電源とHDDに問題があるという。いわゆる初期不良である。幸い補償付きの新品を購入していたので、返品して新しい別製品に交換してもらい、持ち帰った。再度組み立て直し、インストールを行う。今度は何のトラブルもなく、あっけなくインストールが終わった。パーツトラブルがなければ、普通はこうなのだろう。途中、孫の世話で2日つぶれたので、これまでに要した日数ははちょうど1週間。なんとも波乱万丈、手に汗握る1週間であった。

 問題の電源はわずか5000円、安売りのAQTIS製である。どうやら品質の良くない不良コンデンサを使っていたらしく、再起動時の突入電流、ラッシュカレントに耐えられず、ダウンを繰り返したらしい。前の日誌(4月10日)に電源とコンデンサが大事なことを自分で書いていたのに、つい安物を買って失敗した。人間痛い目にあわないと、教訓が身に付かないらしい。けちは駄目だ。懲りたので、今度は日本製コンデンサを使った少し高いANTEC製を選んだ。勉強料である。

 新しい高性能Windows7マシンは、さすがに速くて快適である。NECや富士通など、これと同じスペックのメーカー製を買ったら、おそらく20万円以上する。安売りのDELLやACER製でも10万円以上するだろう。しかしながら使い勝手は今のところ古いXPマシンのほうがいい。Windows7は画面表示や操作に何となく違和感がある。慣れの問題ばかりとは言えない。マイクロソフトは新しいWindowsを出すたびに、実用上意味のない見せ掛け機能やデザインを付け加えるので、だんだん図体が大きくなる。重くて使い勝手が悪くなっている。おかしな会社である。こういうことをやっていると、そのうちアップルやグーグルにつぶされるだろう。

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