【伝蔵荘日誌】

2010年5月24日: 日本の凋落 T.G.

 宇宙人ハトヤマ面目躍如のニュースが二つある。

 沖縄タイムスによると、5月4日の沖縄訪問の後、鳩山首相は周囲に「自分はそんなに反対されたとは思わない。 むしろ歓迎されたと思っている」と感触を漏らしたという。 立ち寄る各地で抗議行動が起きていたのを見て、「どこでも、同じ人が集まっていて、沿道でみんな手を振ってくれている。 ほかの県を訪ねたときと比べてそれほど嫌われているとは思えない」と話しているという。 呆れて言葉も出ない。 このエピソードを聞いたさる与党議員は、「宇宙人にもほどがある。 本当に石を投げないと分からないのか」と吐き捨てたという。

 もう一つは、去る20日、首相官邸に宇宙飛行士山崎直子さんの表敬訪問を受けた際の話だ。 有人宇宙船を飛ばしたのはアメリカ、ロシア、中国だけであることに話題が及び、首相は「日本は有人宇宙船の開発をやらないのか?」と山崎飛行士に質問したというのだ。 宇宙開発戦略本部長は首相本人である。 にもかかわらず、まるで他人事のような口ぶりで周囲を慌てさせた。 去年の事業仕分けで、鳴り物入りでGXロケット開発を中止させた張本人が、ぬけぬけとこういう馬鹿げたせりふを吐く。 こういうアホは小学生でも言わない。 山崎さんもさぞ返答に困っただろう。

 独り相撲の普天間迷走で、ハトヤマ総理の宇宙人ぶりにはそれほど驚かなくなったが、このような報道を目にすると、ハトヤマ批判を通り越して日本の行く末が心配になってくる。 思わず目をつむりたくなる。 なんと言ってもハトヤマは日本国の総理大臣だ。 こういうアホに1億2千万人の命運を預けていると思うと空恐ろしくなる。 大はしゃぎして彼を総理の椅子に座らせたのが、ほかならぬ大多数の国民だと言うことに思いを致すと、情けなくて気が遠くなる。

 おそらく宇宙人ハトヤマは、何の疑いもなく、虚心坦懐にそう思ったのだろう。 日本も有人宇宙飛行をやればいいなと。 みんな手を振って歓迎してくれているなと。 宇宙人の真骨頂である。 そんな浅はかな男を相手に、呆れたり、悪口言ったりする前に、なぜ、どうして、誰が、こんな愚かで思慮の足りない人間を総理大臣などにしたのか。 こんなことで日本は大丈夫か、やっていけるのか、と思いを巡らせるのが先決だろう。 “吐き捨てたさる与党議員”は、そんなご託を並べていないで、さっさと首相交代を画策するのが政治家の役目だろう。 オザワ幹事長はかって「担ぐ御輿は軽い方がいい」と放言した。 日本国総理大臣を出来損ないの神輿のように軽々と操る。 そういう政治ブローカーの言いなりになって、捨てぜりふしか吐けない与党の議員どもも、ハトヤマと同レベルの愚かさ(ルーピー)だ。

 日本は民主主義国家である。 独裁国家の北朝鮮や中国とは違う。 馬鹿で愚かな総理大臣は首をすげ替えれば済む。 大した問題ではない。 それより心配なのは日本国民の思考能力と判断力だ。 ハトヤマが金持ちのお坊ちゃんで、政治的経験も定見もない、奇矯な言動を吐くおかしな人物であることは以前から分かっていた。 いいことずくめの民主党マニフェストが、出来もしない、絵に描いた餅であることは、足し算引き算さえ出来れば誰でも分かることだ。 普天間をグアムに追い出すなど、現実問題として不可能なことは少し考えれば誰にでも分かることだ。 それなのに国民の大多数は、マニフェストに踊らされて大喜びで民主党に投票し、宇宙人ハトヤマを総理大臣にした。 彼の言うとおり、普天間などグアムに追い出せばいいと単純に思った。 内閣支持率が当初の70%から10%台に下がったと言うが、おかしいではないか。 日本国民は、どういう心づもりで民主に311議席も与え、どういう判断でその支持をやめたのか。 おそらく何も考えていないのだろう。 ただただ新聞テレビの報道に煽られて、軽佻浮薄に人気投票をしているだけなのだろう。 自民党を下野させたときもまったく同じ構図だった。 日本国民の政治度の低さに絶望する。

 仮に首相の首をすげ替えるとして、もしくは第二の政権交代をするとして、いったいどうするのか。 出来るのか。 日本国民の政治に対する思考能力と判断力欠如はまったく変わらない。 国民の民度や成熟度は一朝一夕には変わるものではない。 鳩山一個人の愚かさより、そのことの方がはるかに恐ろしい。 甘いことずくめのばらまきマニフェストに国民は狂気し、思慮もなく民主に311議席も与えた。 それを見せつけられた政治家達は、与野党問わず、次の選挙でも山のように甘言を吐き、ばらまき合戦に明け暮れるだろう。 愚かな国民は、テレビ新聞の大衆扇動に操られて、何も考えず右に左になびくだろう。 その結果、第二、第三のハトヤマ、オザワが生まれるだけで、何も変わらない。 戦後70年もの長きにわたり、議会制民主主義を経験してきた挙げ句がこのていたらく。 絶望的というか、これはもう日本国が衰退の一過程に入ったと言えるのではないか。 10年前、オーストラリアで江沢民が言ったことは正しかったのではないか。

 評論家の大前研一氏が、「日本企業の新常識「国内採用抑制、海外採用増」」という記事をプレジデントロイターに載せている。 無定見な民主党の高校無償化政策を批判しながら、海外に比べて日本の高校生、大学生が如何に勉強をしないか、学生の質が落ちているかを憂える内容である。  それによれば、大手電機メーカーパナソニック社の来年春の採用予定は、国内外合わせて前年比1割増の1390人。 しかし国内採用は210人減のわずか290人。 一方の海外採用は47%増の1100人と過去最多で、新卒採用に占める海外採用の比率は約8割まで上昇するのだという。 国内採用を抑制して、海外採用を増やしている日本企業はパナソニックだけではない。いわゆるグローバル企業と呼ばれるところは皆、同じようなことをやっている。 今の日本の大学の質の悪い卒業生を率先して採用していたら、会社は間違いなく滅びるからだと言う。 そういえば、昔勤めていた会社でも同じようなことを言っていた。

 日本の高校生は1日平均1時間しか家庭で学習しないが、韓国の高校生は9時間するという。 その結果、ハーバード大への今年の留学生は、韓国人200人、中国人は300人いるのに、日本人はわずか一人だという。 かつてアジア代表のように留学生を送り込んできた日本は一体どうしてしまったのか、とハーバード大学の学長が心配しているという。 海外の大学はどうでもいいが、今時ハーバードに受かる学力のある高校生が、日本には皆無に等しいことが問題だ。 日本の大学はほぼ全入、うち約50%が推薦による無試験入学である。 その上高校無償化とくれば、勉強もろくにしない生徒ばかりになる。 今頃の大学工学部は、高校レベルの数学、理科をもう一度やり直さないと、授業にならないという。 授業の前に高校の補習をするのだという。 そういえば、工学部を出たのに二次方程式の根の公式が書けない連中がごろごろいると、知り合いのIT企業の採用担当が嘆いていた。 工学部がこうなら、理学部も法学部も経済学部も似たようなものに違いない。

 おんぶにダッコで甘やかされた日本の学生は、勉強しないで大学に入り、勉強しないで卒業する。 日本の大学のレジャーランド化は以前から言われていた。 そんな学生は使い物にならないから、企業も採用しない。 中国や韓国やインドから、勉強に励んだ質のいい人材を採用する。 その結果、ただでさえ少ない企業の採用枠がさらに狭まる。 就職氷河期は経済低迷だけが原因ではない。 親の甘やかしはもとより、文科省のゆとり教育や民主党の高校無償化法案は、質の悪い馬鹿学生を増やすだけの愚民化政策なのだ。 国家百年の計にはほど遠い。 日本経済衰退の傾向は、日本の教育政策の貧困がもたらしている。 政治の貧困も、よって来たる原因は同じだ。 日本人全体が愚民化しているのだ。 宇宙人総理はその副産物に過ぎない。 日本人をもう一度鍛え直すには、それこそ百年はかかる。 後は任せた。 その前にグッドバイだ。
    

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