【伝蔵荘日誌】

2010年4月17日: ルーピー鳩山 T.G.

 15日付のワシントンポスト紙が、我らがハトヤマ総理を“哀れでいかれた日本の首相”と報じたことが話題になっている。 原文は“ルーピーハトヤマ”だ。 ルーピー(Loopy)は字引で引くと、“変わった”、“狂った”、“馬鹿な”という意味の嘲り語である。 “トラストミー”以来、オバマやアメリカ政府から信用を失った鳩山首相が、ワシントンで各国首脳が一堂に会して行われた核安全サミットでもまったく相手にされず、やっとの事で夕食会でオバマの隣に座らせてもらい、10分間だけ話させてもらったことをからかっている記事である。  それに比べて胡錦涛主席は1時間半にも及ぶオバマ大統領との首脳会談を行い、最大の勝者とヨイショしている。

 それに対し、支持率低下にあえぐ民主党の平野官房長官が、「一国の首脳に対し、いささか失礼」と“不快感”を示した。 総理大臣といえば日本の最高指導者。 いくらへなちょこ総理でも、他国の新聞にこうも悪し様に言われると腹が立つ。 オバマがナンボのもんだと言い返したくなる。 もう少ししゃんとしろと、ハトヤマボッチャンをどやしつけたくなる。 でもね、よその国の新聞に腹を立てても仕方がないよ。 日本の新聞だって同じようなことをやってるじゃないか。 オバマの前のブッシュのことをバカ大統領とかぼろくそに言ったし、金正日や女好きのイタリアのベルルスコーニのことを同じように馬鹿にした報道しているではないか。 人様のことを言えた義理ではない。

 日本語の“信じる”に対応する英語には“Believe”と“Trust”がある。 日本人は同じような意味に使っているが、英語が母国語の人たちは違うニュアンスだという。 神や奇跡を信じるのが“Believe”であり、友人との約束やお医者さんの腕を信じるのが“Trust”だ。 前者は信仰に近い感覚で、後者は契約に近いニュアンスだ。 アメリカの1ドル紙幣には、“In God we trust”と書いてある。 文脈からすればTrustではなくBelieveのほうが正しいのだろうが、紙幣は経済行為の基本だから、「神にかけて信じる」のではなく、「信頼する」なのだろう。 「結果がどうあれあなたのことを信じます」がBelieveであり、「約束や契約を裏切らないから信じてくれ」がTrustなのだ。 鳩山首相があのときトラストミーではなく、“ビリーブミー”と言っておれば、これほど普天間問題がこじれることは無かったかもしれない。 英語下手なくせに、無理して、カッコつけて英語を使うからこういうことになる。 前にも言ったが、もういい加減バカはおやめなさいよ、ボクちゃん!

 それはともかく、ハトヤマと民主党政権の馬鹿さ加減、迷走ぶりにはほとほと愛想が尽きる。 戦後最悪の総理大臣と言ってもいい。 多くの国民もそう思っているらしく、70%もあった支持率が30%を切った。 こうなることは分かっていただろうに、今頃しまったと思っても遅いよ。 民主に投票したノー天気国民諸君!

 大借金してまでの子供手当ばらまき、頼んでもいない外国人参政権、ちゃぶ台ひっくり返しの暫定税率維持、子供だましの事業仕分け、無料化ならぬ高速道路値上げなど、愚行の種は尽きないが、究極のアホ政策は普天間だろう。

   普天間問題はすべからく日本国の安全保障問題なのだ。 そこんところを度外視して、何の対策も講じないまま、県外移設などと出来もしないことを公約に掲げたのがそもそもの間違いだ。 あとはやることなすことすべてうまくいかず、挙げ句の果てがトラストミー。 ワシントンポストならずともバカ呼ばわりしたくなる。 沖縄の人たちにしてみれば、米軍基地の県外移設は昔からの念願である。 辺野古移設でしぶしぶ諦めかかっていたところへ、バカ総理が「友愛精神で沖縄の人たちに思いをいたし、県外移設に命をかける」と言い出した。 夢が叶ったかともう大喜び。 その結果、沖縄の人たちは民主、国民新党にすべての議席を与えた。 気持ちは分かる。 寝た子を起こしてしまったのだから、もう沖縄に人たちは後へは引かないだろう。

 戦後70年近く経つのに、国土に他国の巨大軍事基地がどっかり居座っているのは、沖縄の人たちならずとも腹立たしい。 不愉快きわまる。 早く出ていってくれと願う気持ちは同じだ。 しかしそのためには、少なくとも二つの要件がある。 日本国の自主独立と、それに必要な時間だ。 自主独立は、戦後の長きにわたった日米関係を根本的に改め、経済と軍事に関するアメリカ依存から脱却することである。 それに必要不可欠なのは、軍事独立。 すなわち自主防衛体制の確立だ。 そのためにはアメリカとの根気の要る交渉、国民意志の統合、防衛予算と戦力の確保など、難しい問題が山積している。 特に困難なのは憲法改正である。 改正しなければ国軍は持てない。 戦後GHQのマッカーサー司令官は、日本国憲法を与える際、意図して3分の2条項を盛り込んだ。 改正には国会議員の3分の2の賛成が必要と言う96条である。 多様な意見を認める民主主義国家では、不可能と同義の数字である。 憲法は改正させないと言っているのと同じだ。 日本を縛り付けておくためのアメリカの悪巧み、陰謀である。 日本国民の意識は変わってきているが、依然として護憲意識は強い。 3分の2条項がある限り、困難であることに変わりない。 どんなにあがいても、少なくとも後10年はかかるだろう。

 ハトヤマがいつまでたってもバカ殿様ぶりを発揮しているうちに、あれは彼一流の演技、深慮遠謀なのではないかという、うがった見方が出てきた。 Webの裏ジャーナリズムあたりが盛んに書き立てている。 朝日、読売など表マスコミは書かない。 それによると、ハトヤマがトラストミーなどとへらへら言い続けているのは、挑発されて頭に来たオバマの方から日米安保解消を言い出させるための高等戦術なのだという。 民主にとって、念願である東アジア共同体実現に日米安保は邪魔者だ。 ない方がいい。 でも日本側から解消を持ちかけたら、その代償に何をふんだくられるか分からない。 少なくとも日本が保有している600兆円の米国債はチャラにされるだろう。 そうさせないために、志村けんまがいのバカ殿様を演じているのだという。 もしそうだとしたら、ハトヤマは大した役者、歴史に残る大総理だ。

 金融大混乱とイラク、アフガンで疲れ切ったアメリカは、極東の軍事力を維持できなくなっている。 対中国戦略の変化で必要性も薄れてきている。 韓国や沖縄の基地の、グアム、サイパンへの後退は、もはや時間の問題だ。 空洞化してきた日米安保解消は、日米両政権にとって同床異夢。 さあチェンジのオバマと友愛ハトヤマのどちらが先に言い出すか。

 日米安保解消は、アメリカにとっては金の切れ目は縁の切れ目、中国との仲良しごっこで済むが、日本はそうはいかない。 もしハトヤマにそういう魂胆があるなら、時間をかけて周到な準備をしなければ駄目だ。 準備もなしにいきなりトラストミーなどとアメリカの大統領をおちょくるのは大間違い。 危険すぎる。 時間をかけてアメリカ依存の経済体質を改め、憲法を改正し、自主国防体制を築いてから持ち出す必要がある。 同じ敗戦国のドイツはそうしている。 どう見てもハトヤマと今の政権与党の連中には、その志と戦略があるようには見えない。 普天間の県外移設など、思いつきの口から出任せとしか思えない。

 沖縄の人たちにも言いたい。 将来日本が他国に侵攻されるとしたら、基地があろうと無かろうと、最初に攻撃を受けるのは必ず沖縄だ。 好むと好まざるとに関わらず、沖縄は地政学的にそういう位置にある。 そのことは70年前の戦争で身に浸みているはずだ。 仮に日米安保が解消され、米軍がグアムに全面撤退したとしても、日本の国防が不要になるわけではない。 むしろ拡大されるだろう。 その際、本土にだけ自衛隊の基地を置き、沖縄には置かない、などと言うことはあり得ない。 むしろ米軍基地に代わる重要拠点が置かれるはずだ。 アメリカが去った後の、近未来の仮想敵国は、中国、韓国、北朝鮮である。 軍事大国の彼らと対峙するには、沖縄の地政学的重要性は今以上になる。 おそらく今の普天間より大規模な軍事基地が必要になるだろう。 なぜなら日本国軍には第7艦隊も原子力潜水艦も核ミサイルもないのだから。

 もう一つ、これは全日本人にも。 仲良し中国や韓国、北朝鮮が攻めてくるはずがないなんて、ミズホじゃあるまいし、世間知らずのおぼこ娘みたいなこと言うのは、いい加減やめにしようね。 今でも竹島は事実上の韓国領土にされてしまったし、尖閣列島は中国に実効支配されている。 国家間の信頼関係なんて、長続きした試しはない。 ましてや巨大軍事力を持っている相手とは。 それが国際政治というものです。

【追記】この日誌を書いた後、今朝の朝刊を見たら、「政府が辺野古案をアメリカ側に提示」と言うニュースが1面トップに載っている。 堂々巡りした挙げ句に、元のところ(自民政府が作った現行案)に戻ったわけだ。 いい年した大人が、雁首そろえてママゴト遊びををやっている。 馬鹿馬鹿しくて批判する気も起こらん!      

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