2010年3月28日: 友人A君のにわかヒマラヤ熱 T.G. ![]() (写真はエベレストと世界第5の高峰ローツェ) 月初めに、もう一人の同期入社の友人O君を入れて3人で伝蔵荘へ行った。 スキーから帰って夕食の時、普段はあまり飲まないA君が珍しく一人でワインをボトル半分空けてしまい、酔いが回ってはやばやと寝てしまった。 夜中、布団の中で目が覚めると、暖炉のあたりで物音がする。 そのまま寝入ってしまったが、朝目が覚めると、すでに起きていたA君がいきなり「エベレストを見に行くことにしたぞ」と言う。 どうやら早く寝てしまったので、夜中に目が覚めてしまい、仕方なく起き出して暖炉に薪を足し、本を読んでいたのだという。 その中の誰かが本棚に置いていった「還暦のエベレスト」という本に触発されたらしい。 小生の熱弁より、60過ぎの年寄りが書いたヒマラヤ紀行文の方が説得力があったということだ。 反省! ![]() (写真はシャンボチェの飛行場の滑走路) 7000m以上のピーク登頂を目指すヒマラヤ登山と山麓トレッキングは別物である。 ヒマラヤ登山は体力気力のほか、一定水準以上の経験と氷雪技術、クライミング技術、然るべき装備が要る。 標高が高いので高山病対策も一段と難しくなる。 よほどの資質と体力がないと、酸素ボンベに頼らなければ登れない。 それに引き替え、トレッキングははるかに容易である。 特別な装備も訓練も経験も要らない。 道はしっかりしているし、荷物は全部ポーターが運んでくれる。 おんぶにだっこの大名旅行である。 高尾山に(ケーブルカーを使わずに)自力で登れる程度の脚力があれば誰でも出来る。 付け加えるなら、野外での排便が苦にならず、寒さと粗衣粗食に耐えられる神経があればなおさらよい。 ヒマラヤには公衆トイレはないし、風呂にも入れない。 現地ポーターが作る食事もロッジのベッドも粗末だ。 それでもヒマラヤ、標高3000mを越えると誰でも軽い高山病症状は出る。 症状に個人差はあるが、せいぜい5000m以下の“低地”を歩くトレッキングではそれほど問題ではない。 ゆっくり歩いて、時間をかけて高所順応すれば、軽い頭痛、食欲不振、寝付きの悪さ程度で済む。 最も有名なエベレスト街道には毎年2万人以上のトレッカーが訪れるが、高山病による死者は東京の交通事故死のパーセンテージよりはるかに少ない。 ![]() (写真はエベレストビューホテルからのエベレスト、ローツェ、アマダブラム) 金はともかくとして、ヘリプランのもう一つの問題は高山病である。 標高1000mのカトマンズから一気に3000m近く上がったら、高山病はまず避けられない。 アルプスのユングフラウヨッホや富士山も同じ程度の高さだが、すぐに下山するので問題ない。 一時的に軽いめまいや息切れを感じる程度で済む。 しかしこの高さで一晩以上過ごしたらそうはいかない。 確実に高山病になる。 苦しくてエベレスト見物どころではなくなる。 体調が悪ければ下手をすると命を落とすこともある。 これを避けるには時間をかけて高所順応するしかない。 普通のやり方はカトマンズから標高2800mのルクラまで小型コミューター機で行き、そこから歩き始める。 いったん300m下がって標高2500mの谷底のパクディンで1泊し、翌日3400mのムチェバザールまで登る。 ここでさらに一泊(出来れば二泊)し、高所順応に時間をかける。 翌日ここからさらに500m登って3900mのエベレストビューホテル着と言うのが最も一般的な方法だ。 というわけで、いくら金持ちでもエベレストを見るには少なくとも3日、自分の足で歩かなければならない。 ヒマラヤでは高山病を避けるために1日に標高差500m以上登るべきではないといわれている。 二日目のナムチェバザールへの標高差600mの登りはきつい。 経験者なら分かるが、富士山の6合目から頂上までの苦しさと同じである。 富士山と違うのは、到着後も高い場所に居続けなくてはならないことだ。 少しでも楽にしようと思ったら、日頃のトレーニングが大事だ。 A君には日常的に歩くこととスクワットを薦めた。 今日の彼のブログを見ると、アドバイスに従って励行しているらしい。 こりゃ本物だ。 彼からは4月になったら賛同者を集めるから、ヒマラヤトレッキング講演会をやってくれとと頼まれている。 ぜひ誰でも思わず行きたくなるような魅力的な話をしょう。 |