【伝蔵荘日誌】

2010年3月1日: オリンピックの偽善 T.G.

 毎度のことだが、やっとオリンピックが終わってほっとする。 ニュースを見たいとテレビを点けても、どの局もオリンピック一色。 それも飽きもせずフィギュアスケートの同じ場面を繰り返す。 日本人はなぜこんなマイナースポーツが好きなのだろう。 冬季オリンピックの華はなんと言ってもアルペンとノルディック競技ではないか。 しかし日本のテレビではほとんど放映されない。 おそらく80%がスケート、それもフィギュアスケートだ。 閉会式のライブ番組でも、馬鹿の一つ覚えのように見飽きたシーンを放映している。 もういい加減してくれ!

 世界レベルのアスリートたちが、極限の技と身体能力をを競い合うオリンピックがつまらぬはずがない。 夏なら陸上と水泳、冬ならアルペン、ノルディックに尽きる。 個人的には夏の水泳、冬のアルペン競技が好きだ。 日本選手がいなくても、見ているだけで楽しい。 水泳は特に長距離。 短距離は力任せに泳ぐが、長距離だと無駄がない効率のよい泳ぎをする。 1500mフリースタイルの流れるような美しいクロールは見ていて飽きない。 自分もああいう風に泳げたらさぞ気持ちいいだろうと、いつも感心しながら見ている。

 冬のアルペン。 百分の一秒を争う男子の滑降も迫力満点だが、女子の回転競技がいい。 ポニーテールにヘルメットの引き締まったスタイルが精悍で、みんな美女に見える。 実際ゴールにたどり着いてゴーグルを外した顔を見ても、例外なく可愛い。 これらの競技はとにかく速ければいい。 転ぼうとこけようと、先にゴールにたどり着いた選手が勝ち。 スポーツ競技はこうでなくてはいけない。 実際は転んだりこけたりは論外で、ちょっとでもコース取りを間違えたらまったくタイムにならない、極限のスピード競技ではあるが。 こういうメジャー種目を中心に放映してくれればオリンピックも面白いのだが、日本のテレビはフィギュアスケートにしか目がない。 視聴率を稼げるからだろうが、オリンピックをつまらなくしている。

 そのフィギュアの採点が物議を醸している。 韓国のキムヨナ選手が史上最高点で金メダルを獲得したのはインチキだと日本の2チャンネルが書き立てた。 対する韓国のマスコミは、浅田真央選手の銀はおかしい、せいぜい4位がいいところと非難合戦になった。 騒ぎが高じて、2チャンネルが昨日からアクセス出来なくなっている。 韓国のネチズンたちが、独立記念日の3月1日を期して一斉にサイバー攻撃を仕掛けていると朝鮮日報が報じている。 11万人のネチズンが2チャンネルに対し“F5アタック”を繰り返しているのだという。  勝てば官軍、もうすこし鷹揚に構えていればいいものを、憎っくき日帝に少しからかわれただけで激高する。 11万人もの若い男女が、一晩中パソコンの前に座り込んで、ひたすらF5キーをたたき続けている姿を想像すると空恐ろしくもある。 これほど激情的で粘液質の民族が、なぜ100年前に、まだ弱小後進国に過ぎなかった日本に、さしたる抵抗もせず、あっさり併合を許したのか不思議でならない。 おそらくメリットを計算した上での、納得ずくの併合だったに違いない。 (こんなことを言うとF5アタックを受けるかな)

 そもそもはフィギュアの採点方法がおかしいのだ。 スポーツ競技なのに、美しさとか優美さとか、もっぱら個人の主観による採点基準に重点が置かれる。 報道に依れば、衣装や音楽や振り付けまで採点に影響するのだという。 浅田真生が三回転を連発しても点数にはならず、キムヨナの身のこなしの優美さや選曲の巧みさが高得点を得る。 なんでも、キムヨナが最後を007の曲に合わせてピストル射撃の姿勢で締めくくったのが良かったのだとか。 これではとてもスポーツ競技とは言えない。 単なるアイスショーに過ぎない。

 結果論としてキムヨナ選手に有利に働いたこういう採点基準は、オリンピック直前になって明らかにされた。 審査員には韓国人が含まれている。 2チャンネルが騒ぎ立てたように、事前にキムヨナ選手には伝えられてたと言う噂もあながち否定できない。 これでは日本や韓国以外の選手は対応のしようがない。 採点基準を変えるなら、少なくとも4年前に公表しておくべきだ。 至難の4回転ジャンプを飛んだのに金メダルを取れなかったロシアのプルシェンコは、「もはやアイスダンスだ」と悪態をついた。 気持ちは痛いほど分かる。 ちなみにキムヨナ選手はカナダ人コーチについて、この4年間ほとんど韓国には帰らず、もっぱらカナダで過ごしていたという。 実質的には開催国カナダの選手と言っていい。

 もう審査員の胸先三寸でどうにでもなる、こういうおかしな競技に入れ込むのはやめにしよう。 真央ちゃんのような可愛い女の子ならご愛嬌だが、いい歳をした男の選手が、人前でしなを作って審査員に媚びを売るような種目は、とてもスポーツとは言えない。 見ていて目を塞ぎたくなる。 日本人にはメダルが遠くても、やはりオリンピックは滑降、大回転、ジャンプ、ノルディックで行こう。 これらの種目は、一年中練習が可能な氷雪の山を持つヨーロッパやアメリカ、カナダが有利である。 そういう環境がない日本や韓国に不利なのは確かだが、スポーツには王道というものがある。 隙間種目でメダルを取っても仕方がない。 転ぼうとこけようと、速いほうが勝ち。 それがスポーツの醍醐味だ。 メダルに手が届かなくても、出場すればそれで十分。 希望もある。 かってはアルペン、ジャンプ、ノルディックでメダルをいくつも取ったではないか。

 今回、日本のメダル数は銀銅合わせてたったの5個。 それに対し韓国は6個の金を含めて計14個、世界第5位。 日韓オリンピック競争はぶっちぎりで韓国の勝ちだ。 日本ではそのことを憂慮する発言が多い。 しかしそんなことでいちいち血相変える必要はない。 先進大国なのだから国を挙げてのメダル獲得競争などしなくていい。  おっとり構えてオリンピックを楽しめばいい。 その韓国のメダルはすべてスケート競技。 国家の威信をかけてスケート競技だけに入れ込んだ。 アルペンもノルディックも一切無視して。 韓国ではメダルを取ると報奨金のほかに月8万円の終身年金がもらえるらしい。 20歳の若者が70まで生きるとして、総額約5000万円。 物価水準を考えると日本の数億円に当たる。 その上兵役が免除される。 いつ北朝鮮が攻めてくるか分からぬ韓国の若者たちにとって、兵役免除は金以上の価値がある。 人参を目の前にぶら下げるこういう強化策は、オリンピックに強かったかっての東ドイツに似ている。 先進大国日本はそんなことまでしてメダルを増やす必要はない。 引かれ者の小唄と言われそうだが。                

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