【伝蔵荘日誌】

2009年12月14日: 日本の政治の憂鬱 T.G.

 多くの日本国民は、官僚傀儡の自民党政権のくびきから逃れて、やっと政権交代という夜明けが来たと喜んだ。 内閣支持率を見るといまだに喜んでいる節がある。 あれから3ヶ月。 今の民主党政権が次々に繰り出すおかしな政治を見ていると、前より暗い夜が来やしないかと気が滅入る。 経済縮小、少子化、高齢化の日本社会は、やがてやってくる暗い夜を抜け出す気力が失せているに違いない。 以下は年寄りの愚痴である。

 知り合いのソフト会社の社長は、内部留保に廻した(つもりの)利益が脱税に当たると国税局に指摘された。 「見解の相違」と争ったが、聞き入れられず懲役2年の有罪判決を受けた。 社長が言うには、“脱税額”が3億円以下だったのでなんとか執行猶予が付いたという。 以後履歴書には前科を書かねばならない。

 鳩山首相が母親から受け取った巨額の“子供手当”は立派な贈与である。 秘書がやったことで知らなかった、では済まない。 贈与ではなく、無申告の違法政治献金と言うなら、政治資金規正法では秘書共々罪一等を与えられ、公民権停止、議員辞職の筈である。 贈与なら、贈与税を10年間も払わなかったのは立派な脱税だ。 脱税額が5億を超えるので、懲役2年の実刑は固い。 総理大臣といえど、法は平等に適用されねばならない。 日本は法治国なのだ。 それなのに、そのことを糾弾するマスコミも知識人もいない。 愚かな国民は気にもかけない。

 これだけ景気低迷、デフレ進行が続き、日本経済の未曾有の危機だというのに、今の政権には経済政策がまるでない。 ボーナスが下がったのも格差が広がったのも、前の政権が悪いからだと他人事である。 彼らのマニフェストを読むと、日本の競争力を回復させ、経済成長に導く政策は何一つ書かれていない。 返済猶予法案や環境税など、銀行や企業を痛めつけるようなことばかりやる。 挙げ句に最低賃金を千円に上げ、派遣禁止だという。 その結果、失業が増え、企業、個人とも収入が減り、税収が落ち込み続けている。 回復の兆しはまるでない。 いったい民主党の連中は日本をどうするつもりなのだろう。

 彼らの謳い文句だった官僚政治の排除は何処へ行ったのだ。 事務次官会議をやめさせるとか、これ見よがしの事業仕分けとか、皮相的なことばかりで実質的なことは何もしていない。 政治は演技ではなく結果である。 日本郵政は社長以下、絵に描いたような天下り人事だし、独立行政法人の整理統合、天下り禁止は投げてしまった。 行政改革の取り組み姿勢は自民党以下である。 役人天下はますます隆盛。 彼らの支持率の元は官僚政治打破にあった。 国民はそれを期待して311議席も与えた。 背信行為の最たるものだ。 これだけで内閣が倒れて然るべきなのに、いまだに内閣支持率56%だと言う。 日本国民の政治オンチは度を超している。

 税収が激減しているのに、亀井とか言うおかしな大臣が、前年度の自民党予算102兆円を下回らせないと豪語している。 誰も反対しないから国債発行額が50兆円を越えるのは避けられない。 税収が奇跡的に回復することなどあり得ないから、来年も再来年も同じことが続く。 10年続けたら500兆円。 今のと合わせて国家債務は千兆円を超える。 はたして日本経済はやっていけるのだろうか?  個人の金融資産が1400兆円あるから問題ないと呑気なことを言う連中もいるが、それなら20年先はどうなのか。 中国のように経済成長率が10%近くにでも回復しない限りどうにもならない。 そんなこと、今のご時世あり得ない話だ それでも自民党はプライマリーバランスをとりあえずの政策目標に掲げていた。 民主党政権では死語である。 彼らは日本の財政をどうするつもりなのだろう。 行き着く先を想像すると、空恐ろしくなる。

 小沢幹事長の中国傾斜は目に余る。 子分の議員160人も引き連れて中国詣で。 胡錦涛と記念写真取らせてもらって喜んでいる。 胡錦涛を真ん中に置いた総勢160人の記念写真は奇観である。 世界中に配信されたが、おそらくアホではないかと思われているだろう。 少なくとも奇妙キテレツ、おかしな国だと思われているだろう。

 いったい小沢の了見はどこにあるのか。 自分の権勢誇示だという説、アメリカ従属に対する牽制だという説、中国様々という説、いろいろあるが、どれも当たっているだろう。 かって準備もなしに、これほど単純であからさまな外交を行った国はない。 松岡外相が席を蹴って国連脱退したときも、アメリカがソ連と袂を分かって中国に擦り寄ったときも、イラクに攻め入ったときも、それなりの準備と見通しと時間経過があった。 それが政権交代したらいきなりである。 さぞ胡錦涛もびっくりしただろう。 それはさておいても、彼はこれからの日本外交をどうするつもりなのだろう。 アメリカ牽制はいいが、その先の手順を考えているのだろうか。 アメリカと離れて中国と上手くやっていく自信はあるのだろうか。 彼の言動からは何も見えてこない。 行き当たりばったりの綱渡り外交。 どちらも駄目だと、それこそ日本はお終いだ。

 天皇制は理性でなくエモーションである。 “天皇制”という言葉は戦前はなかった。 思想侵略を狙うコミンテルンの造語で、戦後その配下の日教組とマスコミが広めた。 戦前はただの“天皇様”だった。 天皇は良くも悪くも日本国のエッセンスで、天皇がいなかったら日本は求心力を失い、たちどころに瓦解する。 日本人に対する天皇の影響は絶大で、右も左も利用したがる。 しかし天皇を政治利用するとろくなことが起きないことは歴史が証明している。 それに懲りて、戦後は天皇の政治利用を憲法で固く禁じた。 自民党保守政権ではよく守られてきたが、革新政権たる小沢と鳩山が壊そうとしている。

 鳩山は、「日本にとって中国は最重要な国だから、ルールを曲げて副主席を天皇に合わせろ」と言う。 政治利用の最たるものだ。 さすがに方々から批判が出たが、首相は昨日の記者会見で「日中関係を発展させるために大きな意味がある。判断は間違っていない」と正当性を強調した。 “天皇の政治利用”が正しいとは、日本国憲法下にある総理大臣が言うことだろうか。

 小沢は「憲法に天皇の国事は内閣の助言によると書いてある。 憲法違反ではない」と強弁した。 ここで言う“助言”とは国事行為についてであり、好き勝手に天皇に指示することではない。 これでは軍の統帥権は天皇にあって内閣にはないと、憲法の趣旨を自分らに都合良くねじ曲げた戦前の軍部と同じである。 その結果が先の無謀な戦争と敗戦である。 天皇の扱いをうっかり誤ると、大袈裟ではなく日本国が滅びる。 70年前の教訓を忘れたのか! このバカ男は!

 鳩山と、特に小沢は、外国人参政権にご執心である。 中国や韓国まで出掛けて行って請け合っている。 その政策の是非を日本国民に問うたことは一度もない。 マニフェストの記述も選挙前に消した。 この政策は革新政党や公明党まで賛同しているから、間もなく実現しそうだ。 本来の趣旨は在日朝鮮人の処遇である。 戦前の植民地支配に対する贖罪から出ている。 そこまでは認めたとしても、昨今の状況では意味を失っている。 在日の人口はどんどん減っているが、ほかの外国人は増えている。 ほとんどが違法滞在を含めた中国人で、すでに在日数より多い。 肝心の参政権は中国人に与えるに等しい。 本末転倒である。

 そもそも外国人に無条件に参政権を与えている国などない。 EU域内にはいくつかの例があるが、ほぼ政治条件が整った民主主義国家間の話。 それも互恵が絶対条件である。 韓国はともかく、中国、北朝鮮はその条件から甚だしく逸脱している。 仮に在日中国人に地方参政権を与えたとして、中国が日本に対して同じことをするはずがない。 あの国にはそもそも一般的参政権は存在しないのだ。 在日という日本だけの特殊事情までは認めるとして、増え続ける中国人に地方参政権を与えてどうするのか。 いったい民主党はこの先日本をどういう国にするつもりなのだろうか。 国の司をどう考えているのだろうか。

 在日の方々への償いならば、日本への帰化を奨めるのが本筋ではないか。 日本人としてすべての権利を付与するべきではないか。 今でも在日の方々には、望めばほぼ無条件で日本国籍が与えられる。 それをさらに奨励すればいい。 在日の方々の心情は分からないでもないが、中途半端に参政権を与えて、二重国籍まがいの状況を固定化するのは誤りではないか。 批判を覚悟で言えば、今の在日の方々に祖国はない。 母国から国民として扱われていない。 北朝鮮など鳴り物入りで帰国事業をやったら、ひどい迫害差別を受けて地獄を味わされた。 もう帰る人などいない。 程度の差こそあれ、南朝鮮も同じだ。 兵役にも就かず税金も納めず、豊かな日本でのうのうと暮らしていると白い目で見られている。 こんな中途半端な身分を国をあげて固定化しようとする。 時代錯誤も甚だしい。 いつまでたっても戦後は終わらない。 もう70年も経った。 あと30年で1世紀。 それでも戦後というのだろうか。

 どうやら鳩山も小沢も、在日米軍をなくしたいらしい。 早めにグアム以東へ追い出したいらしい。 それはそれで立派な政治判断、一幅の絵ではある。 しかしそのためには周到な準備がいる。 70年前、グアム、サイパンを絶対国防圏と呼んだ。 ここより内側に敵対勢力を入れたら、日本はお終いという意味である。 その状況は今も変わりない。 北朝鮮を除き、今はアメリカはもとより、中国、韓国とも表向き争いごとはない。 彼らは今のところ敵対勢力ではない。 しかしいつまでそうなのか、誰も保証出来ない。

 支那事変前まで、日本の近くにあからさまな敵対勢力はいなかった。 その10年後は敵ばかりになった。 原因は石油食料など資源争いだ。 資源争いの激しさは昔以上である。 安保と在日米軍はそうなったときの保険である。 多少鬱陶しくてもいてもらわねば困る。 沖縄県民の不満ぐらいで追い出すわけにはいかない。 もし出ていってもらうなら、それなりの準備と覚悟がいる。 絶対国防圏の防衛は自分でする必要がある。 鳩山や小沢の口からそう言う話が出たことがない。 ただ出て行けと言う。 「日本に攻めてくる国などない」と、非武装中立の社民党に同調している。 おおむね国民もそう思っている。 ただの妄想でないとすれば、魂胆が恐ろしい。

 いったいこの支持率だけは高い政党は、日本をどこへ連れて行くつもりなのだろうか。 この政権は少なくとも後4年以上続く。 20年後を想像するのが恐ろしい。 その頃は自分は生きていないから、くよくよ取り越し苦労する必要はないが、子供や孫達がみじめな目に遭わされるのが気懸かりだ。 60年前の我々のように。 年寄りの愚痴です。

                             

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