２００９年６月１２日： 鳩山総務大臣の辞任 Ｔ．Ｇ．
かねて日本郵政西川社長の退任を求めて自民党執行部と対立していた鳩山総務大臣が辞任した。 麻生首相が罷免する直前、鳩山氏の方から辞表を出したという。 実質的な罷免である。 鳩山邦夫氏は麻生首相誕生の最大の功労者である。 軽すぎて総理にはなれないと言われていた麻生太郎を、過去３度の総裁選で支え続けた。 にもかかわらず、一民間企業の社長の首と天秤にかけた上で、最終的に西川を選んだ麻生首相の決断は異常としか言えない。 財界や小泉元首相が支持していると言うが、西川氏程度の経営者はほかにいくらでもいる。 余人をもって代え難い訳でもない。 今回のことに限っては、どう見ても鳩山氏の主張に筋が通っている。 それでも見捨てざるを得なかった。 言うに言われぬ裏事情があるのだろう。 総選挙間近なこの時期にこんなおかしなことをすれば、ただでさえ支持率の低い麻生内閣にとって、さらには自民党自体にとって、致命的打撃になるのは馬鹿でも分かる。 国民は民営化された日本郵政の中で、おかしな利権収奪が頻発していることを知り始めている。 これを正そうとした鳩山氏の言動に、多くの国民が喝采を送っている。 おそらく今度の辞任劇のいかがわしさが、さらに自民党の支持率を下げ、自民党政権に引導を渡したに違いない。 それが分かりながら、麻生首相が、いや自民党そのものが、政権政党の座を捨ててまであえて西川氏を守らざるを得なかった裏事情とはいったい何なのか？ 麻生！ 説明してみろ！
西川善文氏は元住友銀行の頭取である。 ９０年代はじめ、住友銀行には安宅産業、平和相互銀行、イトマンなど巨額の不良債権が滞積し、経営が危うくなっていた。 当時西川氏は専務として巨額不良債権処理の陣頭指揮をとり、辣腕をふるった。 特にイトマンは許永中など怪しげなフィクサーが暗躍し、普通の銀行員の尋常なやりかたではどうにもならない。 これを処理する過程で西川氏は闇世界と深く関わったと言われている。 闇社会は利益供与とバーターで表社会では不可能な荒仕事を引き受ける。 麻薬と同じで、一度闇社会とつながりをもったら永久に断ち切れない。 ９７年、西川氏が頭取に就任したとき、世間はこんなダーティな仕事師でも大銀行の頭取になれるのかと驚いた。 そう言う人物である。 今回の麻生首相のあまりにも異様なやり方を見ると、このことが大いに影響しているとしか思えない。 そうでないと説明がつかない。 西川氏の隠然たる力、社会的影響力の根源は、今も昔も変わらないなのだろう。 かんぽの宿や障害者団体向けの郵便料金割引制度悪用など、おかしな利権つまみ食い事件が表に出始めている。 民営化された日本郵政は、利権亡者達にとって宝の山に見えているに違いない。 いくら辣腕とはいえ、そんな経歴の人物をなぜ社長に据えなければいけないのか。 これだけ批判を浴びても守らなければならないのか。 股肱の臣の首を切ってまで続投させねばならないのか。 麻生も自民もよほど彼のバックが怖いのだろう。 この奇妙な辞任劇の理由はそれしか考えられない。闇社会とは別に、アメリカの影もちらついている。 郵政民営化の際、ハゲタカ論が盛んに言われた。 アメリカの金融資本に国民の資産である郵貯資産が食い荒らされるという心配である。 オバマ政権の焦眉の急は金集めだ。 いくら格好いいこと言っても、、金がなければ潰れかけたアメリカはどうにもならない。 なりふり構わず多額の国債を発行し、中国、日本に押しつけるしかない。 したたかな中国は言を左右に渋っている。 残るカモはお人好し日本だ。 間もなく日本郵政の株式が公開される。 もしアメリカがそれなりの株式を取得し、何らかの方法で経営に首を突っ込んだら、３５０兆円の大半を無理矢理米国債投資に廻させるに違いない。 アメリカの狙いはそこにある。 金持ち日本と言っても、右から左に投資に回せる手持ち資金が無尽蔵にあるわけではない。 手つかずの郵貯資産３５０兆円はオバマにとってヨダレの出るようなご馳走なのだ。 小泉の手先になって郵政民営化の指揮をとった竹中平蔵は、今でも郵貯資金でアメリカ国債を買えと言い続けている。 いったいあの男は日本人なのか。
日本はすでに大量のアメリカ国債を買わされているが、米国債の現物は日本にはない。 ニューヨーク連邦準備銀行の地下金庫に保護預かりされている。 もし日本が米国債を売ろうとしたら、アメリカは日本を敵性国家に指定し、敵国条項を発動して日本の米国内資産を凍結するだろう。 だから日本は永久に米国債を売れない。 単なる紙くずである。 この上さらに紙くずを買わされる。 たまったものではない。 かねて西川氏は竹中氏らとともにアメリカ金融資本と密接なつながりを持っている。 奥田氏ら財界が支持していると言うが、トヨタにとって市場に廻らない死に金の３５０兆円などどうでもいい。 ドブに捨ててもいい。 紙くず米国債を買って、その金でアメリカにトヨタの車を買ってもらう方がいい。 明日の日本より今日のトヨタ。 どちらも国益など念頭にない政商に過ぎないのだ。 そんな男を民営郵政の社長に据え、寄ってたかって守る。 今回の辞任劇にはアメリカ政府も何らかの影響力を行使しているに違いない。 匹夫の勇というか、闇社会と超大国アメリカを相手に廻した鳩山氏の突っ張りは、かなり勇気が要ることだっただろう。
鳩山氏は辞任後の会見で、「自分が正しかったことは１年以内に証明される」と言った。 １年以内とは政権交代を意味しているのだろう。 今度のことで民主党が政権を取るのはほぼ確実になった。 そうなったら闇に葬られたスキャンダルが表に出されるだろうと言いたいのだろう。 しかしながら、麻生や自民にとって怖い存在は、民主党の政治家にとっても恐ろしい存在に違いない。 はたして次期民主党政権が西川問題を含めて郵政民営化の闇に手を突っ込めるのだろうか。 国民の資産３５０兆円を守れるのだろうか。 民主党もいざとなると頼りない政党だ。 国益と国政が他国や闇社会にいいようにされる。 まさに日本の闇だな。