伝蔵荘日誌

【伝蔵荘日誌】2009年4月12日: 孫娘が遊びに来る T.G.

 ママに連れられて三歳の孫娘が遊びに来る。ママに似て、だんだん美人になってきた。お昼ご飯を食べて、ひとしきりオモチャで遊んだ後、お二階へ行くという。一緒に二階へ上がってジイジの書斎に入るなり、「ジイジ、何して遊ぶ?」と目を輝かせて聞く。子供は遊ぶために生まれてきた生き物とつくづく思う。朝起きてから寝るまで、遊ぶことだけを考えている。

 ジイジの部屋にはオモチャなどないが、彼女好みのいたずらの種が沢山ある。まず本棚の引き出しを開けて、中の文房具を引っ張り出して調べる。それが終わると今度はMDプレーヤーのトレイにディスクを出したり入れたりする。何が面白いのか、しばらくそれを繰り返す。それに飽きると今度はプリンタ用紙を引っ張り出して、引き出しで見つけたハンコを押したり、ボールペンでいたずら書き。下からもってきた折り紙を手でちぎって糊でベタベタ貼り付ける。過去の張り紙細工作品は大事に壁のボードに貼ってある。次はパソコンの前に座ってマウスとキーボードいじり。ママの仕事の真似をしているつもりなのだろう。それが終わると今度はロッキングチェアに座って揺らす。これがいつもの彼女の書斎遊びレパートリーである。来るたびに飽きもせず同じことを繰り返すところを見ると、よほど面白いらしい。

 もちろんオモチャでも遊ぶ。お気に入りはバアバに買ってもらったシルバニアンファミリー。男の子を育てた経験しかないので、オモチャと言えばもっぱらウルトラマン、マジンガーZ、機動戦士ガンダム、ゴレンジャー。女の子のオモチャにはとんと疎かったが、このセットは昔からある女の子用ママゴト遊びの定番なのだという。リスやウサギの家族人形と、住む家や家財道具がセットになっている。そのほかに公園や幼稚園などのセットもある。揃えるとけっこうな値段になる。若いパパには買えないので、ジジババが買ってうちに置いてある。家人に言わせると、遊びに来てもらうための“釣り物件”なのだという。孫も心得ているのか、自分の家に持って帰るとは言わない。甘やかしになるからあまり買わないでと、時々息子に苦情を言われる。知ったことか。これでゴッコ遊びをするときはジイジはお呼びでない。バアバと二人だけで遊ぶ。何をしているか覗くと、ジイジは来ちゃダメと怒られる。ドアをバタンと閉められてしまう。遊びといえども彼女なりの世界があるのだろう。

 もう一つのお気に入りの遊びは“葉っぱ洗い”だ。庭に生えている蕗の葉っぱを千切って、庭の隅の水道の蛇口で洗う。よほど面白いらしく、同じことを何度何度も繰り返す。濡れて風邪を引かないかとママは気が気でないが、お構いなしである。3年前、孫が歩けるようになったら遊ばせようと、荒れた庭を耕して芝生を張った。たった5坪ほどだが、腰が抜けそうになった。今はすっかり生えそろい、孫が葉っぱ洗いを楽しめるようになった。あなたにしちゃ上出来ねと、家人に褒められた。ダンゴ虫がお気に入りで、指で触って丸くさせて喜んでいる。

 孫のお気に入りのDVDが何枚かある。昨年買った52インチの大画面液晶テレビで見る。まだハイハイしている頃に買ったアンパンマンは今もお気に入りで、飽きもせず繰り返し見る。息子を育てていた30年前には知らなかったが、幼児向け絵本の一大傑作らしい。このやなせたかし氏の絵本は今までに1千万冊以上売れたという。パン屋さんに焼いてもらったアンパンマンが主人公で、他にもバイキンマンとかドキンチャン、メロンパンダちゃんなど、キャラクターが沢山出てくる。孫娘のお気に入りはどうやらドキンチャンらしい。悪役のバイキンマンのガールフレンドで、可愛いけれど気の強い女の子である。いつもヘマをしたバイキンマンがとっちめられる。睫毛が長いぱっちりした目をして、ピンク色の服を着ている。

 「となりのトトロ」もお気に入りだ。けっこう込み入ったストーリーだが、脇目も振らず熱心に見る。出だしのテーマソングを、一緒に声を合わせて歌う。妹のメイがマックロ黒助を捕まえるところと、猫バスがお気に入りらしい。孫のことを「メイちゃんみたいだね」と言うと、「メイちゃんじゃない、サツキだよ」とご機嫌斜めになる。どうやらヤンチャで聞き分けのない妹のメイより、しっかり者で美少女の姉のサツキに自分のイメージを合わせているらしい。栴檀は双葉より芳しか。

 家人の言によれば、孫は”一所懸命子育てをしたことに対する神様からのご褒美”なのだという。ただただひたすら可愛い。

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