【伝蔵荘日誌】

2009年4月7日: ゴルフとテポドン T.G.

 学生時代の寮の後輩T君とゴルフに出かけた。 栃木のディアレイクCCである。 我が下野CCが倒産したのをオリックスが買収し、手品のような手法で預託金債務30億円をチャラにしてディアレイクと名前を変えた。 宮内という経営者は同じ様な手品を使って、かんぽの宿を安値で買い叩いたのだろう。 実に性悪な金貸しだ。 それはともかく、久し振りのコースは桜が満開で、快適なゴルフだった。

 帰りの車の中で、話題がテポドンに及んだ。 どう思うとT君が聞くので、「北朝鮮の技術レベルで人工衛星など上げられるわけがない。 H2だって、日本の資金力と技術をもってしても予定時間にきちんと打ち上げられたことはない。 何度も仕切り直ししてやっと成功する。 テポドンなんて見せ物の打ち上げ花火だ」と応じた。 偉そうなことを言えるのは、現役時代に仕事で種子島の打ち上げに何度も立ち会った経験と知識である。 万が一失敗した場合、装填された爆薬で地上落下前にロケットを空中爆破するコンピュータシステムの責任者だった。 幸い一度も爆破には至らなかったが、きわめて精緻、かつ高度な技術である。 そんなことも出来ない北朝鮮に、衛星を軌道に乗せるなんてより難しいことが出来るわけがない。 案の定、二段目と一緒に太平洋に落下したという。 最初から衛星なんか積んでいなかったのだろう。 北朝鮮もオモチャは承知の上でやっている。 アメリカや日本が慌てふためけばそれで良しなのだ。

 案の定日本は慌てふためいた。 みっともないったらありゃしない。 戦後60年、惰眠をむさぼってきたツケが回っている。 あんなもの放っておけばいい。 狙ったところに撃ち込む技術なんて北朝鮮にありはしない。 子供の火遊びである。 MDとPAC3で迎撃などと言うが、もし高々度を飛ぶ弾道ミサイルなら打ち落とせないし、PAC3の迎撃範囲はわずか半径20キロしかないことは関係者の常識である。 MDはまだ未完成。 本当にミサイルだったとしても、現時点では役に立たない。 気休めである。 それを百も承知で、政府が破壊措置命令なんて大仰な芝居をしたのは、国民に対する安全保障教育のつもりだろう。 こうでも脅かさないと平和ボケ日本人の目が覚めない。 世論調査を見るとどうやらその効果があったらしい。 破壊措置命令には8割が賛成だと言うし、いつもは憲法違反だ、軍国主義だと騒ぎ立てる社民党や市民活動家も粛として声がない。 日本のリベラルは実に根性無しだ。 ミサイル撃ち込まれようと9条命でなければ、日頃の護憲が泣くというものだ。 いい兆候である。 これで少しはまともな国になれたか。 人間なんでも経験が大事だ。

 帰宅してテレビを見たら、国連での制裁決議案に賛同を得られないとニュースで騒いでいる。 当たり前だろう。 そもそも中国、ロシアが賛成するわけがない。 彼らは北朝鮮のオモチャのような核やミサイルなどまったく問題にしていない。 それどころか、将軍様が日米相手にいろいろ悪さをしてくれる方が彼らにとって好都合なのだ。 国連なんて、正義もへったくれもない、狡賢い魑魅魍魎が、自国の利益のために権謀術策を弄する場なのだ。 国連大好きの日本人は人が良すぎる。 国連中心主義なんて世迷いごとを唱える民主党の小沢代表は、よほどの馬鹿かひねくれ者だ。 こんな男を総理大臣にしてはいけない。

 報道によると、アメリカのゲーツ国防長官が「ミサイルが米国本土にとどかない限り迎撃しない。」と言明したそうだ。 日本に落ちてきても放っておくという意味で、日米安保否定に等しい暴言である。 日本人はこちらの方を深刻に考えるべきだ。 口が滑ったにしても、おそらくアメリカの本音なのだろう。 60年経てば同盟も風化する。 日本もそろそろアメリカの傘から出て、独立独歩の道を歩み出すべき時期に来ている。 同じ敗戦国のドイツはそうしている。 イラク戦争と金融危機を潮にアメリカと袂を分かった。 今朝のニュースを見るとアメリカはミサイルディフェンス予算を削減するそうだ。 金欠のアメリカは、いつまでたっても完成しない金食い虫に見切りを付けた。 そんな当てにならない日米安保とMDに日本の安全保障を託すのは愚の骨頂である。

 こんな事を言うと大方から総スカンを食うだろうが、東アジアの情勢が変わらない限り、日本が取り組むべき自主防衛の基本は憲法改正と核武装である。 国家安全保障が国際間の連携で成り立つ時代に、集団的自衛権否定ではどうにもならない。 3分でミサイルが着弾する時代に、専守防衛では屁の突っ張りにもならない。 核軍縮が一向に進まず、核拡散が止められない現状では、核武装が唯一有効で現実的な安全保障策であることは明白だ。 特に非成熟地域である東アジアでは。 インド、パキスタン、イスラエルはすでに核兵器を持った。 イラン、北朝鮮の核ももう誰も止められない。 オバマもどうやら北朝鮮の核を黙認したらしい。 ドイツがアメリカの傘から出られたのは、フランスと連帯することにより実質的な核抑止力を得たからだ。 日本が中国、北朝鮮と安全保障面で連帯できるわけがない。

 エマニュエル・トッドも著書「帝国以後−日本の選択」(藤原書店)の中で言っている。 「アメリカのシステム崩壊が現実的になった場合、日本が核保有というオプションを考えずに外交的自立が出来るとは思えない。 アジアの安定のため、相互破壊を避けるために、小規模の核戦力を持ってくれと国際社会が日本に要求するかも知れない」と。
 北朝鮮の通常戦力は限定的で、日本にとっては脅威でない。 しかし核は脅威だ。 核の脅威に対抗出来るのは核しかない。 北朝鮮が核を弄んでいる間、出来損ないのMDだけでは日本は枕を高くして寝られない。 国民の気力が失せ、経済も駄目になる。 核と聞いただけで思考停止に陥る日本の平和主義者達も、そろそろ国際政治の現実を直視すべきだ。 いい大人が、いつまでたっても少女趣味の反核では国が立ちゆかない。

 核武装の話になると、いつでも出てくる代表的な反対論が二つある。 一つは。「自由貿易の恩恵を受けている日本は、アメリカの反対を押し切って核保有は出来ない。 もしやれば貿易立国の土台が崩れ、国が立ちゆかない」。 もう一つは、「狭い国土で核実験が出来ないから核兵器は作れない」。

 前者については、中国もインドも、紆余曲折はあっても自由貿易の恩恵を受けながら核武装出来た。 地道でしたたかな外交努力を続ければ、同じことが日本に出来ないわけがない。 やりもしないで駄目と思いこんでいるだけだ。 アメリカが日米安保から腰が引け始めた今が、核の議論をはじめるチャンスである。 アメリカも居丈高に反対出来ない。 後者については、核実験など必要ない。 日本の技術を持ってすれば、十中八九起爆する核兵器は作れる。 少なくとも相手国はそう思う。 それだけで十分な抑止力になる。 核兵器は伝家の宝刀。 鞘から抜くことはないのだから作り置くだけでいい。 さらに北朝鮮ごときが相手なら、実際に核保有する必要もない。 議論を始めるだけで将軍様はびびる。

 報道によると、自民党山崎派の山崎拓会長は、北朝鮮のミサイル発射を受け、日本の核武装や先制攻撃に前向きな意見が党内の一部にあることについて、「誠に憂慮すべきだ。極端に言えば人類を破滅に導く議論だ」と厳しく批判した、という。 “人類を破滅に導く議論”とはなんと青臭い形而上的発想だろう。 教会の牧師さんの説教ならいざ知らず、少なくとも保守党大物政治家が言うセリフではない。 いったい何を考えているんだか。        

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